盛夏の甲府盆地、葡萄畑のあいだに湯気が立つ。昭和三十六年に湧出した笛吹川河畔の湯どころで、客室露天を備える五軒を編む。庭園と銘石、源泉かけ流し、離れの静けさ、ワインと甲州の食 — 一軒ごとに異なる「朝湯の輪郭」を持ち、葡萄の青がいちばん深まる葉月の朝にこそ訪ねたい宿だけを選んだ。

# 宿 エリア Score 客室 目安価格 特徴一行
1 銘石の宿 かげつ 笛吹市石和町 94 36 ¥60–¥89k 五千坪の銘石庭園と数寄屋造り、中の殿に客室露天
2 石和名湯館 糸柳 笛吹市石和町駅前 93 42 ¥64–¥86k 葡萄色を基調とした特別フロア「紫雫」の露天客室
3 糸柳別館 離れの邸 和穣苑 笛吹市石和町八田 92 12 ¥84–¥112k 十棟すべてに客室露天、活性鉱石循環の湯
4 シャトレーゼホテル 旅館 富士野屋 笛吹市石和町八田 89 28 ¥44–¥59k 大浴場・露天・客室風呂・貸切すべてが掛流し
5 宵待の里 花水晶 笛吹市石和町川中島 86 20 ¥51–¥77k 露天風呂付き客室と季節の山梨食材

※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。

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1. 銘石の宿 かげつ — 笛吹市石和町

五千坪の銘石庭園を抱く数寄屋造りの本館に、中の殿と東殿の客室露天。葡萄畑の縁で、編集部が筆頭に推す一軒です。

Media Picks Score: 94 / 100  36室、数寄屋造りの中規模温泉旅館。

目安価格 ¥60,000–¥89,000 / 泊 (2名1室・通常期)


銘石の宿 かげつ — 笛吹市石和町 · 五千坪の銘石庭園と数寄屋造りの本館、中の殿に客室露天
PHOTO: 銘石の宿 かげつ — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

銘石とは、観賞用に選び抜かれた自然石を指す古い言葉です。かげつが「銘石の宿」を名乗るのは、約五千坪の庭園に各地から運んだ石を据え、苔と水脈で結んだ景色を客室から借りる構えだからです。本館は純然たる数寄屋造り、館内では二十四時間いつでも温泉が出る客室風呂が用意され、中の殿には露天風呂付き、東殿には温泉半露天風呂付きの客室が並びます。盛夏に訪ねるなら、朝餉前の銘石庭園を歩いてから湯に身を入れる順序がよく似合います。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計したところ、庭園の手入れと数寄屋造りの建築意匠への評価が、料理の品数や接客のきめ細かさよりも先に立つ傾向が読み取れます。露天客室の利用者は「湯量と泉質の柔らかさ」を繰り返し評価しており、石和の弱アルカリ性単純泉が体感として残る一軒であることが分かります。一方、館内の動線がやや複雑で、初訪では迷いやすいという声も散見されます。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    日本庭園と数寄屋造りを目的とする夫婦旅、記念日の和室滞在、葡萄畑と銘石庭園を結ぶ朝の散歩を楽しみたい人
  • 向かない:
    洋風モダンの内装を望む人、館内動線の単純さを優先する人、幼児連れで段差を避けたい家族

具体情報

  • 最寄り駅: JR石和温泉駅 からタクシー約 7 分 (無料送迎あり・要予約)
  • 庭園: 約 5,000 坪、銘石を据えた本格的日本庭園
  • 客室露天: 中の殿(露天風呂付き)・東殿(温泉半露天風呂付き)
  • チェックイン: 15:00〜 (公式予約で 14:00〜) / アウト 〜10:00 (公式予約で 〜11:00)
  • 泉質: 弱アルカリ性単純泉 (石和温泉)
  • 食事: 甲州食材の懐石、季節の山菜とワインの土地柄


