盛夏の駿河湾、潮が引いた数刻だけ歩いて渡れる三四郎島のトンボロを望む堂ヶ島と、なまこ壁の町並みを残す松崎に湧く五軒を編んだ。客室の露天から夕陽が水平線に沈む瞬間を見られる向き、塩化物・硫酸塩を主とする湯量と源泉数、堂ヶ島洞窟めぐりの遊覧船発着所までの徒歩分数を判断軸に据えた、編集部が選んだ西伊豆の五軒である。
| # | 宿 | エリア | Score | 客室 | 目安価格 | 1行特徴 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | イル・アズーリ | 堂ヶ島 | 93 | 46 | ¥65–¥93k | 全46室が露天付、三四郎島を真正面に望むシーサイドリゾート |
| 2 | 海辺のかくれ湯 清流 | 堂ヶ島 | 93 | 39 | ¥43–¥65k | 岬先端の波打ち際露天、夕陽と海景の老舗 |
| 3 | 御宿 しんしま | 松崎 | 91 | 13 | ¥37–¥50k | なまこ壁路地の十三室、入江長八の鏝絵蔵座敷 |
| 4 | 堂ヶ島温泉郷 伊豆一 2号店 | 宇久須 | 90 | 6 | ¥36–¥41k | 宇久須の自家源泉とお刺身に絞った六室の小宿 |
| 5 | 豊崎ホテル | 松崎 | 85 | 14 | ¥20–¥41k | 松崎港そば、最上階露天の源泉100%かけ流し |
※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。
1. イル・アズーリ — 堂ヶ島・仁科
三四郎島を真正面に望む、全46室すべてに露天風呂を備えたシーサイドリゾート。
Media Picks Score: 93 / 100 46室、堂ヶ島の旅館。
目安価格 ¥65,000–¥93,000 / 泊(2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
2021年、堂ヶ島仁科の地に長く親しまれた宿が、海と空の青を主役に据える形で生まれ変わった。全46室がオーシャンフロント、すべてに露天風呂を備える一棟は、トンボロの三四郎島を真正面に望む立地に建つ。湯量は内湯と露天で十分に行き渡り、空が群青に染まるころ、湯気越しに島影が浮かぶ。フリーフローのドリンクサービスや足湯テラスの設えも、海の宿らしい滞在に振り切れている。
集約レビューの傾向
集約された宿泊データを見ると、夕暮れの客室露天、刺身を中心とした夕食、スタッフの応対への評価が安定して高く、リピーターの厚みが他を引き離す。テラス越しに見える島と夕陽の組み合わせが、訪れた者の記憶に強く残る宿という共通の輪郭が浮かぶ。
向く人 / 向かない人
-
向く:
記念日のカップル旅、写真の残る滞在を望む夫婦旅、温泉と料理を同等に重視する旅人 -
向かない:
短時間で巡る駆け足の旅程、和の小宿に宿の本質を求める読者、価格帯を圧縮した一泊
具体情報
- 最寄り駅・アクセス: 伊豆急下田駅より東海バスにて約60分、自家用車利用が現実的
- 客室サイズ: 44㎡以上+テラス
- チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜11:00
- 食事: 夕食・朝食ともに専用ダイニング、フリーフロードリンク付
- 創業: 2021年(旧館リブランド)
2. 海辺のかくれ湯 清流 — 堂ヶ島・仁科
波打ち際の露天風呂と、夕陽の駿河湾を一望する客室で名を成した堂ヶ島の老舗。
Media Picks Score: 93 / 100 39室、堂ヶ島の旅館。
目安価格 ¥43,000–¥65,000 / 泊(2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
堂ヶ島温泉を代表する一軒、岬の先端に張り出した立地に建つ。建物の裾を波が洗う「波打ち際の露天風呂」は、夕陽の刻、湯と海が一続きの面となる風景で知られる。客室は全室オーシャンビュー、上位の客室には専用の露天風呂が備わり、ジュニアスイートと和モダンの二人静が客室露天プランの中心となる。湯量に余裕がある自家源泉の湯を擁する。料理は港から運ばれる魚介を中心とした会席。
集約レビューの傾向
口コミの集約からは、夕陽と海の景観、波打ち際の露天への評価、貸切風呂の運用、夕食の鮮魚への満足が一貫して厚い。一方で客室の経年や建物動線への指摘も散見され、選ぶ客室タイプによって体験が分かれる宿という輪郭が読み取れる。
