梅雨が明け、六甲颪の途絶える盛夏の有馬に、金泉と銀泉を汲み分ける湯宿五軒を選んだ。日本三古湯のひとつに数えられ、太閤秀吉が幾度も湯浴みに通った有馬の湯は、含鉄強塩泉の金泉と、炭酸・ラジウムを含む無色の銀泉という二種を、宿ごとに引き方を違えて守り継いできた。神戸の奥座敷にあたる湯坂の起伏とともに、代を継ぐ宿を地図で辿る。都市近郊にありながら古湯の格を静かに味わいたい、四十代から七十代の夫婦の一夜に向けて。
| # | 湯宿 | エリア | Score | 客室 | 目安価格 | 湯の別・特徴 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 陶泉 御所坊 | 有馬温泉 | 92 | 20 | ¥73–¥157k | 鎌倉期に源を持つ有馬最古格、金泉の谷筋に佇む宿 |
| 2 | 元湯 龍泉閣 | 有馬温泉 | 91 | 30 | ¥85–¥169k | 自家源泉の金泉を引く元湯、部屋食を通す宿 |
| 3 | 竹取亭 円山 | 有馬温泉 | 90 | 30 | ¥76–¥121k | 金泉・銀泉を汲み分ける無料貸切風呂四か所 |
| 4 | 欽山 | 有馬温泉 | 90 | 31 | ¥123–¥187k | 数寄屋造りの料亭旅館、銀泉露天付客室と金泉大浴場 |
| 5 | 中の坊瑞苑 | 有馬温泉 | 89 | 50 | ¥124–¥185k | 十二歳以下を通さぬ大人の宿、金泉の名席 |
※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込・1泊2食を含む場合が多い)です。
1. 陶泉 御所坊 — 神戸・有馬温泉
鎌倉の世に湯宿の源を持ち、湯坂の谷筋に金泉を守り継ぐ、有馬最古格の一軒。
Media Picks Score: 92 / 100 20室、有馬温泉の湯宿。
目安価格 ¥73,000–¥157,000 / 泊 (2名1室・1泊2食・通常期)

なぜ選ばれるか
湯が、まず主役である。含鉄強塩泉の金泉を谷筋の岩風呂に引き、鉄分が空気に触れて赤褐色に染まる有馬本来の湯を、飾らぬ石の湯殿で味わえる。宿は鎌倉期に「湯口屋」として源を持ち、蓮如上人の逗留を機に「坊」の名を継いだと伝わる。谷川に沿って棟が重なる造りは、湯坂の地形をそのまま宿にしたようで、廊下を歩くだけでも有馬の起伏が身体に伝わる。二十室という数を守り、書と骨董の据わる館内は、古湯の格を静かに示す。
集約レビューの傾向
集約した宿泊者の評からは、金泉の濃さと、建物の来歴を尊ぶ設えへの支持が繰り返し立ちのぼる。もてなしの間合いと、谷に沿う独特の動線を落ち着いて受け止める声が多い一方、館内に段差や階が多い点は、脚の運びに不安のある向きには留意が要ると読み取れる。
向く人 / 向かない人
- 向く: 金泉本来の赤い湯と宿の来歴を味わいたい夫婦旅、書画や骨董のある静かな空間を好む滞在、都市近郊で古湯の格に触れたい旅
- 向かない: 段差や階段を避けたい脚に不安のある滞在、大浴場の広さや新しさを最優先する旅、幼い子を連れた賑やかな家族旅
具体情報
- 最寄り駅: 神戸電鉄 有馬温泉駅から徒歩約5分(湯本坂沿い)
- 客室数: 20室
- 湯: 含鉄強塩泉の金泉(赤褐色・自噴の名湯)
- 食事: 兵庫の旬を用いた会席
- 来歴: 鎌倉期に「湯口屋」として源を持つ有馬最古格の宿
2. 元湯 龍泉閣 — 神戸・有馬温泉
湯坂の高みに自家の金泉を持ち、「元湯」の名にふさわしく源泉を引き継ぐ一軒。
Media Picks Score: 91 / 100 30室、有馬温泉の湯宿。
目安価格 ¥85,000–¥169,000 / 泊 (2名1室・1泊2食・通常期)

