神在月を来月に控えた秋分の候、山陰の湯場に離れ形式で棟を分ける五軒を選んだ。宍道湖の南に位置する島根の玉造温泉と、日本海の砂浜に湧く鳥取の皆生温泉、二つの湯場を横断する編成である。出雲大社への参拝を軸に置く旅程、あるいは日本海の夕景を旅の中央に据える旅程、いずれにも合う独立棟の宿を、玉造から三軒、皆生から二軒、それぞれの湯守の歴史と共に紹介する。

# 宿 エリア Score 客室 目安価格 1行特徴
1 出雲・玉造温泉 白石家 松江市 94 73 ¥53–¥65k 玉造の老舗、離れと母屋を並立する広大な敷地
2 玉造温泉 佳翠苑 皆美 松江市 93 115 ¥62–¥88k 皆美家の姉妹宿、うるわし庭園と家伝鯛めし
3 玉造グランドホテル 長生閣 松江市 86 84 ¥45–¥65k 1803年創業、めのうを敷き詰めた「めのう風呂」
4 皆生游月 米子市 92 32 ¥88–¥130k 2019年開業、全室露天で日本海に面する
5 皆生温泉 いこい亭 菊萬 米子市 88 41 ¥40–¥55k 全室マッサージチェア
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※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。

1. 出雲・玉造温泉 白石家 — 松江市

玉湯川に沿い、離れの棟を庭の奥まで配した宿。神在月を前にした秋の玉造で、夫婦の静けさに合う一軒。

Media Picks Score: 94 / 100  73室、中〜大規模温泉旅館。

目安価格 ¥53,000–¥65,000 / 泊 (2名1室・通常期)


出雲・玉造温泉 白石家 — 島根・玉造 · 玉湯川沿いに広がる離れ棟と大浴場を備えた歴史ある湯宿
PHOTO: 出雲・玉造温泉 白石家 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

白石家は、玉造温泉の中心地に大きな敷地を構え、母屋のほかに離れ棟を庭の奥へと配してきた。神秘的な出雲の温泉文化を継ぐ格式と、玉湯川に沿う立地の穏やかさが、四十代以上の夫婦旅に選ばれてきた理由である。ガレやラリックのガラス作品を集めた館内ギャラリーは、湯上がりの散策に落ち着きを与える。湯質はナトリウム塩化物・硫酸塩泉、玉造の「美肌の湯」を絶えず引き入れる大浴場と、独立性の高い離れ客室を並立させる編成が、この宿の核である。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計した集約傾向として、湯の柔らかさと接客の丁寧さ、館内の意匠と食事の質を並列に高く評価する声が確認できる。年配層からは「大きすぎない部屋数の安心感」、夫婦客からは「離れの静けさで会話が落ち着く」といった主旨の言及が多数を占める。一方で、館の広さゆえ移動距離を負担に感じる声も少なからず見られ、体調に不安のある旅程では、母屋寄りの客室を選ぶ判断が妥当となる。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    出雲大社参拝を軸に一泊二日で神在月を迎える夫婦、湯質と接客の格式を優先する40〜70代、館内での過ごし方に一日を費やす旅程
  • 向かない:
    幼児連れの家族(離れの独立性は高いが敷地が広く移動が長い)、玉造温泉街を歩き回るより湯宿一軒で完結させたい強い志向のない旅程

具体情報

  • 最寄り駅: JR玉造温泉駅から車で約5分(送迎あり)
  • 客室数: 73室(母屋・離れを含む)
  • 湯: ナトリウム・カルシウム 塩化物・硫酸塩泉(玉造温泉引湯)
  • 食事: 出雲の食材を用いた会席、地元醤油・味噌を活かす夕食
  • 創業: 明治年間、湯守を継ぐ老舗として長年運営
  • チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜10:00


2. 玉造温泉 佳翠苑 皆美 — 松江市

宍道湖畔に立つ皆美館の姉妹宿として、玉造の高台に「うるわし庭園」を持つ湯宿。数寄屋の意匠と離れ形式の特別室が並ぶ。

Media Picks Score: 93 / 100  115室、中〜大規模温泉旅館。

目安価格 ¥62,000–¥88,000 / 泊 (2名1室・通常期)


