梅雨の名残が宮川の源流に白い霧を残す頃、飛騨高山の市街を離れた国府・一之宮・丹生川の谷あいに泊まるなら、客室や離れで湯を独り占めできる宿が、夏の朝をいちばん深く味わわせてくれる。乗鞍と位山を望む里に湧く湯を、檜の湯舟や苔むす庭とともに静かに引く五軒を、湯量と源泉、創業の年とともに紹介する。市街の喧噪を離れ、夫婦ふたりで夏霧の朝湯に身を沈めたい人へ向けた一覧である。
| # | 宿 | 里 | Score | 客室 | 目安価格 | 一行の趣 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 倭乃里 | 一之宮町 | 93 | 8 | ¥99–¥130k | 宮川源流の離れに檜の内湯、八室だけの静寂 |
| 2 | プチホテル ホワイトルンゼ | 一之宮町 | 92 | 15 | 要問合せ | 位山の森に抱かれ一日一組へ移ろう一棟宿 |
| 3 | 御宿 四反田 | 丹生川町 | 90 | 18 | ¥17–¥30k | 築180年の旧家に湧く自家源泉の岩風呂 |
| 4 | 板倉庵 百HAKU | 国府町 | 89 | 1 | ¥39k | 百年の板倉を再生した国府の一棟貸し |
| 5 | シャレー中西 | 丹生川町 | 87 | 21 | ¥13–¥19k | 乗鞍の麓に飛騨高山温泉の露天と檜の内湯 |
※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。一棟貸しの宿は一棟あたりの参考値を示しています。
1. 倭乃里 — 高山市・一之宮町
宮川の源流に沿って、八室だけの離れと母屋が点在する。檜の内湯を全室に備えた、夏霧の朝を独り占めにできる一軒。
Media Picks Score: 93 / 100 8室、離れ中心の数寄屋旅館。
目安価格 ¥99,000–¥130,000 / 泊(2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
宮川の源流が、この宿の主役である。八千坪ともいわれる敷地に母屋と離れが点在し、いずれの客室にも窓辺に檜の内湯が据えられている。源泉を引く露天とは趣を異にするが、川音と霧を眺めながら湯に身を沈める朝の時間は、この谷あいでしか得がたい。2024年にはミシュランキーに選ばれ、もてなしの確かさが内外に知られるようになった。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計したところ、千件を超える評価のなかで、静けさと食事、そして離れの設えへの満足が際立って高い。とりわけ川辺の母屋から望む源流の景と、檜の湯の香りを挙げる声が多く、季節ごとに通う常連が支える宿であることがうかがえる。一方で市街から離れる分、移動には送迎が要る点は心に留めておきたい。
向く人 / 向かない人
- 向く: 記念日や節目の夫婦旅、静けさと源流の景を最優先する人、和の数寄屋造りと檜の湯を体で味わいたい旅人
- 向かない: 市街の散策を宿の合間に挟みたい旅程、にぎやかさを好む小さな子ども連れ、価格を抑えたい滞在
具体情報
- 最寄り駅: 高山駅から送迎あり(要予約)
- 客室: 母屋と離れ あわせて8室、全室に檜の内湯
- チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜11:00
- 食事: 飛騨牛と山里の幸を主とした会席(個室・部屋食中心)
- 開業: 母屋の主屋は江戸期の古民家を移築、宿としての歩みは長い
- 受賞: 2024年 ミシュランキー
2. プチホテル ホワイトルンゼ — 高山市・一之宮町
位山の裾、モンデウス飛騨位山のゲレンデに抱かれた森の宿。いまは一日一組の貸切宿へと姿を変えつつある。
Media Picks Score: 92 / 100 15室、森の一棟宿(一日一組へ改装中)。
目安価格 改装に伴い要問合せ(一日一組・一名 ¥100,000 前後/2食付・税別の案内あり)

なぜ選ばれるか
