盛夏の谷あいに、青みを帯びた湯が静かに流れていく。福島市の西、吾妻連峰の東麓・標高七百五十メートルに湧く高湯温泉は、開湯四百年と伝わる硫黄泉の里である。湯質に造詣の深い旅人へ向け、酸性・含硫黄の白濁湯を源泉かけ流しで継ぐ五軒を、湯量や源泉温度の数値とともに地図を添えて歩く。共同湯「あったか湯」から各宿への引湯の系譜と、磐梯吾妻スカイラインの起点としての地勢を、湯場の記録として綴る。

# 宿 湯処 Score 客室 目安価格 一行の輪郭
1 旅館 玉子湯 高湯温泉 93 52 ¥36–¥51k 萱ぶきの湯小屋を百五十年継ぐ里の象徴
2 旅館ひげの家 高湯温泉 91 10 ¥58–¥74k 渓を望む貸切露天、秘湯を守る会の小宿
3 吾妻屋 高湯温泉 91 10 斎藤茂吉が愛した今昔ゆかしき十室の宿
4 安達屋 高湯温泉 90 20 ¥62–¥75k 県下一とうたう大露天「大気の湯」
5 花月ハイランドホテル 高湯温泉 86 69 ¥43–¥52k 標高八百、スカイライン起点の天空の湯宿
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※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。一泊二食・二名一室利用時の一室あたり料金(税込)の目安です。

1. 旅館 玉子湯 — 福島市・高湯温泉

萱ぶきの湯小屋が、百五十年の湯気をいまも立てている。高湯の象徴として真っ先に名の挙がる一軒。

Media Picks Score: 93 / 100  52室、源泉かけ流しの中規模旅館。

目安価格 ¥36,000–¥51,000 / 泊(二名一室・通常期)


旅館 玉子湯 — 福島市高湯温泉 · 明治元年創業、萱ぶき湯小屋を継ぐ源泉かけ流しの湯宿
PHOTO: 旅館 玉子湯 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

湯小屋が、宿の顔である。庭園に立つ萱ぶきの湯小屋「玉子湯」は明治元年の創業当時の姿を伝え、その歴史はおよそ百五十年に及ぶ。源泉は自然湧出の白濁湯で、加温も加水も行わない百パーセントの源泉かけ流し。湯量は二本の自家源泉で毎分二百リットルを超え、湯が涸れることを知らない。里の象徴として支持を集める所以が、この湯小屋と湯量に凝縮されている。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、湯そのものへの評価が群を抜いて高い。萱ぶき湯小屋と渓沿いの露天を行き来する湯巡りの満足、白濁の濃さ、硫黄の香りの確かさに言及が集まる。一方で建物は歴史を重ねた館ゆえ、新しさを求める向きとは相性を選ぶ。土地の山菜やイワナを軸にした夕餉は、奇をてらわぬ落ち着きとして受け止められている。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    湯の歴史と濃さを第一に旅する夫婦、源泉かけ流しの白濁湯を求める湯通の人、高湯の里を象徴する一軒に泊まりたい旅
  • 向かない:
    設備の新しさを最優先する人、洋風の客室や派手な演出を望む旅、湯小屋までの段差を避けたい歩行に不安のある旅程

具体情報

  • 所在: 福島市町庭坂・高湯温泉(標高約750m)
  • 泉質: 酸性・含硫黄(硫化水素型)アルミニウム・カルシウム硫酸塩温泉
  • 源泉: 自家源泉・約44℃、自然湧出 毎分約194L+108L/百パーセント源泉かけ流し
  • 客室: 52室/萱ぶき湯小屋「玉子湯」は約150年の歴史
  • 創業: 明治元年(1868年)


2. 旅館ひげの家 — 福島市・高湯温泉

渓の音を聞きながら浸かる貸切露天が、十室だけの静けさを際立たせる。秘湯を守る会の小宿。

Media Picks Score: 91 / 100  10室、源泉かけ流しの小規模旅館。

目安価格 ¥58,000–¥74,000 / 泊(二名一室・通常期)


旅館ひげの家 — 福島市高湯温泉 · 全10室、渓流を望む貸切露天を備えた日本秘湯を守る会の小宿
PHOTO: 旅館ひげの家 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

静けさが、この宿の身上である。全十室という構えは高湯のなかでも小さく、館内は人の気配がそろりと遠い。男女別の露天と大浴場のほかに、川瀬を望む貸切露天を備え、湯を独り占めにできる時間が用意されている。日本秘湯を守る会に名を連ねる一軒として、白濁の硫黄泉を源泉かけ流しで湛える湯の質は折り紙付き。規模を抑えた分、湯と静けさに対する満足が高く積み上がる。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、貸切露天と静けさへの評価が際立つ。渓の音だけが聞こえる湯あみ、こぢんまりとした館内のもてなし、湯の鮮度に言及が集まる。客室数が少ないため予約の取りにくさを指摘する声もあるが、それは裏を返せば落ち着きの代償でもある。料理は土地の素材を軸に据えた構成として、穏やかに受け止められている。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    渓の音とともに貸切露天を楽しみたい夫婦、人の少ない静かな宿を選ぶ旅、秘湯の風情を重んじる湯通の人
  • 向かない:
    大浴場や大露天のにぎわいを求める旅、直前の予約で確実に泊まりたい旅程、大人数のグループ旅行