玉造温泉 佳翠苑 皆美 — 島根・玉造 · 宍道湖畔皆美館の姉妹宿、うるわし庭園と客室露天を備える
PHOTO: 玉造温泉 佳翠苑 皆美 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

皆美グループは、宍道湖畔に本館「皆美館」を構えて創業130年余を数える出雲の名家である。佳翠苑 皆美はその玉造温泉における姉妹宿として、数寄屋造りの本館棟と、庭園を挟んだ独立性の高い特別室・離れ形式の客室を並立させてきた。館内には「うるわし庭園」と名付けられた広大な緑地が広がり、露天風呂付き客室、貸切風呂、家伝の鯛めしを供する会席と、山陰の格式を保つ滞在を支える設えが揃う。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、家伝鯛めしを筆頭に食事の完成度への言及が多く、湯質と館内動線の広やかさへの好意的な集約が確認できる。夫婦客と家族三世代の双方から支持を集める傾向にあり、特に露天風呂付き客室と離れ形式の特別室について、独立性と静けさへの評価が高い。全115室と規模は大きいが、庭園と館内の設計が視線を遮る工夫を凝らしており、団体宿らしい騒がしさは抑えられているという主旨の声が集約される。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    出雲大社参拝と宍道湖の夕景を組み合わせる夫婦旅、家伝鯛めしを目的とした食通の一泊、露天付き離れで静けさを求める40〜70代
  • 向かない:
    素泊まりで街歩きに集中したい旅程(食事の格式と会席時間を活かせる旅向き)、少人数の湯宿らしさを重視する旅(規模が大きい)

具体情報

  • 最寄り駅: JR玉造温泉駅から車で約5分(送迎あり)
  • 客室数: 115室(数寄屋本館・離れ形式特別室を含む)
  • 湯: ナトリウム・カルシウム 塩化物・硫酸塩泉(玉造温泉引湯・自家源泉あり)
  • 食事: 家伝の鯛めしを中軸とした山陰会席、朝食は出雲蕎麦と地元味噌汁
  • 創業: 本館「皆美館」1888年創業、佳翠苑 皆美は姉妹宿として玉造に開業
  • チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜10:00


3. 玉造グランドホテル 長生閣 — 松江市

文化元年(1803)創業。玉造の勾玉造りの里らしく、めのうを壁と床に用いた大浴場を持つ湯守の宿。

Media Picks Score: 86 / 100  84室、中〜大規模温泉旅館。

目安価格 ¥45,000–¥65,000 / 泊 (2名1室・通常期)


玉造グランドホテル 長生閣 — 島根・玉造 · 1803年創業、玉湯川沿いのめのう風呂を持つ老舗宿
PHOTO: 玉造グランドホテル 長生閣 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

長生閣は、玉造温泉の中でも文化元年(1803)まで遡る創業年を持ち、玉造の湯守を代々担ってきた宿である。玉造がかつて出雲の勾玉造りの里であったことに由来する「めのう風呂」を敷地内に構え、めのう原石を壁面と床面に敷き詰めた大浴場を看板とする。館内には別棟形式の客室があり、玉湯川沿いの敷地の広さを活かして、母屋・別館・離れ棟を並立させる構成となっている。歴史の重みと現代的な使い勝手のバランスを取る運営姿勢が印象に残る。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、めのう風呂の意匠と湯の柔らかさへの言及が多く、玉造の名湯を象徴する存在として位置づけられている。一方で、館の年季ゆえに客室の設備更新に濃淡が見られ、離れ棟と本館の格差に触れる集約傾向が確認される。夫婦旅では別棟や離れ形式の客室を選ぶ判断が、宿の魅力を最大化する。食事は宍道湖の魚介と山陰の食材を用いた会席で、量の多さに触れる声が集約される。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    めのう風呂という玉造ならではの湯場体験を目的とする夫婦、老舗の格式と歴史の重みを尊ぶ40〜70代、離れ棟を予約できる旅程
  • 向かない:
    設備の新しさを重視する旅(老舗ゆえに客室により状態が異なる)、少食志向の旅(会席の量が伝統的に多い)