2. 石和名湯館 糸柳 — 笛吹市石和町駅前

石和温泉駅から徒歩三分、駅前の広い敷地に立つ大旅館。葡萄色を基調にした特別フロア「紫雫」が、ワイン県の朝湯を象徴します。

Media Picks Score: 93 / 100  42室、駅前の中規模温泉旅館。

目安価格 ¥64,000–¥86,000 / 泊 (2名1室・通常期)


石和名湯館 糸柳 — 笛吹市石和町駅前 · 駅から徒歩三分、葡萄色の特別フロア「紫雫」に客室露天
PHOTO: 石和名湯館 糸柳 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

糸柳は石和温泉駅から徒歩で辿れる、駅前ではもっとも大きな旅館のひとつです。露天客室を集めた特別フロア「紫雫(しずく)」は、ワイン県やまなしを意識した葡萄色を基調にして、明るいテラスに面する造りになっています。新しい特別フロア「遊び草(あそびぐさ)」は二〇二三年一月に誕生したシステムバス付きの特別室で、温泉が浴室から給湯される仕組みです。駅前という立地は、甲府盆地のワイナリー巡りと組み合わせる旅程に強みを発揮します。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計したところ、湯量と泉質、特に「灯りとりの湯」の柔らかさへの評価が頭一つ抜けます。駅から近い利便性と、館の規模感に対する朝食の品数の安定感が、繰り返し利用の動機として読めます。一方、団体客の動線と重なる時間帯では大浴場の混雑がある旨も語られており、露天客室や貸切利用に手を伸ばす理由の一つとなっています。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    電車で来訪する夫婦旅、ワイナリー巡りと組み合わせる旅程、駅前の利便性と特別フロアの両方を一度に味わいたい人
  • 向かない:
    小規模で静謐な離れを望む人、団体客と動線が重なる夕食時間帯を避けたい人、駅前の喧噪が苦手な人

具体情報

  • 最寄り駅: JR石和温泉駅 から徒歩約 3 分
  • 客室タイプ: 「灯りとりの湯」を含む六種、露天客室特別フロア「紫雫」
  • 系列宿: 別館 和穣苑 (本記事 #3)、こやど ゆわ
  • チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜10:00
  • 泉質: 弱アルカリ性単純泉 (石和温泉)
  • 食事: 甲州の食材を取り入れた会席、ワインメニューが充実


3. 糸柳別館 離れの邸 和穣苑 — 笛吹市石和町八田

石和の中で唯一、十棟すべてに客室露天を備える離れの集合体。庭園の小径を歩いて宿に帰る、夫婦のための一軒です。

Media Picks Score: 92 / 100  12室、離れ形式の温泉旅館。

目安価格 ¥84,000–¥112,000 / 泊 (2名1室・通常期)


糸柳別館 離れの邸 和穣苑 — 笛吹市石和町八田 · 全十棟に客室露天、活性鉱石循環の湯
PHOTO: 糸柳別館 離れの邸 和穣苑 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

和穣苑は糸柳の別館として開かれた、客室露天専用の離れ宿です。一階に十部屋の客室露天付き(うち五棟は独立した離れコテージ)、二階に二室の和洋室を備えるという構成で、敷地内には共用の大浴場と露天もあります。湯は石和の共同源泉に「活性鉱石循環システム」を組み合わせ、客室露天と大浴場のすべてで活性石の湯が用意される構えです。離れの形式は、夫婦や友人連れの静謐な滞在に向き、葡萄畑を望む朝の縁側で、湯に入る順序を決めるところから一日が始まります。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計したところ、離れ形式の独立性、二十四節季を取り入れた料理、そして客室露天の使いやすさが三本柱の評価軸として浮かびます。客室の坪数に比して庭との接し方がよく考えられている、という旨の言及が頻繁に見られ、設計の意図と運用が揃っている宿という印象が共有されています。一方、規模が小さいため繁忙期の予約取得が難しいという声も読み取れます。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    離れの独立性を最重要視する夫婦旅、客室露天を半日以上使い倒したい人、季節の食材を主目的とする人
  • 向かない:
    大浴場の社交性を楽しみたい人、駅から徒歩で行きたい人、団体・グループでの賑やかな滞在を望む層

