三徳川の谷に湧く三朝の湯は、ラドン濃度で世界屈指と数えられる療養泉として知られている。梅雨明けの候、水面を渡る朝の霧気と、河原に組まれた露天の湯気とが同じ濃さになる時間がある。編集部が選んだのは、その谷筋に沿って自家源泉を各室に引き、朝の湯に静かに向き合える五軒である。歴史ある名旅館から、十三室の隠れ宿まで。三徳山三佛寺への参詣路の起点に位置し、河原風呂の里の朝を過ごすための宿ばかりを、規模順に並べた。
| # | 旅館 | 位置 | Score | 客室 | 目安価格 | 一行の特徴 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 旅館大橋 | 三朝・河原横 | 94 | 20 | ¥69–¥99k | 五棟が国の登録有形文化財、宮大工の遊び心を宿す名旅館 |
| 2 | 清流荘 | 三徳川上流 | 92 | 27 | ¥38–¥62k | 自家源泉かけ流し、八つの湯を巡る山狭の隠れ宿 |
| 3 | 万翆楼 | 三朝温泉街中央 | 91 | 44 | ¥59–¥129k | 薬師の湯を継ぐ湯宿、露天付き客室と食で高評価 |
| 4 | 後楽 | 三朝温泉街中央 | 88 | 34 | ¥39–¥55k | 因幡の古家を移築した総欅の長屋門、純日本建築の風格 |
| 5 | 桃園館 | 三徳山側・山田地区 | 87 | 13 | ¥14–¥22k | 三徳山参詣の入り口に立つ十三室の湯治宿、源泉100% |
※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。
1. 旅館大橋 — 鳥取県三朝町・三徳川沿い
三徳川の対岸を望む本館・離れ・大広間ほか五棟が国の登録有形文化財、宮大工の意匠を宿す三朝の名旅館。
Media Picks Score: 94 / 100 20室、旅館。
目安価格 ¥69,000–¥99,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
1932年に建てられた木造の本館を中心に、離れ、西離れ、大広間、太鼓橋の五棟が1997年に国の登録有形文化財に指定されている。三徳川に架かる太鼓橋を渡って玄関に入る動線そのものが、この宿の建築的核心である。地下から湧く二種の源泉、ラドン泉に加えて三朝で唯一自噴するトリウム泉を、館内の岩窟の湯とせせらぎの湯で味わえる点も、湯宿としての格を示している。宮大工の遊び心が、客室ごとに異なる意匠として残されている。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計したところ、建築の年輪と湯質の希少性を挙げる声が多い。三徳川を望む眺めと、季節の会席、静かに時を刻む老舗の運営が繰り返し評価されている。一方、部屋ごとに造りが違う分、階段や段差が残る古建築ゆえの動線については、了解の上で訪れる読者に向く宿だと言える。梅雨明け頃から夏の終わりまで、川沿いの緑が濃くなる季節に、湯宿としての本領が発揮される。
向く人 / 向かない人
-
向く:
登録有形文化財の建築に泊まりたい夫婦旅、湯質と歴史を重視する温泉文化派、三徳山三佛寺参詣の前泊 -
向かない:
段差のない現代的な設備を望む人、小さな子連れで走り回る想定の家族、館内で洋食中心の食事を望む人
具体情報
- 住所: 鳥取県東伯郡三朝町三朝302-1
- 客室数: 20室
- 源泉: ラジウム泉+三朝唯一のトリウム泉(岩窟の湯)
- 登録有形文化財: 五棟(本館・離れ・西離れ・大広間・太鼓橋、1997年指定)
- 創業: 1932年(昭和7年)
- 最寄駅: JR倉吉駅からバス20分「三朝温泉」下車
2. 清流荘 — 鳥取県三朝町・三徳川上流
自家源泉のかけ流し湯を八つの浴槽で巡る、三徳川上流の山狭に立つ二十七室の湯宿。
Media Picks Score: 92 / 100 27室、旅館。
目安価格 ¥38,000–¥62,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
この宿の特徴は、自家源泉を八つの浴槽に分けて掛け流していることに尽きる。貸切風呂は三つ、大浴場と露天が館内各所に配され、湯めぐりが一館で完結する。三徳川の上流に位置し、周辺は山狭の森林、朝の湯は霧と一体になる。ラドン濃度の高い放射能泉は、飲用可能な源泉として認可を受けており、館内の飲泉所でも味わえる。療養泉として滞在を重ねる湯治客と、名湯を目当ての一泊旅とが、同じ湯に静かに向き合う宿である。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、湯の掛け流し量の豊富さ、湯質、山狭の静けさが上位に挙げられている。地物の日本海産の魚と、山の食材を組み合わせた会席の完成度も繰り返し評価されている。設備は昭和から令和にかけて段階的にリフォームを重ねてきた歴史があり、館内の一部にはその時代の名残がある。それを「湯治宿の記憶」として楽しめる読者に向く。宿名の通り、川の流れの音が朝の湯の背景音として耳に残る。
