盛夏でも夕暮れには薄い上着が欲しくなる高原の宿を、九重連山の裾に五軒選んだ。阿蘇外輪山とくじゅうに挟まれた瀬の本から長者原へ、標高八百から千メートルの草原に、母屋を離れて棟を分けた宿が点在する。人の声が届かない一棟に湯を引き、夕餉を運び、夫婦だけの時間を置く——盛夏の内陸、避暑地としての九重を、離れという形式で整理した五軒である。

# 宿 エリア Score 客室 目安価格 一行の輪郭
1 オーベルジュ ア・マ・ファソン 瀬の本高原 92 9 ¥73–¥93k 阿蘇五岳を望む草原の創作フレンチ、全室に内湯
2 高原の隠れ家 スパ・グリネス 瀬の本高原 91 9 ¥47–¥76k 全室離れ、源泉かけ流しの露天を各棟に
3 大分九重 久織亭 長者原温泉 89 9 ¥64–¥80k 長者原の高台、全室に半露天を備えた離れ
4 スターダストヴィレッジ星生 星生・飯田高原 89 16 ¥30–¥60k 八棟の一戸建てコテージ、薪と星空の高原滞在
5 山の宿 寒の地獄旅館 寒の地獄・長者原 91 13 ¥37–¥41k 嘉永二年開業、十三度の冷泉に浸かる湯治の宿
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※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。一泊二名利用時の一室あたり料金(税込)です。Media Picks Score は公開レビューデータを集計し、立地・規模・設備の編集判断を加えた総合指標です。

1. オーベルジュ ア・マ・ファソン — 瀬の本高原

阿蘇五岳を正面に置く草原の丘に九室。皿の上に九州を映す、瀬の本のオーベルジュである。

Media Picks Score: 92 / 100  9室、瀬の本高原のオーベルジュ。

目安価格 ¥73,000–¥93,000 / 泊 (2名1室・通常期)


オーベルジュ ア・マ・ファソン — 大分県九重町・瀬の本高原 · 阿蘇五岳を望む草原に建つ創作フレンチのオーベルジュ
PHOTO: オーベルジュ ア・マ・ファソン — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

ア・マ・ファソンとは、フランス語で「私流に」という意味だという。瀬の本高原の丘に立てば、阿蘇五岳が屏風のように連なり、その手前に草原が波打つ。客室は九つ、いずれも棟を分けた造りで、内湯には九重の地下水を汲み上げて沸かす。夕餉は、九州各地の海と山の幸を漢方やコチュジャンで縁取った創作フレンチ。料理を目的に山へ上がる旅がここで成立する、という一点が、まずこの宿を推す理由である。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、この宿への評価は料理と眺望の二点に集中している。皿数と季節替わりの構成に満足の声が多く、草原と阿蘇を望む立地そのものを一つの馳走とみなす向きが目立つ。一方で、宮地駅からの距離ゆえ交通は自家用車が前提となり、公共交通のみの旅程では利用しにくいという傾向も読み取れる。静けさと引き換えの立地であることは、あらかじめ承知しておきたい。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    料理を主目的にする夫婦旅、車で高原を巡る旅程、記念日に一棟の静けさを求める人
  • 向かない:
    公共交通のみで動く旅(宮地駅からタクシー約30分)、大浴場での湯めぐりを主目的にする人、和食の会席を望む人

具体情報

  • 所在: 大分県玖珠郡九重町湯坪瀬の本628-10(瀬の本高原)
  • 最寄り駅: JR豊肥本線 宮地駅からタクシー約30分
  • 客室数: 9室(棟分け)/全室に内湯
  • 湯: 九重の地下水を汲み上げた沸かし湯(各室内湯)
  • 食事: 夕食・朝食ともに創作フレンチ(オーベルジュ)
  • 標高: 瀬の本高原 約920m


2. 高原の隠れ家 スパ・グリネス — 瀬の本高原

全室が離れ、各棟に源泉かけ流しの露天。瀬の本の森に沈む、九つの一棟宿である。

Media Picks Score: 91 / 100  9室、全室離れの温泉宿。

目安価格 ¥47,000–¥76,000 / 泊 (2名1室・通常期)


高原の隠れ家 スパ・グリネス — 大分県九重町・瀬の本高原 · 全室離れ、テラスから夕景を望む源泉かけ流しの宿
PHOTO: 高原の隠れ家 スパ・グリネス — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