具体情報

  • 最寄り駅: JR石和温泉駅 から車約 5 分(送迎あり・要予約)
  • 客室構成: 一階 客室露天付き 10 室(離れコテージ 5 棟を含む)、二階 和洋室 2 室
  • 湯: 石和共同源泉 + 活性鉱石循環システム
  • チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜11:00
  • 食事: 二十四節季を取り入れた創作和食、地元食材中心


4. シャトレーゼホテル 旅館 富士野屋 — 笛吹市石和町八田

大浴場・露天・客室風呂・貸切露天、すべてが掛流しの天然温泉。値ごろ感と湯の濃度が、釣り合う一軒です。

Media Picks Score: 89 / 100  28室、温泉旅館。

目安価格 ¥44,000–¥59,000 / 泊 (2名1室・通常期)


シャトレーゼホテル 旅館 富士野屋 — 笛吹市石和町八田 · 大浴場・露天・客室風呂・貸切露天すべて掛流し
PHOTO: シャトレーゼホテル 旅館 富士野屋 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

富士野屋は石和の中で、湯の使い方をもっとも明快に語れる宿のひとつです。「すべての風呂が源泉掛流し」、つまり大浴場、内湯二種、露天五種、客室風呂、貸切露天 — そして館内のシャワーまでもが天然温泉。客室は天然温泉掛流し露天のある部屋と、二間続きの広々和室を含む多彩な構成です。屋上の貸切露天「檜の湯」「天空の湯」も用意され、葡萄畑越しに甲府盆地と富士の影を見渡せる時間帯があります。手の届く価格帯と湯量の濃度が釣り合う、堅実な実力派です。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計したところ、源泉掛流しという湯の使い方に対する評価が、料理や接客より一段先に来る傾向が読めます。価格帯と湯のクオリティが釣り合っているという印象が共有されており、繰り返し滞在する旅人の比率も高いと推察されます。一方、館の作りが昭和の温泉旅館の伝統を残しているため、現代的なデザインを求める層には合わないという声もあります。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    湯質と湯量を最優先する湯治寄りの旅、二〜三泊で何度も入浴したい人、家族連れで貸切露天を活用したい層
  • 向かない:
    建物の新しさやモダンデザインを優先する人、料理を旅の主目的とする美食家、静謐な離れだけを望む人

具体情報

  • 最寄り駅: JR石和温泉駅 から徒歩約 20 分、無料送迎あり
  • 湯: 内湯 2 種・露天 5 種、すべて源泉掛流し
  • 貸切露天: 屋上「檜の湯」(4 名まで)・「天空の湯」(6 名まで)
  • チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜10:00
  • 泉質: 弱アルカリ性単純泉 (石和温泉)
  • 食事: 会席料理、ホロホロ鳥や山梨ワイン・地酒


5. 宵待の里 花水晶 — 笛吹市石和町川中島

客室露天を備えた小ぶりな旅館。盛夏の山梨食材を盆に据える、季節の節目を律儀に守る一軒です。

Media Picks Score: 86 / 100  20室、小規模温泉旅館。

目安価格 ¥51,000–¥77,000 / 泊 (2名1室・通常期)


宵待の里 花水晶 — 笛吹市石和町川中島 · 露天客室と季節の山梨食材を盆に据える小規模旅館
PHOTO: 宵待の里 花水晶 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