向く人 / 向かない人
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向く:
湯治を目的に二泊以上を予定する読者、湯質と湯量を第一に考える温泉文化派、川辺の静けさを求める夫婦旅 -
向かない:
最新設備の一体感を求める人、館内エレベーターの完備を必須とする体調の読者、街歩きの利便を重視する滞在
具体情報
- 住所: 鳥取県東伯郡三朝町山田70
- 客室数: 27室
- 源泉: 自家源泉かけ流し、飲泉可
- 浴槽数: 貸切三つを含む八つ
- 食事: 日本海の魚を軸にした会席
- 最寄駅: JR倉吉駅からバス「三朝温泉」下車
3. 三朝薬師の湯 万翆楼 — 鳥取県三朝町・温泉街中央
三朝が古来から祀ってきた薬師の名を継ぐ湯宿、四十四室に露天付き客室を配する温泉街中央の一軒。
Media Picks Score: 91 / 100 44室、旅館。
目安価格 ¥59,000–¥129,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
宿の名にある「薬師」は、温泉の掘削中に見つかったとされる薬師如来の観音像に由来する。三朝が古くから信仰の対象としてきた薬師の名を、湯の名に受け継いだ湯宿である。露天付き客室が複数用意されており、温泉街の中央に位置しながら、館内で静かに湯を楽しめる設計になっている。会席は素材と器の格を揃え、価格帯上限の部屋では露天と食を同じ空間で味わえる。三朝の名湯を丁寧に扱う正統派として、温泉文化派の読者に長く支持されている。
集約レビューの傾向
公開レビューを集約すると、露天付き客室で過ごす湯と食のバランス、館内の清潔感、朝食の充実が高評価に並ぶ。三朝温泉街の中心にあり、川辺の河原風呂や薬師堂への散策が徒歩で完結する立地も評価が高い。上位ランクの部屋は価格帯の上限に近く、記念の旅程で選ばれる傾向が読み取れる。湯質については、露天と大浴場のそれぞれで肌当たりが違うと語られることが多く、これは源泉温度と加水設計の違いから来るものと考えられる。
向く人 / 向かない人
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向く:
露天付き客室を第一に考える夫婦旅、記念日の一泊、温泉街散策と湯宿の両方を求める滞在 -
向かない:
静けさを最優先し人の気配を絶ちたい滞在、価格帯下限の湯治的な二泊三泊を想定する予算配分
具体情報
- 住所: 鳥取県東伯郡三朝町三朝365
- 客室数: 44室(露天付き客室あり)
- 湯: 薬師の湯(三朝の高濃度ラジウム泉系)
- 食事: 会席、器と設えを整えた本膳
- 立地: 三朝温泉街中央、河原風呂・薬師堂まで徒歩圏
- 最寄駅: JR倉吉駅からバス20分「三朝温泉」下車
4. 三朝温泉 後楽 — 鳥取県三朝町・温泉街中央
因幡の古家より移築した総欅の長屋門が迎える、三朝温泉街のほぼ中央に立つ純日本建築の湯宿。
Media Picks Score: 88 / 100 34室、旅館。
目安価格 ¥39,000–¥55,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
因幡地方の旧家から移築した総欅造りの長屋門と、それに続くロビーが、この宿の印象を決めている。ラジウム温泉と山海の会席を主題に据え、国際観光旅館として長く運営されてきた実績が、館内の落ち着きに現れる。露天付き客室と、温泉街中央という立地の利便が両立する点も、三朝を初めて訪れる読者にとって選びやすい要素である。派手さを狙わず、純日本建築の本流を保ちながら、湯と食を丁寧に整える。旅館らしさを求める読者に、素直に勧められる一軒である。
集約レビューの傾向
公開レビューを集約すると、建物の風格と接客の落ち着き、四季の会席の完成度に高評価が集まっている。長屋門をくぐって玄関に至る動線、ロビーの梁の太さ、庭を望む大浴場が、印象に残る要素として繰り返し挙げられる。館内の一部は年月を重ねているが、それを日本建築の骨格として楽しめる読者に向く。夏場の日本海の魚介、冬場の松葉ガニと、季節ごとの主役食材が明確なため、旅程を組む際の目安がつけやすい。
向く人 / 向かない人
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向く:
純日本建築の宿を求める夫婦旅、四季の会席を目当てとする滞在、温泉街散策の起点として泊まる読者 -
向かない:
現代的なデザイン旅館を志向する滞在、山奥の静寂を第一とする読者、洋室と洋食を主体に望む旅程
具体情報
- 住所: 鳥取県東伯郡三朝町三朝972-1
- 客室数: 34室
- 建築: 因幡の旧家から移築した総欅造りの長屋門
- 湯: 三朝のラジウム温泉、露天付き客室あり
- 食事: 四季の会席、山海の食材
- 最寄駅: JR倉吉駅からバス20分「三朝温泉」下車
