晩夏の英虞湾を一室で味わうなら、客室の露天に夕陽と汽水の湯を映す志摩の五軒がふさわしい。真珠養殖の筏が浮かぶ複雑なリアスの入江に面して、賢島・浜島・甲賀の湯宿は、島影のあいだに沈む陽と、潮の香をふくんだ湯を、それぞれの流儀で切り取ってきた。伊勢参りの帰路に組みやすく、御食国志摩の海の幸を膳に置く。ここでは立地と泉質、そして公開レビューデータを集計した評価をもとに、客室露天の一軒を選んだ。
| # | 宿 | エリア | Score | 客室 | 目安価格 | 一行の特徴 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | アマネム | 浜島町迫子 | 92 | 32 | ¥348–¥550k | 伊勢志摩国立公園に湧く、アマン初の温泉リゾート |
| 2 | 汀渚 ばさら邸 | 阿児町賢島 | 90 | 20 | ¥139–¥189k | 五千坪の高台に全室露天、自社源泉を引く隠れ家 |
| 3 | THE HIRAMATSU 賢島 | 阿児町鵜方 | 89 | 8 | ¥203–¥284k | 八室のみ、フランス料理を主役に据えた美食の宿 |
| 4 | ねぼーや 志摩別邸 | 阿児町甲賀 | 88 | 9 | ¥67–¥87k | 自家源泉の塩化物泉を客室露天に。汽水の湯の宿 |
| 5 | ヴィラ リュウセイ | 阿児町鵜方 | 86 | 9 | ¥56–¥116k | 丘上に全室信楽焼の露天、英虞湾を一望する九室 |
※ Media Picks Score は公開レビューデータを集計し、立地・規模・客室露天の有無など編集部の評価を加えた総合指標です。
※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込・食事付きプランを含む)です。
1. アマネム — 志摩市浜島町
伊勢志摩国立公園の丘に、アマンが初めて温泉を引いた三十二室。全室に天然温泉が満ちる、志摩でもっとも静かな一軒。
Media Picks Score: 92 / 100 32室(スイート24・ヴィラ8)、温泉リゾート。
目安価格 ¥348,000–¥550,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
湯が、日本の民家を思わせる簡素な意匠のなかに静かに置かれている。二〇一六年開業のアマネムは、世界のアマンで初めて温泉を主役に据えたリゾートである。理由は三つ。伊勢志摩国立公園という保護された自然のただなかに立つ立地。全室に天然温泉を引き込み、ヴィラでは専用の露天を庭とともに構えた造り。そして、真珠養殖の内海である英虞湾を、湯殿と客室の双方から望む眺望。派手さを退けた素材と余白の設えが、志摩の風景そのものを引き立てる。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、静けさと空間のゆとり、そしてスタッフの控えめな距離感を評価する声が一貫して見て取れる。一方で、価格帯の高さと、国立公園内という立地ゆえの交通の便については、旅程を選ぶという傾向も読み取れる。温泉大浴場「アマン・スパ」を併設し、湯治とスパを一続きに楽しむ滞在に支持が集まる。食事は伊勢志摩の食材を軸に、和と洋を往き来する構成が印象に残るという評価が多い。
向く人 / 向かない人
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向く:
記念日や長めの休暇を静かに過ごす夫婦旅、湯とスパを一続きに味わいたい人、価格より静けさと空間を優先する旅 -
向かない:
観光地を数多く巡る駆け足の旅程、賑わいや温泉街の情緒を求める人、費用を抑えたい旅
具体情報
- 最寄り駅: 近鉄賢島駅から車で約15分(送迎応相談)
- 客室: スイート24室(約99㎡)・ヴィラ8棟(約99〜366㎡)
- 湯: 全室に天然温泉、ヴィラは専用露天付。温泉大浴場・スパ併設
- チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜12:00
- 食事: 伊勢志摩の食材による和洋のダイニング
- 開業: 2016年(伊勢志摩国立公園内)
2. 汀渚 ばさら邸 — 志摩市阿児町賢島
五千坪の高台に二十室。全室に露天を備え、自社源泉を英虞湾の夕景とともに湯へ落とす隠れ家。
