梅雨明けの渓に、湯気がのぼる。塩原温泉郷は那珂川支流の箒川沿いに十一の湯場が連なる温泉群で、その最奥に元湯と新湯が位置する。福渡や古町といった中心の賑わいから車で十数分、山と渓に挟まれた静かな台地に、母屋から棟を分けて建つ離れ形式の宿が点在する。今回は元湯・新湯・那珂川源流域の三谷から、独立棟の客室を備える五軒を選び、地図とともに編んだ。

# 宿 湯場 Score 客室 目安価格 1行特徴
1 四季味亭ふじや 上塩原 94 6 ¥55–¥69k 全六室に露天、山里の独立棟
2 割烹旅館 湯の花荘 大網 93 11 ¥106–¥202k 箒川渓谷に離れ「出雲」「武蔵」
3 おやど 小梅や 塩釜 93 6 ¥50–¥58k 百年前の蔵を改装、六室の小宿
4 やまの宿 下藤屋 奥塩原新湯 90 22 ¥44–¥57k 裏山の噴気口に湧く硫黄泉
5 離れの宿 楓音 上塩原 86 10 ¥101–¥130k 箒川のほとり、全十室の独立離れ
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※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。

1. 静寂の宿 四季味亭ふじや — 那須塩原市・上塩原

上塩原の田畑に紛れて、六室の宿が一棟ずつ独立して建つ。全室に露天、食は山海の懐石。

Media Picks Score: 94 / 100  6室、客室露天付き旅館。

目安価格 ¥55,000–¥69,000 / 泊 (2名1室・通常期)


静寂の宿 四季味亭ふじや — 那須塩原市上塩原 · 六室全室客室露天の山里の小さな宿
PHOTO: 静寂の宿 四季味亭ふじや — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

塩原温泉郷の中心街・古町や福渡から車で五分ほど、上塩原の田畑が広がる山里に佇む。六室それぞれが独立した離れの趣で配置され、客室露天には自家源泉の塩化物泉(ナトリウム−塩化物泉)が注ぐ。露天風呂付き大浴場が無料で貸し切れる運用も、十分な湯量を背景にした自家源泉ならではの設計だ。自家栽培米と減農薬野菜、銘柄牛、石川直送の旬魚を組む山海懐石の評価が高く、湯と食の双方を主目的に編むことができる。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、評価の中心は食事と接客に置かれている。料理の量と質、出てくる順の組み立て、当主夫妻と若主人の応対が定常的に高い評価を集める。湯については客室露天と貸切大浴場の自由度が支持される一方、六室ゆえ繁忙期は予約が取りにくいという指摘が見える。立地は上塩原のため車利用が前提となるが、那須塩原駅からの送迎の運用は丁寧だ。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    食を主目的にする夫婦旅、客室露天で湯と食を完結させたい滞在、二人連れの記念日
  • 向かない:
    塩原街道の商店や散策を主にしたい旅程、団体の宴席を想定する集まり、公共交通だけで動きたい旅

具体情報

  • 最寄り駅: JR那須塩原駅から車約45分(事前予約で送迎対応)
  • 客室数: 全6室(全室客室露天付き)
  • 湯場: 上塩原(自家源泉の塩化物泉を引湯)
  • 食事: 山海懐石(自家栽培米・地元食材・石川直送の旬魚)
  • 客室タイプ: 全室独立棟形式


2. 割烹旅館 湯の花荘 — 那須塩原市・大網

箒川の渓谷に張り出した離れ「出雲」「武蔵」。割烹を冠する料理宿の本流。

Media Picks Score: 93 / 100  11室、客室露天付き旅館。

目安価格 ¥106,000–¥202,000 / 泊 (2名1室・通常期)