5. 三朝温泉 桃園館 — 鳥取県三朝町・山田地区(三徳山側)
日本遺産・三徳山に近い山田地区に立つ十三室の小宿、源泉100%の三朝を静かに湯治する一軒。
Media Picks Score: 87 / 100 13室、旅館。
目安価格 ¥14,000–¥22,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
三徳山三佛寺の投入堂を訪ねる際、参詣路の入り口に位置する山田地区の湯宿である。日本遺産に指定された三徳山の登拝の前後泊として、温泉街中央からは少し離れた立地に価値がある。客室は十三室と小規模、館内の湯は源泉100%を掲げ、賑わいから距離を置いた滞在が組める。日帰り入浴も受け付けており、地元の湯治客と旅の読者とが混ざり合う。価格帯は温泉街中央の宿よりも抑えられており、二泊三泊の湯治旅を組みやすい。三朝の湯を素直に浴びるための、小さな宿である。
集約レビューの傾向
公開レビューを集約すると、素朴な運営、湯の素直さ、価格に対する満足度、三徳山への近さが上位に並ぶ。館内の設備は大規模旅館のような多機能さは持たないが、その分、湯宿としての骨格が単純で分かりやすい。館主と地元の距離が近く、三徳山参詣の相談ができる点も、体力に応じた登拝を計画したい読者には有用である。会席は地元食材を中心に構成され、価格帯に対する充実感が高い。梅雨明けから初秋にかけて、三徳山の緑が最も濃くなる季節に、参詣と湯治を組み合わせた滞在に向く。
向く人 / 向かない人
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向く:
三徳山三佛寺投入堂への登拝を計画する読者、二泊以上の湯治旅、賑わいから離れた小宿を望む一人旅 -
向かない:
温泉街散策の利便を第一に考える滞在、露天付き客室の広さと格を重視する読者、記念日の華やかな一泊
具体情報
- 住所: 鳥取県東伯郡三朝町大字山田118-1
- 客室数: 13室
- 湯: 源泉100%の三朝温泉、日帰り入浴も可
- 立地: 三徳山三佛寺の参詣路方面、山田地区
- 最寄駅: JR倉吉駅からバス「三朝温泉」下車、三徳山方面へ
よくある質問
Q. 三朝温泉のベストシーズンは。
A. 梅雨明けから小暑にかけての七月上中旬と、紅葉が三徳山を染める十一月が、編集部が推す時期である。梅雨明けは三徳川の水量が澄み、朝の湯が霧に包まれる。十一月は投入堂への参詣路の紅葉が最も濃い。冬場は松葉ガニの本格漁が入り、山陰の魚介を目当てにする滞在に向く。夏の週末は温泉街に人が集中するため、平日を選ぶと落ち着いた滞在ができる。
Q. 三朝の湯は世界屈指のラドン泉と言われるが、その意味は。
A. 三朝の湯は、ラドン濃度が高い放射能泉として国内外に知られている。温泉法の療養泉基準を大きく上回る泉源が温泉街に複数存在し、飲泉と入浴の両方で利用される。ラドンは無色無臭の希ガスで、湯の風味や色に現れるものではない。宿の説明で「湯質を感じる」よりも「湯質を浴びる」という言い方をするのは、この物理に由来する。
Q. 三徳山三佛寺投入堂への参詣は、宿泊とどう組むのが良いか。
A. 投入堂への登拝は、専用の登山口から片道約60〜90分の急峻な山道で、専門の履物と二人以上での入山が必要となる。前泊または前々泊で三朝の湯に浸かり、体力を整えて臨む読者が多い。宿によっては投入堂参拝の予約や履物レンタルの案内をしている。桃園館のような三徳山側の宿は、登拝の起点として利便がある。
Q. 河原風呂とは何か、宿泊者も利用できるのか。
A. 三朝温泉街の三徳川河原には、湯船が野天で組まれた河原風呂がある。混浴で、地元の湯治文化の象徴として続いてきた場所である。宿泊者に限らず誰でも入れる無料の外湯で、朝の湯と夜の湯で表情が変わる。宿の湯とは別の三朝の顔として、散策の途中に立ち寄る読者が多い。
Q. 客室露天付きの部屋を選ぶ際の目安は。
A. 三朝の宿は客室露天の湯温、加水加温の有無、源泉かけ流しかどうかで体感が大きく変わる。自家源泉を持つ宿は湯量に余裕があり、客室露天でも掛け流しに近い状態を維持しやすい。旅館大橋、清流荘、桃園館は自家源泉または源泉100%を掲げており、湯質を重視する読者に向く。
本記事の参考情報
・三朝温泉観光協会 — 三朝温泉全体の観光情報、河原風呂の場所、外湯の一覧
・文化庁 日本遺産ポータル — 三徳山三佛寺と三朝温泉に関する日本遺産指定の背景
・Wikipedia: 三朝温泉 — 泉質・歴史・地理の概説
編集部から
三朝の湯宿を五軒に絞る際、編集部が重視したのは湯質と建築、そして河原風呂の里としての三朝の輪郭にどう向き合っているかであった。名旅館の格を持つ旅館大橋から、源泉100%を掲げる小宿の桃園館まで、規模と価格帯を分けて並べた。三朝の湯は、賑わう温泉街の側にも、山田や三徳山側の静けさの中にも、同じ湯脈で流れている。次はどの湯宿に泊まるか。三徳山三佛寺の登拝と組む前泊か、それとも湯治の二泊三泊か。読者の旅程に合わせて、選び直せる五軒として整えたつもりである。