Media Picks Score: 90 / 100 20室(本館15・別邸5)、全室露天付の料理旅館。
目安価格 ¥139,000–¥189,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
湯が、五千坪の敷地の高みから英虞湾を見下ろしている。二〇〇七年開業のばさら邸は、本館・別邸あわせて二十室のすべてに露天を備えた大人の宿である。選ばれる理由は、まず全室露天という徹底ぶり。次に、賢島温泉の自社源泉を引く湯の確かさ。そして「天の鏡」をはじめ占有面積百㎡におよぶ三つの貸切露天が、昼は空を、夜は星を湯面に映す趣向。食事は中庭を望む個室のダイニング「さかなへん」で供され、志摩の海の幸を主役に据える。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、客室露天の開放感と、敷地全体に流れる静けさへの評価が際立つ。人目を気にせず湯に浸かれる造りと、個室食による落ち着きが、記念日の滞在に選ばれる背景として読み取れる。一方、高台という立地ゆえに館内の移動に段差や坂を伴う点は、脚の弱い同行者がいる旅では確認しておきたい傾向として現れる。総じて、静かな二人旅に向く一軒という評価が安定している。
向く人 / 向かない人
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向く:
記念日の夫婦・カップル旅、人目を避けて客室露天を楽しみたい人、個室での食事を望む旅 -
向かない:
幼児連れで段差の多い造りが気になる家族、大浴場での湯めぐりを主目的とする旅、賑やかな滞在を望む人
具体情報
- 最寄り駅: 近鉄賢島駅から車で約5分(送迎あり)
- 客室サイズ: 本館50〜110㎡、別邸100〜150㎡(いずれも露天付)
- 湯: 賢島温泉の自社源泉。貸切露天3つ(「天の鏡」ほか)
- 食事: 中庭を望む個室ダイニング「さかなへん」で夕朝食
- 開業: 2007年
3. THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 賢島 — 志摩市阿児町鵜方
英虞湾へ一直線に抜ける八室のみ。フランス料理を主役に据えた、”滞在するレストラン”としての宿。
Media Picks Score: 89 / 100 8室(本棟4・別棟4)、美食のオーベルジュ。
目安価格 ¥203,000–¥284,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
この宿の主語は、湯より先に、まず料理である。二〇一六年、フランス料理で知られるひらまつが英虞湾を望む地に開いた八室のオーベルジュは、”滞在するレストラン”を掲げる。選ばれる理由は、第一に食。伊勢海老や鮑といった志摩の食材を、フレンチの技で一皿へ昇華させる献立が中心にある。第二に、別棟四室が備える半露天の温泉風呂。奥志摩浜島温泉を引き、英虞湾へまっすぐ抜けるレイアウトのなかで湯を使える。第三に、ミキモトのアメニティが象徴する、真珠の地ならではのもてなしの細部。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、料理への評価が突出して高い。品数より一皿の完成度、そして地の食材を生かす姿勢に支持が集まる。別棟の半露天風呂とテラスの暖炉が生む滞在の質にも、静かな評価が続く。一方、本棟客室の浴室は沸かし湯であり、客室で温泉露天を求めるなら別棟を選ぶ必要がある点は、予約時に確認したい傾向として現れる。食を主目的とする旅にこそ向く、という声が一貫している。
向く人 / 向かない人
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向く:
フランス料理を旅の主目的にする人、少室数の静けさを求める夫婦旅、別棟で半露天の湯を楽しみたい人 -
向かない:
本棟でも客室温泉露天を望む人(本棟は沸かし湯)、和会席を主目的とする旅、大浴場の湯量を重視する人
具体情報
- 最寄り駅: 近鉄賢島駅から車で約5分
- 客室サイズ: 本棟50〜55㎡(4室)/別棟73㎡・半露天温泉風呂付(4室)
- 湯: 奥志摩浜島温泉(ナトリウム-塩化物冷鉱泉)、貸切露天あり
- チェックイン: 15:00〜18:30 / アウト 〜11:00
- 食事: フランス料理(伊勢志摩の食材)
- 開業: 2016年
