梅雨を持たぬ蝦夷の地に、盛夏がゆっくりと立ち上がる。ニセコアンヌプリと羊蹄山に挟まれた五色温泉郷・昆布温泉郷から、客室の露天に身を沈めたまま羊蹄の青稜を仰げる宿を五軒選んだ。火山がもたらす硫黄泉や食塩泉の透明と濁り、源泉のかけ流し、そして山岳を借景に取り込む湯づかいの作法。湯量と源泉数、標高、坪数を控えめに記しながら、北海道の上質な一泊を求める読者に向けて、Yadolist 編集部が静かに推したい五軒である。

# 宿 温泉郷 Score 客室 目安価格 一行
1 坐忘林 倶知安・花園 93 15 ¥187–230k 全室客室露天、原生林に佇む自家源泉の隠れ宿
2 鶴雅別荘 杢の抄 昆布温泉 91 25 ¥84–119k 展望露天付き客室が並ぶ、森に抱かれた湯宿
3 五色温泉旅館 五色温泉 90 10 ¥16–28k 標高750m、道内屈指の酸性硫黄泉を守る一軒
4 湯心亭 アンヌプリ温泉 88 17 ¥26–34k 49℃の源泉を一切薄めぬ、生粋のかけ流し
5 いこいの湯宿 いろは 昆布川温泉 87 29 ¥34–43k メタけい酸を含む美肌の湯、和の寛ぎを継ぐ宿
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※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。

1. 坐忘林 — 倶知安町花園

原生林に十五室。全室が内湯と露天の二つの源泉風呂を備えた、ニセコでただ一軒の二ミシュランキー旅館。

Media Picks Score: 93 / 100  15室、隠れ宿形式の温泉旅館。

目安価格 ¥187,000–¥230,000 / 泊 (2名1室・通常期)


坐忘林 — 倶知安町花園 · 全室に内湯と露天の源泉風呂を備える二ミシュランキー旅館
PHOTO: 坐忘林 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

四万平方メートルの白樺林に、十五の独立した客室が点在する。湯は、敷地の地下千メートルから汲み上げる自家源泉。やや黄味を帯びたナトリウム系の柔らかな湯が、すべての客室の内湯と露天を満たし続ける。茶人・千宗旦の「坐忘」を名に冠したこの宿は、二〇一五年の開業以来、簡素のなかに張りつめた緊張を保ってきた。二〇二四年にはミシュランの宿セレクションで道内唯一の二キーを得た一軒である。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計したところ、客室そのものが湯宿として完結している点への評価が際立つ。露天に身を沈めたまま林を眺める静けさ、無垢材と土壁の触感、そして料理の構成力を挙げる声が多い。一方、最寄りの集落から距離があり、車での移動を前提とする立地ゆえ、利便を最優先する旅程には向かないという傾向も見て取れる。湯量や静寂を重んじる読者から支持を集める宿と言える。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    静寂と自家源泉を最優先する夫婦旅、建築と料理を一体で味わいたい滞在、記念日の一泊
  • 向かない:
    ニセコの市街観光を主目的とする旅程(車移動が前提)、価格を抑えたい旅、小さな子ども連れ

具体情報

  • 所在: 北海道虻田郡倶知安町花園(新千歳空港から車約2時間20分)
  • 客室: 全15室、各70〜80㎡のスイート形式、全室内湯+露天の二源泉風呂
  • 泉質: 自家源泉(地下千メートル)かけ流し、ナトリウム系
  • 食事: 夕・朝とも会席仕立て
  • 開業: 2015年(2024年 ミシュラン二キー)


2. ニセコ昆布温泉 鶴雅別荘 杢の抄 — ニセコ昆布温泉

昆布の森に二十五室。展望露天やサウナを備えた客室が並ぶ、湯と森を主役にした別荘の宿。

Media Picks Score: 91 / 100  25室、温泉旅館。

目安価格 ¥84,000–¥119,000 / 泊 (2名1室・通常期)


ニセコ昆布温泉 鶴雅別荘 杢の抄 — ニセコ町 · 展望露天やサウナ付き客室が並ぶ森の湯宿
PHOTO: 鶴雅別荘 杢の抄 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

昆布温泉郷の森のなかに、二十五室だけを構える。展望温泉風呂を備えた客室、畳のリビングを持つ間取り、サウナ付きの部屋と、湯を客室まで引き込む造りが豊富に用意されている。旅館の情緒とホテルの機能を併せ持つ「ハイブリッド型」を掲げ、デッキテラスの露天からニセコの自然を独り占めできる構成が支持を集めてきた。鶴雅が手がける別荘形式の一軒であり、湯と森を主語に据えた静かな滞在が叶う宿である。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、客室露天の眺めと、夕食の構成への評価が安定して高い。デッキに出れば森が迫り、湯気の向こうに季節の色が移ろう点を挙げる声が目立つ。接遇の落ち着きや館内の静けさも好まれている。一方、規模ゆえに繁忙期は大浴場が混み合う時間帯があること、価格帯が中位以上であることから、湯巡りの拠点として軽く泊まる用途には合いにくい傾向が見て取れる。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    客室露天で森を眺めたい夫婦・友人連れ、旅館とホテル双方の快適さを求める滞在、記念日の一泊
  • 向かない:
    宿泊費を抑えたい旅、終日外で過ごし寝るだけの旅程、大規模館の賑わいを避けたい人