割烹旅館 湯の花荘 — 那須塩原市大網 · <!-- FACT_EDIT_f-009d_START -->箒川渓谷沿いに離れ棟を分ける料理宿<!-- FACT_EDIT_f-009d_ORIG_START --><!-- ORIG: 高林川渓谷沿いに離れ棟を分ける料理宿 --><!-- FACT_EDIT_f-009d_ORIG_END --><!-- FACT_EDIT_f-009d_END -->” loading=”lazy” style=”width:100%;height:auto;display:block;border-radius:2px;” /><br />
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公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

塩原十一湯のうち大網温泉にあり、箒川の渓谷に張り出すように母屋と離れが並ぶ。離れ棟「出雲」「武蔵」を含め、全客室が渓に面し、塩化物泉の自家源泉が掛け流される。屋号に「割烹」を掲げる通り、料理を主目的に編む宿で、献立は月替わりで地物を中心に据える。離れ棟は母屋から廊下で結ばれず、独立した動線を持つため、家族や夫婦の静かな滞在に向く。盛夏は窓から渓音が絶え間なく届き、夜は河鹿蛙の声と湯気が混じる。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、料理の評価が突出して高い。月替わりの献立、地のものを生かした構成、量より質に振った組み立てが、年配の宿好きから繰り返し言及される。湯は塩化物泉らしく湯冷めしにくい点が支持され、離れ棟は静けさと独立性が評価される一方、価格帯が上振れすることへの言及もある。中心街からは車で十分ほどの距離があり、夜は宿で完結する構えになる。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    料理を主目的にする夫婦旅、離れ棟で静けさと独立性を求める滞在、年配の宿好きの再訪
  • 向かない:
    予算を抑えた一泊旅、塩原街道の商店街を歩きたい旅程、洋食中心の食を望む人

具体情報

  • 最寄り駅: JR那須塩原駅から車約40分(送迎相談可)
  • 客室数: 全11室(母屋客室+離れ「出雲」「武蔵」)

  • 湯場: 大網温泉(硫酸塩泉・自家源泉100%掛け流し)
  • 食事: 月替わりの割烹懐石(個室食事処)
  • 建物: 箒川渓谷に張り出した渓側全室構成


3. おやど 小梅や — 那須塩原市・塩釜

塩原十一湯の塩釜に建つ六室の小宿。大正六年の蔵を改装した蔵ダイニングが構えとなる。

Media Picks Score: 93 / 100  6室、料理旅館。

目安価格 ¥50,000–¥58,000 / 泊 (2名1室・通常期)


おやど 小梅や — 那須塩原市塩釜 · 大正期の蔵を改装した蔵ダイニングを構える六室の宿
PHOTO: おやど 小梅や — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

塩釜温泉は塩原十一湯の三番目に数えられる湯場で、福渡と古町の中間に位置する。小梅やは全六室の小宿で、大正六年に建てられた蔵を改装した「蔵ダイニング」が食事処の構えとなっている。六室のうち三室に源泉掛け流しの客室風呂を備え、部屋食も無料で対応する。野菜中心の創作料理が献立の中核で、地のものを丁寧に組む構成が定常的に支持されている。中心街の福渡まで車で数分の距離にありながら、宿のまわりは静かで、規模の小ささが滞在の密度を高めている。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、評価は満場一致に近く、特に食事と接客への言及が突出する。野菜料理の手数の多さ、若い夫妻による応対のきめ細かさ、蔵ダイニングという食事処の設えへの満足度が反復される。客室風呂を備えた部屋は予約が取りにくく、六室という規模ゆえ繁忙期の確保が課題と指摘される。価格帯は塩原のなかでは抑えめで、再訪率の高さがレビュー欄に表れる。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    創作料理と野菜の宿が好みの夫婦旅、塩原十一湯を巡り歩きたい滞在、規模より密度を求める人
  • 向かない:
    大型の温泉旅館の様式を求める旅、夕食時間に厳格な時間指定が必要な団体、子供連れの賑やかな旅程