4. 心湯あそび ねぼーや 志摩別邸 — 志摩市阿児町甲賀
自家源泉の塩化物泉を客室露天に。汽水を思わせる潮気の湯を、九室の別邸で味わう一軒。
Media Picks Score: 88 / 100 9室(うち7室が温泉露天付)、源泉宿の別邸。
目安価格 ¥67,000–¥87,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
湯が、志摩の地から自ら湧いている。約二千坪の敷地に立つこの宿は、豊富な湧出量を誇る自家源泉を持ち、二〇二四年に「志摩別邸」として客室露天付のスイートを設えた。選ばれる理由は、まず塩化物・炭酸水素塩の冷鉱泉という泉質。潮気をふくむ湯は、汽水の海に囲まれた志摩の土地柄をそのまま映す。次に、九室のうち七室に温泉露天を備えた別邸の造り。そして、五つの貸切風呂で湯めぐりが完結する源泉宿ならではの豊かさ。伊勢海老や鮑を主役に、海女の技を生かした料理も膳に並ぶ。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、源泉の湯量と、貸切風呂を含む湯の使い勝手への評価が安定して高い。客室露天で潮気のある湯を独り占めできる点が、湯を主目的とする旅に選ばれる背景として読み取れる。海辺の絶景を第一に求めるより、湯そのものと料理を味わう滞在に向く傾向が現れる。別邸は少室数のため、静けさを保ちやすい造りである点も、落ち着いた滞在を望む層に支持されている。
向く人 / 向かない人
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向く:
源泉の湯を主目的にする温泉好き、客室露天と貸切風呂を巡りたい人、伊勢志摩の海の幸を落ち着いて味わう旅 -
向かない:
客室から英虞湾の海景を一望したい人(内陸寄りの立地)、大規模リゾートの設備を求める旅
具体情報
- 最寄り駅: 近鉄鵜方駅から車で約8分(送迎応相談)
- 客室: 志摩別邸9室(うち温泉露天風呂付スイート7室)
- 湯: 自家源泉(塩化物・炭酸水素塩冷鉱泉)、貸切風呂5つ
- 食事: 伊勢海老・鮑など志摩の海の幸を用いた会席
- 別邸開業: 2024年
5. ヴィラ リュウセイ — 志摩市阿児町鵜方
英虞湾を見下ろす丘に、全室が信楽焼の露天を備える九室。朝焼けから星空までを湯に映す。
Media Picks Score: 86 / 100 9室、全室露天付のスモールラグジュアリー。
目安価格 ¥56,000–¥116,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
湯が、英虞湾を見下ろす星降る丘に据えられている。二〇二一年開業のヴィラ リュウセイは、わずか九室すべてに信楽焼の露天を備えたスモールラグジュアリーである。選ばれる理由は、第一に全室露天とオーシャンビューの両立。リアスの内海を眺めながら湯に浸かれる造りが徹底されている。第二に、メゾネットのスイートヴィラから二名向けのジュニアスイートまで、四タイプ九室それぞれに設えを違える丁寧さ。第三に、お品書きを設けず、その日の食材を好みの調理で供する会席の柔軟さ。近江大倉和牛を軸に据える点も特徴である。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、客室露天から望む英虞湾の眺望と、少室数ゆえの静けさへの評価が中心に見て取れる。朝焼け・夕暮れ・星空と、湯から仰ぐ空の表情の移ろいに触れる声が目立つ。開業から日が浅く評価の母数は発展途上だが、二人旅での満足度は安定している。信楽焼の湯船で潮風を感じながら過ごす時間そのものが、この宿の核として支持されている傾向が読み取れる。
向く人 / 向かない人
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向く:
客室露天から英虞湾を眺めたい夫婦・カップル旅、少室数の静けさを望む人、朝夕の空の変化を湯で味わいたい旅 -
向かない:
大浴場や湯めぐりを主目的とする人、老舗旅館の歴史や様式を求める旅、大人数での賑やかな滞在
具体情報
- 最寄り駅: 近鉄賢島駅から送迎で約5分
- 客室サイズ: 44〜88㎡(4タイプ・全室信楽焼露天付)
- 湯: 全室に露天(信楽焼の湯船)、英虞湾を望むオーシャンビュー
- 食事: お品書きのない会席(近江大倉和牛・志摩の海産物)