具体情報

  • 所在: 福島市町庭坂・高湯温泉(標高約750m)
  • 泉質: 酸性・含硫黄の硫酸塩泉(白濁の硫黄泉)/源泉かけ流し
  • 客室: 全10室の小規模旅館
  • 湯処: 男女別露天・大浴場に加え、渓を望む貸切露天
  • 会員: 日本秘湯を守る会


3. 吾妻屋 — 福島市・高湯温泉

歌人・斎藤茂吉が愛したと伝わる、今昔ゆかしき十室の山の湯宿。

Media Picks Score: 91 / 100  10室、源泉かけ流しの小規模旅館。


吾妻屋 — 福島市高湯温泉 · 創業約140年、斎藤茂吉ゆかりの白濁硫黄泉を継ぐ十室の山宿
PHOTO: 吾妻屋 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

歴史が、湯の傍らに息づいている。創業はおよそ百四十年と伝わり、歌人・斎藤茂吉が高湯に逗留した折に縁を結んだ宿として知られる。山懐に湧く白濁の硫化水素泉を、露天「山翠」、貸切の露天「風楽」、内湯「古霞」と趣の異なる湯処で味わえる。客室は十室と少なく、「今昔ゆかしき宿」と自ら名乗る通り、新しさより時の積み重ねを選んだ構えが、湯質を重んじる旅人の支持を集めている。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、湯処の多彩さと白濁湯の濃さに評価が集まる。男女別の露天に加えて貸切の湯があり、人目を気にせず濃い硫黄泉に浸かれる点が好まれている。歴史を重ねた建物ゆえ、設備の素朴さに触れる声もあるが、それを風情として受け止める旅人が多い。山の幸を軸にした夕餉は、土地に根ざした落ち着きとして語られている。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    文人ゆかりの歴史を味わいたい旅、貸切露天で濃い硫黄泉を独占したい夫婦、素朴な山宿の風情を好む人
  • 向かない:
    新築同様の設備を望む旅、大浴場のにぎわいを求める人、客室数の多い宿で気軽に予約したい旅程

具体情報

  • 所在: 福島市町庭坂・高湯温泉(標高約700m)
  • 泉質: 含硫黄(硫化水素型)の硫酸塩泉(白濁の硫黄泉)/源泉かけ流し
  • 客室: 全10室の小規模旅館
  • 湯処: 露天「山翠」・貸切露天「風楽」・内湯「古霞」
  • 由緒: 創業約140年、歌人・斎藤茂吉ゆかりの宿


4. 安達屋 — 福島市・高湯温泉

県下一とうたう大露天「大気の湯」が、白濁湯を惜しみなく谷へ流す。

Media Picks Score: 90 / 100  20室、源泉かけ流しの中規模旅館。

目安価格 ¥62,000–¥75,000 / 泊(二名一室・通常期)


安達屋 — 福島市高湯温泉 · 県下一とうたう大露天「大気の湯」を備えた源泉かけ流しの湯宿
PHOTO: 安達屋 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

湯の広さが、この宿を語る言葉になっている。名物の大露天「大気の湯」は、自ら「県下一のかけ流し大天然露天風呂」とうたう開放的な湯処で、白濁の硫黄泉を惜しみなく注ぐ。二〇二五年七月には東西の湯がリニューアルを終え、湯あみの構えがあらためて整えられた。夕餉は囲炉裏端で炭火を囲む趣向で、湯と食の双方に山宿らしい滋味がある。広い湯を求める旅人の選択肢として、長く支持を集めてきた一軒である。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、大露天の開放感と湯量への評価が突出している。山あいに広がる露天で白濁湯に浸かる時間、囲炉裏端の炭火料理、リニューアル後の湯処の清々しさに言及が集まる。一方で大きな湯処は時間帯によって混み合うため、静けさを最優先する向きとは折り合いを要する。湯と食のにぎわいを楽しめる旅人に向く構えである。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    広い大露天で開放的に湯あみしたい旅、囲炉裏端の炭火料理を楽しみたい人、湯量の豊かさを実感したい湯通の人
  • 向かない:
    終始静かな湯を独占したい旅、混雑する時間帯を避けにくい連休の旅程、小規模な隠れ宿の親密さを求める人

具体情報

  • 所在: 福島市町庭坂・高湯温泉(標高約750m)
  • 泉質: 酸性・含硫黄の硫酸塩泉(白濁の硫黄泉)/源泉かけ流し
  • 客室: 約20室の中規模旅館
  • 湯処: 大露天「大気の湯」(2025年7月に東西をリニューアル)・貸切湯
  • 食事: 囲炉裏端の炭火コース