具体情報

  • 最寄り駅: JR玉造温泉駅から徒歩約12分(送迎あり)
  • 客室数: 84室(母屋・別棟・離れを含む)
  • 湯: ナトリウム・カルシウム 塩化物・硫酸塩泉(玉造温泉引湯)
  • 食事: 宍道湖の魚介と出雲の山菜を用いた会席、量の多さで知られる
  • 創業: 文化元年(1803)、玉造温泉の湯守として220年余の歴史
  • 特徴: めのうを壁・床に敷き詰めた「めのう風呂」


4. 皆生游月 — 米子市

日本海に面し、全客室のテラスに露天風呂を備える2019年開業の宿。皆生の砂浜と塩湯の起源を、離れの独立性に置き換える。

Media Picks Score: 92 / 100  32室、中〜大規模温泉旅館。

目安価格 ¥88,000–¥130,000 / 泊 (2名1室・通常期)


皆生游月 — 鳥取・皆生 · 全客室に露天風呂を備え日本海を望む2019年開業のリゾート旅館
PHOTO: 皆生游月 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

游月は、皆生温泉の老舗「松月」の姉妹宿として、2019年5月に開業した比較的新しい滞在型旅館である。全32室すべてが日本海に面し、テラスに露天風呂を備える。最上階には日本海を見渡すインフィニティ露天が設けられ、宿全体が独立性の高い離れ的な編成を志向している。皆生温泉が全国的にも珍しい「海中湧出」の塩湯であることを、この宿は現代的な建築意匠の中に丁寧に落とし込んでいる。夕食は山陰の海と山の恵みを用いた創作会席、ワイン・日本酒とのペアリングを重視する編成である。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、客室露天からの日本海の眺望、館内動線の設計、食事とペアリングの完成度に対する高い評価が集約される。近年開業の宿らしく、設備の新しさと客室の広さを両立する点、そして接客の丁寧さに関する言及が多い。客室数を32室に絞った編成が、離れの独立性に近い滞在感を実現しているという主旨の声が集約される。価格帯は皆生温泉の中では上位に位置する。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    記念日・還暦・退職祝いなど節目の夫婦旅、全室露天と日本海の眺望を目的とする滞在、食事とペアリングを楽しむ食通志向
  • 向かない:
    幼児連れの家族(宿の設えが夫婦・大人主体)、皆生温泉街を歩き回りたい旅程(宿内完結型の設計)、価格帯を抑えたい旅程

具体情報

  • 最寄り駅: JR米子駅から車で約15分(送迎あり)
  • 客室数: 32室(全室日本海側、全室テラス露天付き)
  • 湯: ナトリウム・カルシウム 塩化物泉(皆生温泉、海中湧出の塩湯)
  • 食事: 創作和会席、山陰の海の幸と山の恵み、ワイン・日本酒ペアリング
  • 開業: 2019年5月(老舗「松月」の姉妹宿として新設)
  • チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜11:00


5. 皆生温泉 いこい亭 菊萬 — 米子市

皆生温泉の中規模湯宿。全室マッサージチェアが伝統的に置かれてきた。

Media Picks Score: 88 / 100  41室、中〜大規模温泉旅館。

目安価格 ¥40,000–¥55,000 / 泊 (2名1室・通常期)


皆生温泉 いこい亭 菊萬 — 鳥取・皆生 · 全室マッサージチェア備え<!-- FACT_EDIT_f-038 ORIGINAL=中規模湯宿” loading=”lazy” style=”width:100%;height:auto;display:block;border-radius:2px;” />
PHOTO: 皆生温泉 いこい亭 菊萬 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

菊萬は、皆生温泉の中で全41室規模を長く保ってきた湯宿である。全客室にマッサージチェアが備わるという設えは、40代以上の湯宿滞在を熟知した宿の判断である。皆生温泉の海中湧出の塩湯を、大浴場・露天・貸切風呂の三段構えで供する。露天は男女入替制で、湯船の広さと湯温の管理に一定の評価が集約されている。母屋と離れ棟の間には、庭の設えを挟み、独立性の高い滞在を望む夫婦客の受け皿としても機能する。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、湯の柔らかさ、貸切風呂の使い勝手、料理の量と質のバランスに関する言及が集約される。特にマッサージチェアに対する高い評価が、リピーター層の集約傾向として現れる。中規模ゆえに、館内の落ち着きと動線の分かりやすさを両立している主旨の集約が確認できる。食事は皆生の魚介と山陰の食材を用いた会席で、量の設定は伝統的に多め、少食志向の旅程では小食プランへの切り替えが妥当となる。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    皆生温泉の湯質と離れ棟の独立性を、価格を抑えて味わいたい夫婦、リピーターとしてマッサージチェアと湯宿の合わせ技を求める旅程
  • 向かない:
    設備の最新さを重視する旅(老舗ゆえに客室により差がある)、価格帯を上位に振って新設リゾートを選ぶ判断