具体情報

  • 所在: 北海道虻田郡ニセコ町ニセコ(ニセコ昆布温泉郷)
  • 客室: 全25室、展望露天・サウナ付きなど多彩なタイプ
  • 泉質: 昆布温泉の自家源泉、大浴場・客室露天
  • 食事: 夕・朝とも会席仕立て
  • 運営: 鶴雅グループの別荘形式(非・星野系)


3. ニセコ五色温泉旅館 — 五色温泉

標高七百五十メートル、登山口に十室。イワオヌプリが湧かせる道内屈指の酸性硫黄泉を守る一軒。

Media Picks Score: 90 / 100  10室、山の湯宿。

目安価格 ¥16,000–¥28,000 / 泊 (2名1室・通常期)


ニセコ五色温泉旅館 — ニセコ町 · 標高750mのイワオヌプリ登山口に建つ酸性硫黄泉の宿
PHOTO: ニセコ五色温泉旅館 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

ニセコの奥座敷、イワオヌプリとニセコアンヌプリの登山口に、十室だけの宿がひっそりと建つ。標高は七百五十メートル。湯は、火山が湧かせる「酸性・含硫黄—マグネシウム・ナトリウム・カルシウム—硫酸塩・塩化物泉」で、湯口には硫黄の香が立ちのぼる。乳白に近い濁りと、肌を引き締める酸性の感触は、温泉郷の名の由来そのものである。ログハウス調の客室は素朴だが、源泉そのものの力で選ばれてきた、五色温泉を体現する一軒と言える。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、何よりも湯質への評価が突出する。濁り、香り、湯上がりの温まりの持続を挙げる声が多く、硫黄泉そのものを目的に訪れる旅人の満足が高い。標高ゆえの眺望、登山やトレッキングの起点としての利便も支持されている。一方で、設備は山の宿らしく簡素で、館内の華やぎや手厚い接遇を求める向きには合いにくい傾向が見て取れる。湯を主目的に据える読者に向く宿である。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    本物の硫黄泉を目的にする湯治志向、登山・トレッキングの起点を求める旅、素朴さを愛でる滞在
  • 向かない:
    豪華な設備や手厚い接遇を望む旅、酸性泉が肌に合わない人、客室露天の個室感を最優先する旅程

具体情報

  • 所在: 北海道虻田郡ニセコ町五色温泉(標高約750m、登山口)
  • 客室: 全10室(洋室・和室)、自炊可の別館あり
  • 泉質: 酸性・含硫黄—Mg・Na・Ca—硫酸塩・塩化物泉(硫黄泉)
  • 食事: 山の宿らしい和食膳
  • 立地: イワオヌプリ・ニセコアンヌプリ登山口


4. ニセコアンヌプリ温泉 湯心亭 — アンヌプリ温泉

アンヌプリ南麓に十七室。四十九度の源泉を差し水も循環もせず注ぐ、生粋のかけ流し。

Media Picks Score: 88 / 100  17室、温泉旅館。

目安価格 ¥26,000–¥34,000 / 泊 (2名1室・通常期)


ニセコアンヌプリ温泉 湯心亭 — ニセコ町 · 49℃の源泉を一切薄めずに注ぐかけ流しの湯宿
PHOTO: ニセコアンヌプリ温泉 湯心亭 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

ニセコアンヌプリの南麓から湧く源泉は、四十九度。湯心亭は、その豊富な湯に差し水を加えず、塩素も循環装置も用いない、生粋のかけ流しを守ってきた。二〇二四年には全館・全室を改めて整え、湯の鮮度はそのままに、客室の居心地を更新している。露天風呂付きの客室を擁し、源泉が新鮮であるほど湯は澄む、という温泉の理を素直に体現する一軒である。湯そのものの良さで選びたい読者に推したい。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、湯の鮮度とかけ流しへの評価が安定して高い。「湯が新しい」「肌当たりが柔らかい」といった泉質起点の満足が中心を占め、改装後の客室の清潔感も好まれている。アクセスの良さも支持材料である。一方、規模は中庸で、館内に派手な施設や眺望の劇的さを求めると物足りなさが残る傾向が見て取れる。湯を主軸に、無理のない価格で一泊したい旅程に合う宿と言える。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    源泉かけ流しの鮮度を重んじる旅、改装後の清潔な客室を求める滞在、価格と湯質の均衡を求める人
  • 向かない:
    大規模リゾートの華やぎを求める旅、劇的な眺望を最優先する旅程、館内施設の多さを重んじる人

具体情報

  • 所在: 北海道虻田郡ニセコ町(ニセコアンヌプリ温泉)
  • 客室: 全17室、露天風呂付き客室あり
  • 泉質: 源泉49℃、差し水・塩素・循環なしのかけ流し
  • 食事: 夕・朝の和食
  • 改装: 2024年6月 全館・全室リニューアル