位山の裾、モンデウス飛騨位山のゲレンデに抱かれた森の宿が、いま一日一組の貸切宿へと姿を変えつつある。レストランを併設し、森のなかでの食と滞在を一続きに楽しめる構えで、夏は深い緑と高原の涼風、冬は雪に囲まれる。一之宮の里からさらに山へ分け入った静けさが、この宿の値打ちである。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、料理と静かな環境への評価が安定して高い。森に包まれた立地と、少人数で迎えるもてなしの距離感を好む声が目立つ。改装を経て一組限定の宿となるため、以前の印象とは設えが変わる点はあらかじめ確かめておきたい。
向く人 / 向かない人
- 向く: 貸切でこもりたい夫婦や少人数、森と高原の静けさを求める人、館内の食を主目的にする旅
- 向かない: 大浴場での湯めぐりを望む人、駅から徒歩で到着したい旅程、改装前の様子を期待する再訪
具体情報
- 最寄り駅: 高山駅から車約25分(公式案内)
- 客室: 一日一組限定の一棟貸しへ改装中(従来15室規模)
- 立地: モンデウス飛騨位山のゲレンデ内、位山の裾
- 食事: 併設レストランでの食事(要確認)
- 特徴: 森のなかのウェディングも手がける一棟宿
3. 御宿 四反田 — 高山市・丹生川町
築百八十年の旧家が、自家源泉の岩風呂と石風呂を抱く。丹生川の里に代々続く、飛騨牛会席の名残りある宿。
Media Picks Score: 90 / 100 18室、築180年の旧家を継ぐ温泉旅館。
目安価格 ¥17,000–¥30,000 / 泊(2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
築百八十年の旧家が、そのまま宿になった。丹生川の里に代々続く四反田は、自家源泉を引いた岩風呂と石風呂を備え、太い柱と古家具が刻む時間のなかで湯に浸かれる。飛騨牛を主とした会席と、囲炉裏端の趣が、古き良き山里の宿の姿を今に伝えている。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計したところ、八百件を超える評価のなかで、建物の風格と自家源泉の湯、そして飛騨牛の料理への満足が高い。古い旧家ゆえの趣を好む声が中心で、設備の新しさより、土地に根ざした時間を求める旅人に支持されていることが読み取れる。
向く人 / 向かない人
- 向く: 古民家の風情と自家源泉の湯を味わいたい夫婦、飛騨牛会席を目当てにする旅、価格を抑えつつ温泉旅館を選びたい人
- 向かない: 新しく整った設備を最優先する人、にぎやかな大型温泉地の気分を求める旅、段差の少ない造りを要する滞在
具体情報
- 最寄り駅: JR高山駅から車約10分
- 客室: 和室・洋室 あわせて18室
- 湯: 自家源泉の岩風呂・石風呂(天然温泉)
- チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜10:00
- 食事: 飛騨牛・山菜・川魚・日本海の幸を用いた会席
- 創業: 旧家は築約180年
4. 板倉庵 百HAKU — 高山市・国府町
百年の時を越えた板倉が、国府の田園を見晴らす丘に建つ。一日一組、谷あいの静けさを丸ごと借りる宿。
Media Picks Score: 89 / 100 1室、古民家板倉を再生した一棟貸し。
目安価格 ¥39,000 / 一棟・通常期

なぜ選ばれるか
百年の時を越えた板倉が、国府の田園を見晴らす丘に建つ。一日一組限定の一棟貸しで、移築した古い板倉を住まいのように再生した宿である。大きな窓から望む飛騨国府の里、薪の温もり、ロフトの風通し——谷あいの静けさをまるごと借りるという滞在のかたちが、ここにある。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、件数こそ多くないものの、一棟を独占できる開放感と、古材を生かした空間の心地よさへの評価が際立つ。家族や気の合う少人数で、台所を使いながらこもる時間を楽しむ声が目立ち、宿というより山里の別宅に近い使われ方をしていることがうかがえる。
向く人 / 向かない人
- 向く: 一棟を独占して静かにこもりたい夫婦や少人数、自炊も交えて滞在を組み立てたい人、古民家再生の空間を味わいたい旅
- 向かない: 源泉露天の湯めぐりを主目的にする旅、配膳付きのもてなしを望む滞在、駅から徒歩で到着したい旅程
具体情報
- 最寄り駅: JR飛騨国府駅から車約5分(高山市街から車約15分)
- 客室: 一日一組限定の一棟貸し
- 敷地: 約700㎡、ウッドデッキと駐車4台分
- 特徴: 築百年の板倉を移築・再生した古民家ヴィラ