具体情報

  • 所在地: 栃木県那須塩原市塩原316(塩釜温泉)
  • アクセス: 西那須野ICから車約20分/JR那須塩原駅からバス約60分・塩原塩釜下車徒歩1分
  • 客室数: 全6室(うち3室に源泉掛け流しの客室風呂)
  • 食事: 野菜中心の創作料理(大正六年の蔵を改装した蔵ダイニング)
  • 湯場: 塩釜温泉(塩原十一湯の三番目)


4. やまの宿 下藤屋 — 那須塩原市・奥塩原新湯

塩原で唯一硫黄泉が湧く奥塩原新湯。裏山の噴気口から、湯がそのまま浴槽へ届く。

Media Picks Score: 90 / 100  22室、にごり湯の温泉旅館。

目安価格 ¥44,000–¥57,000 / 泊 (2名1室・通常期)


やまの宿 下藤屋 — 那須塩原市奥塩原新湯 · 裏山の噴気口から引く硫黄泉の宿
PHOTO: やまの宿 下藤屋 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

奥塩原新湯は塩原温泉郷の最高所に位置する湯場で、富士山型の火口跡から立ち上る蒸気が今も活発に湧出する。奥塩原を代表する硫黄泉(元湯と並ぶ濁り湯系)で、下藤屋は裏山の噴気口に直結した源泉をそのまま浴槽に注ぐ運用を続けている。客室は本館に和室・和洋室・特別室の三タイプを並べる構成で、棟全体としては母屋型に近いが、特別室は独立した動線を持ち離れの趣がある。塩原の中でも標高が高く、盛夏でも朝晩は冷え、湯のにごりと湯の花が湯船の縁に積もる景色が映える。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、湯質と湯の濃さへの評価が中心となる。にごり湯の硫黄の香り、湯の花の量、源泉そのままという運用への満足度が繰り返し言及される。料理は山の宿らしい構成で、若主人の代替わりに伴う献立の刷新が好意的に受け止められている。アクセスは奥塩原まで車で登るかたちになり、公共交通の本数が少ない点が言及される。塩原の中では価格帯が抑えめで、再訪率が高い。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    硫黄泉のにごり湯を主目的にする旅、塩原で湯の濃さを求める人、価格を抑えながら源泉を選びたい滞在
  • 向かない:
    完全な離れ独立棟の様式のみを求める旅、繁華な温泉街の夜歩きを楽しみたい旅程、洋風の宿の様式を望む人

具体情報

  • 最寄り駅: JR那須塩原駅から車約50分(公共交通は本数限定)
  • 客室数: 全22室(和室・和洋室・特別室)
  • 湯場: 奥塩原新湯温泉(塩原十一湯の硫黄泉、元湯と並ぶにごり湯系)
  • 源泉: 裏山の噴気口直結、加水・加温なしの源泉掛け流し
  • 標高: 塩原温泉郷で最も高い湯場


5. 離れの宿 楓音 — 那須塩原市・上塩原

箒川のほとりに、全十室の離れ。客室露天は川面に向き、夜は渓音と湯気が混じる。

Media Picks Score: 86 / 100  10室、全室離れ・客室露天付き旅館。

目安価格 ¥101,000–¥130,000 / 泊 (2名1室・通常期)


離れの宿 楓音 — 那須塩原市上塩原 · 箒川沿いに全十室の独立離れを並べる宿
PHOTO: 離れの宿 楓音 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

上塩原の塩原街道沿い、箒川のほとりに全十室の離れを並べる宿。母屋を持たず、すべての客室が独立した離れ棟として建てられ、室内には源泉掛け流しの天然温泉露天と専用庭園、マッサージチェアが備わる。湯はメタケイ酸を多く含む美肌の湯で、川面を渡る風と渓音が常に背景にある。食は山海懐石を個室ダイニングで供する構成で、客同士が顔を合わせない動線設計が徹底されている。テーマ通りの「離れ独立棟」を最も純粋なかたちで体現する宿と言える。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、離れの独立性と客室露天の眺めへの評価が中心を占める。川沿いの位置を生かした設計、専用庭園を持つ離れ棟の佇まい、夜の静けさが繰り返し言及される。料理は懐石の構成として総じて評価が高く、個室食事処の独立性も支持される。一方で、宿全体の規模が小さいぶん、公共施設の充実度を求める層からは物足りなさの指摘もある。価格帯は塩原のなかでは上位に位置する。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    離れ独立棟の様式を最優先する夫婦旅、客室露天で川面を眺めたい滞在、記念日のための一泊
  • 向かない:
    大浴場や宿内設備の充実を求める旅、予算を抑えた一泊旅、団体での宿泊を想定する集まり