向く人 / 向かない人
-
向く:
夕陽と海景を最優先する夫婦旅、客室露天を予算内で確保したい旅程、刺身と鮮魚の夕食を中心に組む人 -
向かない:
新築・モダンな空間を望む人、洋食中心の食を好む人、館内移動を最小化したい高齢の二人旅
具体情報
- 最寄り駅・アクセス: 伊豆急下田駅より東海バスで約45分(堂ヶ島下車徒歩2分)
- 客室サイズ: 32〜52㎡(客室露天付プランは上位タイプ)
- チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜10:30
- 食事: 夕食は会席(鮮魚中心)、朝食は和定食
- 創業: 複数回改装の老舗
3. 御宿 しんしま — 松崎・なまこ壁の町
なまこ壁の路地に佇む十三室、入江長八の鏝絵を蔵座敷に伝える明治創業の宿。
Media Picks Score: 91 / 100 13室、松崎の旅館。
目安価格 ¥37,000–¥50,000 / 泊(2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
松崎町のなまこ壁の路地に立つ十三室の旅館。明治十三年創業、漆喰鏝絵の名工・入江長八が手がけた蔵座敷が今に残る、地域文化と直結した宿である。貸切露天風呂は客室ごとの予約制で、客室露天付の上位プランも複数用意される。料理は松崎港・田子港から届く魚を中心とした会席。なまこ壁の町並みを徒歩で巡れる立地が最大の利点。
集約レビューの傾向
集約された評価では、館内に残る鏝絵と蔵座敷への文化的関心、女将と仲居の丁寧な応対、夕食の魚への高い満足が中心軸を成す。建物の経年は隠さず、それも含めて選ばれている宿という性格が、口コミの分布から読み取れる。
向く人 / 向かない人
-
向く:
静かな町並みを歩く夫婦旅、入江長八や明治期の建築に関心のある旅人、海鮮を朝夕ともに楽しみたい人 -
向かない:
大型施設の設備を求める家族客、客室露天を全室で確保したい予算重視の旅程、最新の館内設備にこだわる人
具体情報
- 最寄り駅・アクセス: 伊豆急下田駅より東海バスで松崎まで約50分、停留所から徒歩3分
- 客室サイズ: 10〜18畳(客室露天付プランは限定数)
- チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜10:00
- 食事: 夕食は地魚会席(個室)、朝食は和定食
- 創業: 1880年(明治13年)
4. 堂ヶ島温泉郷 伊豆一 2号店 — 宇久須・堂ヶ島温泉郷
宇久須の自家源泉と、相模湾から直送される刺身に身上を置く六室の小さな宿。
Media Picks Score: 90 / 100 6室、宇久須の旅館。
目安価格 ¥36,000–¥41,000 / 泊(2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
堂ヶ島温泉郷の北、宇久須に建つ六室の小さな宿。看板に「お刺身と天然温泉」を掲げる通り、刺身の盛り合わせと自家源泉の二点に絞り込んだ運営が貫かれる。湯は宇久須特有のカルシウム・硫酸塩泉、湯口の結晶が独特の景色を作る。客室は全室二階に配され、内風呂のほか共用の露天風呂、貸切の露天風呂が用意される。客室数の少なさと夕食の手の込み具合が、リピーターを生む構造になっている。
集約レビューの傾向
集約された声は、夕食の刺身の量と質、家族的な接客、宇久須の湯への評価で一致する。客室の設えは華美ではないが、料理と湯に焦点を絞った宿だという理解の上で訪れる読者層に支持されている輪郭が見える。
向く人 / 向かない人
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向く:
刺身を朝夕の主役に据えたい食通、規模の小さな宿で家族的な滞在を望む夫婦、宇久須の湯を体験したい温泉愛好家 -
向かない:
堂ヶ島中心部に滞在拠点を置きたい人、客室露天付プランを必須とする旅程、団体での宿泊
具体情報
- 最寄り駅・アクセス: 伊豆急下田駅より東海バスで宇久須まで約60分、宇久須停留所から徒歩5分
- 客室サイズ: 10〜15畳(全室二階・内風呂付)
- チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜10:00
- 食事: 夕食は刺身中心の会席、朝食は和定食
- 創業: 2011年(2号店開業)