5. 花月ハイランドホテル — 福島市・高湯温泉

標高八百、磐梯吾妻スカイラインの起点に立つ天空の湯宿。

Media Picks Score: 86 / 100  69室、源泉かけ流しの大規模ホテル。

目安価格 ¥43,000–¥52,000 / 泊(二名一室・通常期)


花月ハイランドホテル — 福島市高湯温泉 · 標高800m、磐梯吾妻スカイライン起点の白濁硫黄泉ホテル
PHOTO: 花月ハイランドホテル — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

地勢が、この宿の最大の持ち味である。標高約八百メートル、高湯温泉のなかでも一段高い台地に立ち、磐梯吾妻スカイラインの起点に最も近い。湯は他の宿と同じく百パーセント源泉かけ流しの白濁硫黄泉で、「本物の温泉」と評する声が多い。客室は約六十九室と高湯では大きく、団体や家族連れにも開かれた構え。湯と高原ドライブの起点という二つの役割を兼ねる点が、この宿の選ばれる理由である。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、立地と眺望、湯の本格さへの評価が並ぶ。高台からの見晴らしと白濁湯の確かさ、スカイライン散策の起点としての便のよさに言及が集まる。規模が大きいぶん、小宿のような親密さよりも気兼ねのなさが前に出る。料理や接客は手堅い評価に落ち着き、湯と地勢を主目的に据える旅人に向いた一軒として受け止められている。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    磐梯吾妻スカイラインのドライブを楽しみたい旅、高台からの眺望を求める人、家族やグループで気兼ねなく泊まりたい旅程
  • 向かない:
    小規模な隠れ宿の静けさを求める旅、貸切露天で湯を独占したい夫婦、きめ細かな個別のもてなしを最優先する人

具体情報

  • 所在: 福島市町庭坂・高湯温泉(標高約800m)
  • 泉質: 酸性・含硫黄の硫酸塩泉(白濁の硫黄泉)/百パーセント源泉かけ流し
  • 客室: 約69室の大規模ホテル
  • 立地: 磐梯吾妻スカイラインの起点に近い高台
  • 適性: 団体・家族連れにも対応する構え


よくある質問

Q. 高湯温泉の湯の効能や泉質はどのようなものですか?

A. 高湯温泉は酸性・含硫黄(硫化水素型)の硫酸塩泉で、空気に触れると青みを帯びた乳白色に濁るのが特徴です。硫黄泉は古くから皮膚や末梢の血行に働きかけるとされ、湯あたりも出やすいため、長湯を避けて水分を補いながら浸かるのが穏当です。各宿とも加温・加水をしない源泉かけ流しを基本としています。

Q. 共同湯「あったか湯」とはどのような場所ですか?

A. あったか湯は高湯温泉の集落にある共同浴場で、里の湯を気軽に味わえる立ち寄りの湯処です。各宿はそれぞれ自家源泉や引湯で湯を引いており、宿の湯と共同湯を巡ることで高湯の湯の幅を体感できます。日帰り入浴の可否や時間は時季で変わるため、訪問前に確認するのが確実です。

Q. 盛夏から初秋に訪れる利点はありますか?

A. 標高七百五十メートルの高湯は盛夏でも涼やかで、谷を抜ける風が心地よい時季です。磐梯吾妻スカイラインの新緑から草紅葉へと移ろう景色が湯あみに重なり、編集部が高湯を歩くなら推したい季節のひとつです。秋が深まると朝晩は冷え込むため、一枚羽織るものがあると安心です。

Q. 子ども連れでも泊まれますか?

A. 規模の大きい花月ハイランドホテルは家族連れにも開かれた構えですが、硫黄泉は刺激が強く、小さな子どもの長湯には向きません。小規模な宿は静けさを身上とするため、客室タイプや入浴の制約を事前に宿へ確認するのが確実です。湯あたりに配慮し、入浴時間を短めにとるのが穏当です。

Q. 高湯温泉へのアクセスは?

A. JR福島駅から路線バスで約40分、車では東北自動車道・福島西インターチェンジから約20分が目安です。冬季は積雪・路面凍結があり、磐梯吾妻スカイラインは例年冬期に通行止めとなります。盛夏から初秋はスカイラインが開通しており、湯と高原ドライブをあわせて楽しめます。

本記事の参考情報

福島市観光ノート — 高湯温泉エリアの観光情報
Wikipedia: 高湯温泉(福島県) — 開湯の歴史と泉質の背景

編集部から

高湯の五軒は、いずれも同じ谷の硫黄泉を分かち合いながら、湯への向き合い方で個性を分けている。萱ぶき湯小屋を継ぐ玉子湯、静けさを守るひげの家、文人ゆかりの吾妻屋、湯を広く開く安達屋、地勢を活かす花月ハイランド。青みを帯びた白濁湯は、空気と触れて色を変え、季節と天候で香りを揺らす。同じ湯に二度と入れないという当たり前が、ここでは際立って実感される。あなたが谷で会いたいのは、どの湯だろうか。

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