5. ニセコ温泉郷 いこいの湯宿 いろは — 昆布川温泉

昆布川の畔に二十九室。メタけい酸を含む「美肌の湯」を、源泉かけ流しの露天で愉しむ宿。

Media Picks Score: 87 / 100  29室、温泉旅館。

目安価格 ¥34,000–¥43,000 / 泊 (2名1室・通常期)


ニセコ温泉郷 いこいの湯宿 いろは — ニセコ町 · メタけい酸を含む美肌の湯を源泉かけ流しの露天で味わう宿
PHOTO: いこいの湯宿 いろは — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

ニセコアンヌプリの麓、昆布川の畔に建つ二十九室の宿。落ち着いた和室を主体に、本館・別館あわせて和洋室も整える。湯は、美肌成分とされるメタけい酸を二四八ミリグラム含む、数少ない「美肌の湯」として認定された泉質で、源泉かけ流しの露天は開放感に富む。料理長が選ぶ特選素材の膳料理、地酒や地ビールの取り揃えも、寛ぎの時間を支える。湯と和の寛ぎを穏やかに継ぐ、過不足のない一軒と言える。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、露天の湯ざわりと、湯上がりの肌の感触への評価が目立つ。「とろみがある」「滑らかだ」といった泉質起点の感想が中心で、和室の落ち着きや食事の満足も安定している。スタッフの応対の柔らかさも好まれる。一方、施設の意匠は華美を避けた落ち着いた方向で、新しさや洗練の鋭さを求める向きには控えめに映る傾向が見て取れる。湯と和の静けさを重んじる読者に向く宿である。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    美肌の湯を露天で愉しみたい旅、和室の落ち着きを好む夫婦・友人連れ、湯と食の均衡を求める滞在
  • 向かない:
    最新の意匠やデザイン性を最優先する旅、全室客室露天の個室感を求める旅程、賑やかな館を望む人

具体情報

  • 所在: 北海道虻田郡ニセコ町(昆布川温泉・ニセコアンヌプリ麓)
  • 客室: 全29室(和室中心、本館・別館に和洋室7室)
  • 泉質: メタけい酸248mgを含む「美肌の湯」、源泉かけ流し露天
  • 食事: 料理長厳選の特選素材による膳料理、地酒・地ビールあり
  • 立地: ニセコアンヌプリ南麓、昆布川沿い


よくある質問

Q. ベストシーズンはいつですか?

A. 梅雨を持たぬ北海道では、盛夏の七月下旬から八月にかけて、羊蹄山の青稜が最も澄んで見えます。湯は通年で楽しめますが、客室露天から山岳の借景を仰ぐなら、空気の乾いた晩夏の早朝を編集部は推します。紅葉の十月、雪見の厳冬期もそれぞれ趣が異なります。

Q. 予約のタイミングは?

A. 客室数の少ない坐忘林や五色温泉旅館は、盛夏・連休・紅葉期は数か月前から埋まります。とくに全室客室露天の宿は週末から先に塞がる傾向があるため、二、三か月前を目安に動くと選択肢が広がります。冬のスキーシーズンはさらに早い動きになります。

Q. 硫黄泉と食塩泉の違いは何ですか?

A. 五色温泉旅館の湯は酸性の硫黄泉で、乳白に近い濁りと硫黄の香、肌を引き締める感触が特徴です。昆布・アンヌプリ系の湯は無色から淡色の食塩泉系で、肌当たりが柔らかく温まりが持続します。同じニセコでも泉質が大きく異なるため、湯巡りでその差を確かめるのも一興です。

Q. 子ども連れでも泊まれますか?

A. 湯心亭やいろはは和室主体で家族での滞在に向きますが、坐忘林は静寂を重んじる隠れ宿形式で、小さな子ども連れには向きません。五色温泉旅館は山の宿で設備が素朴です。年齢制限や客室露天の利用条件は宿により異なるため、各公式サイトでの確認をおすすめします。

Q. アクセスは?

A. いずれの宿も新千歳空港から車で約二時間から二時間半、JR倶知安駅・ニセコ駅からは車で十数分から三十分ほどです。五色温泉は山道を上る立地のため、冬季は道路状況に留意が必要です。多くの宿が送迎を設けていますが、湯巡りを兼ねるなら車での移動が便利です。

本記事の参考情報

ニセコ町観光協会 — エリアの観光・温泉情報
Wikipedia: ニセコ昆布温泉 — 温泉郷の歴史・泉質の背景
HOKKAIDO LOVE!(北海道公式観光) — ニセコ五色温泉の案内

編集部から

同じニセコの裾野にありながら、五軒の湯はそれぞれ顔が違う。火山の硫黄を素直に湛える五色、柔らかな食塩泉を新鮮なまま注ぐ湯心亭、森と建築で一泊を完結させる坐忘林。客室露天という共通の作法を持ちつつ、選定の軸は「源泉の鮮度」と「山岳をどう借景に取り込むか」に置いた。盛夏の青稜、晩夏の朝霧、やがて来る紅葉と雪。同じ湯でも季節がまるごと変わるのが、この地の面白さである。次はどの泉質から、湯巡りを始めてみたいだろうか。

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