花水晶は二十室の小ぶりな旅館で、客室露天を備えた部屋と季節の山梨食材を組み合わせた献立で旅人を迎えます。大浴場・露天は二十四時間入浴可能、季節の花を活ける広間の設えに、宿としての律儀さが現れています。盛夏の献立には、桃、シャインマスカット、富士桜ポーク、川魚など、笛吹川扇状地の土地性が出やすく、季節の節目を守る宿の輪郭が見えます。規模の小さい宿が苦手とする「夕食時間の混雑」も避けやすいという利点があります。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計したところ、料理の品数と素材の良さ、そして接客の柔らかさが評価の中心軸となっています。露天客室の利用者は「広さに対する湯の使い勝手の良さ」を語る傾向にあり、過剰な豪華さではなく、堅実な作り込みが選ばれる理由として読めます。一方、駅から離れているため車かタクシーが前提となる点は、確認が必要です。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    二十室前後の落ち着いた規模感を好む夫婦旅、季節の山梨食材を目的とする人、車で訪ねる旅程
  • 向かない:
    駅徒歩圏を優先する人、大旅館のスケール感や賑やかさを求める層、価格より上限を抑えたい節約志向

具体情報

  • 最寄り駅: JR石和温泉駅 から車約 5 分
  • 客室: 全 20 室、客室露天付き客室を複数タイプ用意
  • 大浴場: 大浴場・露天、二十四時間入浴可
  • チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜10:00
  • 泉質: 弱アルカリ性単純泉 (石和温泉)
  • 食事: 季節の山梨食材を中心とした和会席


よくある質問

Q. 石和温泉と春日居温泉はどう違いますか?

A. 石和温泉は昭和三十六年(一九六一年)に葡萄畑から湧き出た温泉地で、笛吹川の南岸に旅館が密集します。春日居温泉は同じ笛吹市内の北東側、扇状地の中段に位置する小ぶりな湯どころで、規模は小さいものの落ち着いた佇まいが特徴です。本記事の五軒は石和側に集中しますが、春日居側の宿も同じ弱アルカリ性単純泉系の湯質を共有しています。

Q. 盛夏の朝湯は何時頃が良いですか?

A. 笛吹川扇状地は朝霧が出やすい土地で、葉月の明け方は気温が二十度前後まで下がります。葡萄畑が霧に沈む光景を狙うなら、日の出後一時間以内、おおむね五時半〜六時半が美しい時間帯です。客室露天をひとり静かに使うには、大浴場が空く五時前後を狙う組み方も成立します。

Q. 客室露天と貸切露天の違いは?

A. 客室露天は客室内に専用の露天風呂が組み込まれた形式で、滞在中ずっと自由に利用できます。貸切露天は宿が用意する独立した露天を時間制で予約する形式で、家族・友人連れに向きます。本記事ではすべて客室露天を備える宿を選定していますが、富士野屋のように両方を充実させる宿もあります。

Q. ワイナリー巡りと組み合わせやすいですか?

A. 笛吹市は山梨県のワイン産地の中心の一つで、勝沼・甲州エリアまで車で十五〜三十分です。駅前の糸柳は電車利用と組み合わせやすく、車で訪ねる場合は和穣苑や花水晶のような少し離れた立地のほうが、ワイナリーを複数回って戻る動線が組みやすくなります。

Q. 一人旅でも利用できますか?

A. 五軒すべて一人利用プランの設定がある場合とない場合があります。客室露天付き客室は通常二名以上を前提とするプランが多いものの、宿によっては一名利用の特別プランが用意されることがあります。個別に公式サイトでの確認が必要です。

本記事の参考情報

ふえふき観光ナビ — 笛吹市公式の観光情報サイト
Wikipedia: 石和温泉 — 湯どころの歴史・湧出経緯・泉質

編集部から

石和は昭和三十六年に葡萄畑から湧出した、戦後の温泉地としては比較的若い湯どころです。だからこそ、各旅館が「庭園」「離れ」「掛流し」「特別フロア」など、異なる表現で個性を作り続けてきました。本記事の五軒は、客室露天という共通項を持ちながら、規模も価格帯も立地も異なります。盛夏に訪ねるなら、明け方の葡萄畑が霧に沈む時間を逃さない宿選びを。次は秋分の頃、ワインの仕込みと巨峰の最盛期に重なる九月の山梨を扱いたいと考えています。

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