具体情報

  • 最寄り駅: JR米子駅から車で約15分(送迎あり)
  • 客室数: 41室
  • 湯: ナトリウム・カルシウム 塩化物泉(皆生温泉、海中湧出の塩湯)
  • 食事: 皆生の魚介と山陰の食材を用いた会席、量の設定は伝統的に多め
  • 特徴: 全室マッサージチェア備付
  • チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜10:00


よくある質問

Q. 神在月とはいつのことですか?

A. 旧暦十月を指す出雲の呼称で、全国の八百万の神々が出雲大社に集まると伝えられる期間である。2026年は新暦の11月中旬から下旬に相当する。編集部が推す時期は、この神在月を来月に控えた秋分から10月中旬にかけて。混雑の始まる前に、山陰の湯場の静けさを味わえる時期である。

Q. 玉造温泉と皆生温泉の湯質はどのように違いますか?

A. 玉造温泉はナトリウム・カルシウム塩化物・硫酸塩泉で、『出雲国風土記』にも記された美肌の湯として、柔らかい肌当たりで知られる。皆生温泉は同じ塩化物泉に属するが、海中湧出という珍しい起源を持ち、より塩分の濃い塩湯である。二つの湯を一つの旅程で味わうことができるのが、山陰の縦断旅の妙である。

Q. 出雲大社への参拝と組み合わせる場合、拠点として玉造と皆生のどちらが良いですか?

A. 出雲大社までの距離は、玉造温泉から車で約40分、皆生温泉から約1時間半である。参拝を主目的とする旅程なら玉造を拠点とし、日本海の眺望や、大山への行程を含めるなら皆生を選ぶ判断が妥当となる。二泊の場合は、玉造→皆生の順で移動する編成が地理的に無理なく組める。

Q. 離れ形式の宿は、車椅子や足腰の弱い方の利用に向いていますか?

A. 独立性の高い離れ棟は静けさの利点がある一方、母屋との移動距離が生じる。段差の有無や車寄せの位置は宿ごとに大きく異なるため、予約時に個別に確認する判断が妥当である。特に長生閣や白石家のような広大な敷地の宿では、母屋寄りの客室を選ぶことで、負担を抑えつつ格式を味わう選択が可能である。

Q. 山陰の秋の食材は、この時期どのようなものが供されますか?

A. 秋分から神在月にかけての山陰は、宍道湖の鱸(すずき)、日本海の甘鯛と鰤(ぶり)の走り、奥出雲の松茸と栗、そして秋鹿・出雲・佐香の地酒が食卓に上がる。各宿の会席は、この土地の秋の恵みを軸に組まれる。特に佳翠苑 皆美の家伝鯛めしは、山陰の食の記憶を象徴する一椀として、記事内で特に紹介した。

本記事の参考情報

しまね観光ナビ(島根県公式観光情報サイト) — 島根県の観光・温泉情報
とっとり旅(鳥取県観光連盟) — 鳥取県の観光・温泉情報
Wikipedia: 玉造温泉 — 玉造温泉の歴史・地理の背景
Wikipedia: 皆生温泉 — 皆生温泉の海中湧出の歴史

編集部から

山陰の二つの湯場に離れの棟を求めるとき、玉造は宍道湖の南に、皆生は日本海の砂浜に、それぞれ由来を異にする湯を守ってきたことに気づく。神在月を来月に控えたこの季節、湯守の宿の朝の静けさは、都市の速度から離れた時間を、40代以上の夫婦旅にそっと差し出してくれる。次に取り上げるとすれば、松江城下の武家屋敷を宿に転じた小さな一軒か、あるいは大山の東麓に近い日野郡の湯場か。読者が山陰にどう関わるかを、続けて書き継いでみたい。

次に読むなら