なぜ選ばれるか
湯が、この宿では自らの源から湧く。有馬でも数少ない自家源泉の金泉を持ち、「元湯」を名に掲げて湯を絶やさず守ってきた。含鉄強塩泉の金泉を湛え、湯坂の高みから神戸の奥座敷を望む。食事は部屋に運ぶ流儀を通し、代を継ぐ家の宿らしい親密さがある。三世代の逗留にも応える設えを備えつつ、湯の質そのものは有馬の古格を外さない。都市から一時間ほどで、自家の湯に浸かる一夜へたどり着ける。
集約レビューの傾向
集約した評では、自家源泉ならではの湯の力と、部屋食のもてなしへの信頼が厚い。子や孫を交えた滞在への配慮を評価する声が目立ち、家として湯を守る姿勢が伝わってくる。静けさのみを求める向きには、館内が家族連れで和やぐ時間帯のあることを、あらかじめ心得ておきたい。
向く人 / 向かない人
- 向く: 自家源泉の金泉を味わいたい夫婦旅、部屋食でくつろぎたい滞在、子や孫を交えた三世代の逗留
- 向かない: 館内の静寂を何より優先したい旅、大人だけの張り詰めた設えを望む滞在、最新の意匠を求める向き
具体情報
- 最寄り駅: 神戸電鉄 有馬温泉駅から徒歩約7分(坂道・送迎あり)
- 客室数: 30室
- 湯: 自家源泉の金泉
- 食事: 部屋食を基本とする会席
- 特色: 三世代・子連れの逗留に応える設え
3. 竹取亭 円山 — 神戸・有馬温泉
高台の森に抱かれ、金泉と銀泉を四つの貸切風呂に汲み分ける、湯めぐりの宿。
Media Picks Score: 90 / 100 30室、有馬温泉の湯宿。
目安価格 ¥76,000–¥121,000 / 泊 (2名1室・1泊2食・通常期)

なぜ選ばれるか
湯が、二種そろって迎える。含鉄強塩泉の赤い金泉と、炭酸・ラジウムを含む無色透明の銀泉を、館内四か所の貸切風呂に汲み分けて据える。しかも貸切は無料で、夫婦二人が人目を気にせず金泉と銀泉を飲み比べるように湯めぐりできる。宿は湯坂を上がった高台にあり、窓の外は森。盛夏でも木立を渡る風が湯上がりの肌を冷ましてくれる。二種の湯を一夜で味わい分けたい旅に、まず名の挙がる一軒である。
集約レビューの傾向
集約した評からは、金泉と銀泉を貸切で心ゆくまで比べられる点への満足が際立つ。高台ゆえの静けさと森の眺めを喜ぶ声が多く、二人旅の湯めぐりに向く宿として受け止められている。高台への上り下りがある点は、荷の多い旅では送迎を頼りにしたいところだと読み取れる。
向く人 / 向かない人
- 向く: 金泉と銀泉を一夜で味わい分けたい夫婦旅、人目を避けた貸切の湯を望む滞在、森の静けさと涼を求める盛夏の旅
- 向かない: 駅からの平坦なアクセスを求める旅、大浴場の規模を重んじる滞在、館内での賑わいを楽しみたい向き
具体情報
- 最寄り駅: 神戸電鉄 有馬温泉駅から徒歩約8分(高台・送迎あり)
- 客室数: 30室
- 湯: 金泉・銀泉の二種、無料の貸切風呂四か所
- 食事: 会席
- 立地: 森に面した湯坂上の高台
4. 欽山 — 神戸・有馬温泉
数寄屋の意匠に茶の湯の心を通わせ、銀泉露天付の客室と金泉大浴場を備える料亭旅館。
Media Picks Score: 90 / 100 31室、有馬温泉の湯宿。
目安価格 ¥123,000–¥187,000 / 泊 (2名1室・1泊2食・通常期)

なぜ選ばれるか
建物が、まず心を鎮める。数寄屋造りの佇まいに侘び寂びを綾なし、茶の湯に通じる細やかなもてなしで知られる料亭旅館である。湯は金泉の大浴場に加えて、銀泉の露天風呂を備えた客室も持ち、二種の湯を館の内で味わい分けられる。料理は京風の創作懐石を軸に、旬の素材を端正に組む。派手さを退け、器と設えと湯の質で格を示す姿勢は、料理を目当てに宿を択ぶ夫婦旅にこそ響く。
集約レビューの傾向
集約した評では、懐石の完成度と数寄屋の設え、もてなしの間合いへの高い信頼が一貫する。銀泉露天を備えた客室で二種の湯を独り占めできる点を喜ぶ声も厚い。価格帯は有馬でも上位にあたり、静かで端正な時間に相応の対価を納得して払える旅に向くと読み取れる。
向く人 / 向かない人
- 向く: 料理を主目的にする夫婦旅、数寄屋と茶の湯の設えを好む滞在、客室で銀泉露天を独占したい旅
- 向かない: 気楽で賑やかな滞在を望む旅、価格を抑えたい向き、幼い子を連れた家族旅
具体情報
- 最寄り駅: 神戸電鉄 有馬温泉駅から徒歩約5分
- 客室数: 31室
- 湯: 金泉の大浴場、銀泉露天風呂付の客室あり
- 食事: 京風創作懐石
- 評価: ミシュランガイドに掲載歴を持つ料亭旅館
5. 中の坊瑞苑 — 神戸・有馬温泉
十二歳以下を客に取らぬと定め、静けさのなかで金泉を守る、大人のための宿。
Media Picks Score: 89 / 100 50室、有馬温泉の湯宿。
目安価格 ¥124,000–¥185,000 / 泊 (2名1室・1泊2食・通常期)