具体情報

  • 所在地: 栃木県那須塩原市上塩原23(塩原街道沿い)
  • 客室数: 全10室(全室離れ・全室源泉掛け流し露天付き)
  • 湯場: 上塩原・箒川沿い(メタケイ酸を多く含む美肌の湯)
  • 食事: 山海懐石(個室ダイニング)
  • 設え: 各離れに専用庭園・マッサージチェア


よくある質問

Q. 塩原十一湯のうち、元湯と新湯はどう違いますか?

A. 元湯は塩原温泉郷の発祥の湯場で、ゑびすや・大出館・元泉館の三軒の宿が点在する谷の奥にあります湯質は硫黄泉系のにごり湯が主体です。一方の新湯は中の湯・寺の湯・むじなの湯という共同湯で知られる火口跡の湯場で、含硫黄の白濁湯が湧きます。本記事で扱った下藤屋は新湯系の奥塩原に位置し、ふじやと楓音は新湯から少し下った上塩原に建ちます。

Q. 那珂川源流の渓と湯場の関係は?

A. 那珂川は塩原から那須野が原を経て太平洋に注ぐ一級河川で、塩原温泉郷を流れる箒川がその源流域にあたります。各湯場はこれらの渓筋に沿って配置され、湯の花荘の渓沿い、楓音の箒川沿いといった立地が、渓音を聞きながら湯に入れる宿の構えを成立させています

Q. 離れ形式の宿は予約のタイミングをどう考えれば?

A. 全室十室前後の小規模宿が多く、客室露天や離れ棟は人気が高いため、二月から三月前の予約が安全圏です。八月の夜は渓筋の宿が早く埋まる傾向があり、土曜日や夏休み期間は半年前から動き出すこともあります。価格帯の上位に当たる湯の花荘や楓音は、年末年始と五月連休の時期は早めの予約を推します。

Q. 公共交通だけで動けますか?

A. JR那須塩原駅から塩原温泉行きのバスが運行しており、塩原塩釜・塩原温泉などの主要停留所までは届きます。塩釜の小梅やはバス停徒歩一分の立地ですが、上塩原や奥塩原の宿は最寄バス停から距離があり、宿の送迎または車利用が現実的です。

Q. 子連れでの滞在は可能ですか?

A. 全室離れの楓音や客室露天付きのふじやでは、子連れでの利用に制約を設ける場合があります。料理宿として完成度の高い湯の花荘も、静けさを保つ運用上、年齢制限を設ける時期があります。小梅やと下藤屋は比較的子連れにも開かれていますが、いずれも事前の確認を推します。

本記事の参考情報

なすしおばら観光NAVI(那須塩原市観光局) — 塩原十一湯と各湯場の概要
日本温泉協会 — 源泉と湯質の客観データ
Wikipedia: 塩原温泉 — 塩原温泉郷の地誌・歴史

編集部から

塩原温泉郷は中心の福渡・古町の界隈と、谷の奥に静けさを置く元湯・新湯・上塩原の界隈で、宿の構えが大きく異なる。今回扱った五軒は、いずれも後者の系譜に連なる宿である。離れの様式は、客室間の距離と動線の独立性、そして十分な湯量と源泉の自前性がそろって初めて成立する。塩原はそのいずれも備える、関東近郊では希少な湯場と言える。盛夏の渓に湯気がのぼる景色を求めるならば、二月前から予約を動かしておきたい。

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