5. シャレー中西 — 高山市・丹生川町
乗鞍岳を仰ぐ丹生川の高みに、飛騨高山温泉の露天と檜の内湯が湧く。山の朝風を浴びる湯舟が静かに待つ。
Media Picks Score: 87 / 100 21室、乗鞍の麓の温泉旅館。
目安価格 ¥13,000–¥19,000 / 泊(2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
乗鞍岳を仰ぐ丹生川の高みに、飛騨高山温泉の露天と檜の内湯が湧く。低張性弱アルカリ性の単純温泉を引き、岩を組んだ露天からは山の稜線が望める。二十一室と規模はありながら、山あいの静けさは保たれ、朝風を浴びながらの湯が心地よい一軒である。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計したところ、露天と内湯の湯あたりの柔らかさ、そして乗鞍を望む立地への満足が高い。家族連れや友人同士の利用にも応える懐の深さがありつつ、夫婦で静かに湯を楽しむ声も多く、山里の温泉旅館として安定した支持を得ていることが読み取れる。
向く人 / 向かない人
- 向く: 乗鞍の眺めと露天の湯を求める夫婦、湯あたりの柔らかい単純泉を好む人、丹生川・乗鞍観光と宿を結びたい旅程
- 向かない: 源泉かけ流しの強い個性を求める湯通、市街中心部での滞在を望む旅、徒歩圏での到着を要する人
具体情報
- 最寄り駅: JR高山駅西口から車約30分
- 客室: 和室・洋室 あわせて21室
- 湯: 飛騨高山温泉(単純温泉・低張性弱アルカリ性)、露天・檜の内湯
- チェックイン: 15:00〜(最終19:00)/ アウト 〜10:00
- 駐車場: 無料30台
- 食事: 飛騨牛を主とした会席
よくある質問
Q. 梅雨明け前後の夏に泊まる利点は何ですか?
A. この谷あいでは、梅雨の名残の朝に宮川源流の冷気と霧が立ち、湯気と苔がもっとも美しく映える。日中も市街より涼やかで、檜や石の湯舟に身を沈める朝湯の心地は格別である。混雑を避けたいなら、夏休みの最盛期を外した平日泊を編集部は推す。
Q. 客室や離れで湯を楽しめる宿はどれですか?
A. 倭乃里は全室に檜の内湯を備え、源流の景とともに湯に浸かれる。シャレー中西は飛騨高山温泉の露天と檜の内湯を持ち、四反田は自家源泉の岩風呂・石風呂を擁する。板倉庵 百HAKUとホワイトルンゼは源泉露天ではないが、一棟・一組を独占して静かにこもれる点が値打ちである。
Q. 源泉かけ流しの強い湯を求める場合はどこが向きますか?
A. 湯質そのものを主目的にするなら、自家源泉を引く四反田、飛騨高山温泉を露天に注ぐシャレー中西が向く。倭乃里は源泉露天ではなく檜の内湯が主役で、湯よりも源流の景と静けさに価値を置く宿である。目的に応じて選び分けたい。
Q. 子ども連れでも泊まれますか?
A. 規模のある四反田やシャレー中西は家族連れにも応える懐があるが、倭乃里やホワイトルンゼ、百HAKUは静けさと大人の時間を主題にした宿で、設えや段差の点でも幼い子には向きにくい。受け入れ可否は各宿の公式情報で確かめてほしい。
Q. 市街からのアクセスはどの程度かかりますか?
A. いずれもJR高山駅から車で10〜30分の谷あいにあり、倭乃里は送迎を頼める。公共交通だけでの到着は難しい宿が多く、車か送迎の手配を前提に旅程を組むと安心である。
本記事の参考情報
・飛騨高山旅ガイド(高山市観光公式サイト) — 国府・一之宮・丹生川エリアの観光情報
・岐阜の旅ガイド(岐阜県観光公式サイト) — 飛騨地方の宿・自然の背景
・Wikipedia: 飛騨一宮水無神社 — 一之宮の地名の由来となる飛騨国一宮
・Wikipedia: 位山 — 一之宮の里を見守る霊峰の地理と歴史
編集部から
五軒に通底するのは、市街の喧噪をひと山越えた谷あいの静けさである。源流の景に檜の内湯を据える倭乃里、自家源泉の岩風呂を抱く四反田、乗鞍を仰ぐ露天のシャレー中西、そして一棟をまるごと借りるホワイトルンゼと百HAKU——湯の引き方も建物の素性もそれぞれ異なるが、いずれも谷の朝を独り占めにできる宿という一点で結ばれている。霧の立つ梅雨明けの朝に、夫婦ふたりで湯気のなかに身を沈める。そのための一軒を、この谷のどこに求めるだろうか。次は、創業五十年を越えて土地の文化を継ぐ飛騨の名旅館を巡る予定である。