なぜ選ばれるか
宿が、静けさを流儀とする。江戸期から続く中の坊を源に、有馬を象徴する金泉を擁し、十二歳以下は客に取らないと定めて館内の静穏を保つ。湯は含鉄強塩泉の金泉を大浴場に引き、赤い湯にゆっくりと身を沈められる。料理は瑞苑会席と鉄板焼を軸に、旬を端正に運ぶ。五十室の規模を持ちながら、喧噪を排した設えは、夫婦二人が言葉少なに過ごす夜にふさわしい。有馬の中心に近く、湯坂の散策にも出やすい。
集約レビューの傾向
集約した評では、大人だけの静けさと金泉の質、行き届いたもてなしへの支持が厚い。落ち着いて湯と食に向き合えたという声が多く、記念の旅に択ばれてきた宿だと伝わる。子連れでの利用はかなわない点は、家族旅を計画する向きには初めに確かめておきたい定めである。
向く人 / 向かない人
- 向く: 静けさを最優先する夫婦旅、記念日の落ち着いた滞在、金泉と端正な会席をゆっくり味わいたい旅
- 向かない: 子を連れた家族旅(十二歳以下は不可)、賑やかな交流を楽しみたい滞在、価格を抑えたい向き
具体情報
- 最寄り駅: 神戸電鉄 有馬温泉駅から徒歩約5分
- 客室数: 50室
- 湯: 有馬を象徴する金泉の大浴場
- 食事: 瑞苑会席・鉄板焼
- 定め: 十二歳以下は宿泊不可(大人の宿)/1979年に改築
よくある質問
Q. 金泉と銀泉は、何がどう違うのですか?
A. 金泉は含鉄強塩泉で、地中の鉄分が空気に触れて酸化し、赤褐色に濁るのが特徴です。塩分と鉄分に富み、体を芯から温めます。銀泉は炭酸泉・ラジウム泉の系統で、無色透明。湯上がりの軽やかさが身上です。有馬では宿ごとに引き方を違えており、二種を館内で味わい分けられる宿を本記事では選んでいます。
Q. 盛夏に有馬を訪れる利点はありますか?
A. 有馬は六甲山の北側にあたり、市街より気温がやや低く、夜には山の風が通ります。梅雨明け直後は緑が濃く、湯坂の散策も心地よい時季です。日中の暑さを避けるなら、貸切風呂や客室露天、高台に立つ宿を編集部は推します。
Q. 予約はどのくらい前がよいですか?
A. 客室数の少ない宿が多く、週末や連休、記念日の時季は一〜二か月前には埋まり始めます。土曜や盆の時季は平日より価格が上がる傾向があり、静かに過ごすなら平日泊が向きます。
Q. 子ども連れでも泊まれますか?
A. 宿により方針が分かれます。元湯 龍泉閣は子や孫を交えた滞在に応える設えを持ちますが、中の坊瑞苑は十二歳以下を客に取らない大人の宿です。家族旅を計画する際は、各宿の定めを初めに確かめておきたいところです。
Q. 有馬温泉へのアクセスは?
A. 神戸電鉄有馬線の有馬温泉駅が玄関口です。新神戸から地下鉄・北神急行を経ておよそ30分、大阪方面からも一時間ほど。湯宿の多くは駅から徒歩圏か送迎で結ばれ、都市近郊の古湯という立地が際立ちます。
本記事の参考情報
・Feel KOBE(神戸公式観光サイト) — 有馬温泉エリアの観光情報
・Wikipedia: 有馬温泉 — 日本三古湯としての歴史・金泉/銀泉の泉質背景
編集部から
五軒に通じるのは、金泉と銀泉という二種の湯を、宿ごとの流儀で守り継いできたという一点である。鎌倉の世に源を持つ谷筋の宿、自家の源泉を絶やさぬ元湯、二種を貸切で味わい分ける高台の宿、数寄屋に茶の湯を通わせる料亭旅館、大人だけの静けさを流儀とする宿。どれも湯坂の地形と代替わりの物語を背負っている。盛夏の有馬は、市街の暑さを離れて赤い湯に身を沈めるにはよい時季である。次に湯坂を歩くなら、金泉の宿と銀泉の宿、あなたはどちらの湯口から一夜を始めたいだろうか。
次に読むなら
[proofread agent が関連記事を挿入する]