- 開業: 2021年3月
よくある質問
Q. 客室露天の湯に浸かるなら、どの季節が良いですか?
A. 英虞湾がもっとも静まるのは、夏休みとお盆を過ぎた八月下旬から九月にかけての晩夏です。暑さがやわらぎ、夕凪の刻には島影のあいだに陽が沈む景色を湯から仰げます。真珠の収穫が本格化する秋も、内海の風情が深まる時期として編集部が推す季節です。
Q. 湯の効能に違いはありますか?
A. 志摩の湯は塩化物泉系が多く、保温性が高く湯冷めしにくいのが特徴です。賢島宝生苑をはじめ賢島で最初に源泉を引いた湯は美肌の湯とも呼ばれ、ねぼーや志摩別邸の塩化物・炭酸水素塩泉は潮気をふくみます。アマネムやばさら邸は自然湧出やろ過循環など湯の扱いが宿ごとに異なるため、泉質の掲示を確認して選ぶと良いでしょう。
Q. 食事の対応(食材の好みやアレルギー)はどこまで可能ですか?
A. 本記事の五軒はいずれも少室数で、食事を主目的に据える宿が中心です。伊勢海老や鮑などの食材変更、アレルギー対応は事前相談で調整できる場合が多く、ヴィラ リュウセイのようにお品書きを設けず調理法を選べる宿もあります。予約時に伝えておくのが確実です。
Q. 子ども連れでも泊まれますか?
A. 客室露天付の少室数宿は、静かな滞在を前提とする造りが多く、宿によって年齢制限を設けています。乳幼児連れの場合は、段差の有無や添い寝の可否、子ども向けの食事対応を事前に確認してください。家族での湯を優先するなら、貸切風呂の予約可否も併せて尋ねておくと安心です。
Q. 伊勢神宮参拝と組み合わせられますか?
A. 志摩市は近鉄で伊勢市・宇治山田から一時間圏内にあり、伊勢参りの帰路に湯宿へ向かう旅程が古くから組まれてきました。賢島・鵜方エリアは近鉄志摩線の終点付近にあたり、参拝後にそのまま英虞湾の宿へ入る流れが自然です。
本記事の参考情報
・伊勢志摩観光ナビ(伊勢志摩観光コンベンション機構) — 英虞湾・賢島・浜島エリアの観光情報
・Wikipedia: 英虞湾 — リアス海岸と真珠養殖の歴史・地理
・Wikipedia: 伊勢志摩国立公園 — 保護区域と自然環境の背景
編集部から
五軒に通底するのは、湯を海景の一部として扱う設計思想である。英虞湾のリアスが生む複雑な島影と、真珠養殖の筏が浮かぶ汽水の内海。その風景を、ある宿は国立公園の余白として、ある宿は五千坪の高台から、ある宿は自家源泉の潮気として切り取ってきた。晩夏の夕凪は、その違いをもっとも静かに見せてくれる季節である。伊勢参りの帰路に一室を選ぶとき、海を望むのか、湯そのものを味わうのか、料理を主役に据えるのか。旅の目的を一つ定めれば、五軒のどれが自分の一夜にふさわしいかは、おのずと決まってくるはずだ。次は、どの入江の湯に陽を沈めてみたいだろうか。