5. 豊崎ホテル — 松崎港・最上階露天
松崎港のすぐそば、最上階の露天から駿河湾と松崎海岸を見渡す源泉100%かけ流しの宿。
Media Picks Score: 85 / 100 14室、松崎の旅館。
目安価格 ¥20,000–¥41,000 / 泊(2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
松崎港のすぐそば、町中心部の便利な立地に建つ十四室の宿。最上階の露天風呂から駿河湾と松崎海岸を見渡せる構成で、源泉100%かけ流しを掲げる。湯は塩化物泉、湯量が安定し、加水を行わない方針が継続されている。料理は松崎港から直接運ばれる魚と、伊豆ジビエの小鉢を組み合わせた会席。「魚の宿」を看板に置く宿らしく、夕食の干物焼き場が館内に設えられている点も特徴。
集約レビューの傾向
集約された評価では、最上階の露天からの夕陽と海景、源泉かけ流しの湯への満足、夕食の干物・刺身への評価が安定して厚い。客室そのものの新しさよりも、湯と食、立地の良さで選ばれている宿としての性格が口コミから読み取れる。
向く人 / 向かない人
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向く:
松崎の町中心部に拠点を置きたい旅程、源泉かけ流しを最優先する温泉愛好家、価格帯を抑えた夫婦旅 -
向かない:
客室露天付プランを必須とする旅程、新築・モダンな空間を望む人、館内動線の広さを重視する人
具体情報
- 最寄り駅・アクセス: 伊豆急下田駅より東海バスで松崎港まで約50分、停留所から徒歩3分
- 客室サイズ: 8〜15畳
- チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜10:00
- 食事: 夕食は地魚会席(干物焼き場あり)、朝食は和定食
よくある質問
Q. ベストシーズンはいつですか?
A. 夕陽が水平線に直接落ちる季節は秋から冬にかけて、空気が乾く十一月から二月が最も鮮やか。盛夏は積乱雲を背景に斜光が割れる景色が見られ、三四郎島のトンボロ干潮帯は気象庁の潮汐表で日中に低潮位が来る日が狙い目となる。なまこ壁の松崎は梅雨明け直後と秋雨の合間が、町歩きと宿の両立に向く。
Q. 予約のタイミングは?
A. 客室露天付プランは堂ヶ島・松崎ともに数が限られ、土曜泊と連休は二〜三ヶ月前で埋まる宿が多い。平日泊であれば一ヶ月前でも上位プランが残るケースがある。盛夏の海水浴期、紅葉期、年末年始はさらに前倒しが必要。
Q. トンボロ現象はいつ見られますか?
A. 三四郎島のトンボロは年間を通じて発生するが、最も大潮の干満差が出るのは三月から九月。気象庁の潮汐表で松崎港の干潮時刻と最低潮位を確認し、最低潮位がマイナス10cm以下の日中であれば、島まで歩いて渡れる帯が現れる。事前に堂ヶ島マリンの観光船窓口や西伊豆町観光協会のサイトで開放情報を確認するのが安全。
Q. 子連れでも泊まれますか?
A. 五軒のうち、イル・アズーリと清流は乳幼児連れを受け入れるが、客室露天付プランは入浴の安全管理上、未就学児の同行を制限するケースがある。御宿しんしま・伊豆一・豊崎ホテルは個別問い合わせが必要。なまこ壁の町は歩道が広く、ベビーカーでの町歩きは比較的しやすい。
Q. アクセスは?
A. 公共交通の場合、伊豆急下田駅から東海バスで堂ヶ島まで約45分、松崎まで約50分。本数は1時間に1〜2本で、最終便は早い。自家用車であれば沼津ICから国道136号で約2時間。西伊豆スカイラインを使うと達磨山経由で別の表情の景色が楽しめる。
本記事の参考情報
・西伊豆町観光協会 — 堂ヶ島・トンボロ・洞窟めぐり遊覧船の運航情報
・松崎町観光協会 — なまこ壁の町並みと伊豆の長八美術館の案内
・気象庁 潮位表 — 松崎港の干満時刻、トンボロ干潮帯の予測に
編集部から
五軒に通底するのは、駿河湾という一つの大きな水面と向き合う姿勢である。岬の先端で湯と海を一面にする清流、全室を西に向けたイル・アズーリ、町並みに溶け込むしんしま、六室に絞って料理を磨いた伊豆一、最上階の露天で町と海を見渡す豊崎ホテル。それぞれの位置取りが、夕陽と湯と魚という同じ素材から異なる物語を作り出している。次に編むなら、伊豆半島東岸の伊豆高原から下田にかけての客室露天と、西伊豆の対岸にあたる静岡市三保松原から焼津に至る駿河湾内側の宿を、同じ夕陽の角度から並べてみたい。