湯が、まず主役である。八室すべてが離れの造りで、各棟に瀬の本温泉を源泉とする硫酸塩泉の露天、あるいは半露天を備える。透明で柔らかな湯を、誰にも気兼ねなく好きな刻限に使える——これが隠れ家という名の実質であろう。客室は「森」「藍」「茜」など、草木や色の名を負い、間取りも眺めも一棟ごとに異なる。棟を分けることで得られる独立性を、湯とともに徹底した点を評価したい。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、かけ流しの湯質と、離れならではの静けさへの評価が高い。部屋ごとに異なる設えを楽しみに再訪する声もうかがえる。夕食は久留米のイタリアン、あるいは和会席から選ぶ形式で、外部の食を取り込む運びに好みは分かれるものの、選べることを利点とみなす向きが多い。設備の一部に年数を感じるという指摘もあり、真新しさより湯と静けさを求める旅に向く一軒である。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    客室露天でかけ流しを独占したい夫婦旅、静けさを最優先する滞在、湯を主目的にする人
  • 向かない:
    最新設備の均質さを求める人、館内で夕食まで完結させたい旅程、大人数のグループ滞在

具体情報

  • 所在: 大分県玖珠郡九重町(瀬の本高原)
  • 客室数: 全8室、全室離れ/各棟に露天または半露天
  • 湯: 瀬の本温泉 源泉かけ流し(硫酸塩泉、無色透明)
  • 食事: 夕食はイタリアンまたは和会席から選択
  • 利用形態: 宿泊のほか日帰り・ランチ利用も可
  • 標高: 瀬の本高原 約900m


3. 大分九重 久織亭 — 長者原温泉

長者原の高台に、全室が半露天を備えた離れ。見晴らす限りの癒しを掲げる一軒である。

Media Picks Score: 89 / 100  9室、全室離れ・露天付の温泉宿。

目安価格 ¥64,000–¥80,000 / 泊 (2名1室・通常期)


大分九重 久織亭 — 大分県九重町・長者原温泉 · 全室半露天付の離れ、大窓から高原の森を望む客室
PHOTO: 大分九重 久織亭 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

久織亭が置かれたのは、長者原温泉の高台である。全室が離れの造りで、いずれの客室にも源泉かけ流しの半露天が付く。寝室、居間、和室に湯処を備えた特別室や別棟もあり、家族や連れとの間合いをゆったり取れる。長者原は坊ガツルやタデ原湿原への登山口を控えた土地でもあり、朝は霧、日中は草原、夜は満天の星と、高原の一日を客室から通しで味わえる。棟分けと湯を両立させた点が、この宿を推す理由である。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、客室に付く半露天と、高台からの眺めへの評価が中心となる。全室が離れである独立性と、料理の内容に満足の声が多い。一方で、山あいの高台という立地ゆえ、冬季の道中や気象には注意を促す傾向もうかがえる。盛夏に限れば、標高がもたらす涼と、湿原へのアクセスの良さが際立ち、避暑の拠点として選ぶ意義が大きい一軒である。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    客室半露天と眺めを両立したい夫婦旅、坊ガツル・タデ原湿原の登山や散策を絡める旅程、美食と湯を求める人
  • 向かない:
    市街地の利便を求める旅、価格を最優先する滞在、大浴場中心の湯めぐりを望む人

具体情報

  • 所在: 大分県玖珠郡九重町田野255-30(長者原温泉)
  • 客室数: 9室、全室離れ/全室に源泉かけ流しの半露天
  • 湯: 長者原温泉 源泉かけ流し
  • 特別室: 寝室・居間・和室・湯処を備えた別棟あり
  • 周辺: 坊ガツル・タデ原湿原の登山口を控える
  • 標高: 長者原 約1,000m前後


4. スターダストヴィレッジ星生 — 星生・飯田高原

八棟の一戸建てコテージが森に散る、薪と星空のための高原の村である。

Media Picks Score: 89 / 100  16室、コテージ「星生平」を含む棟分けの宿。

目安価格 ¥30,000–¥60,000 / 泊 (2名1室・通常期)


スターダストヴィレッジ星生 — 大分県九重町・星生 · 木組みの東屋を備えた露天風呂、新緑の森に湯気が立つ
PHOTO: スターダストヴィレッジ星生 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

星生は、くじゅうの山名にちなむ土地である。この村は、ホテルとも貸別荘とも異なる形式を選んだ。コンドミニアム「星生倶楽部」と、一戸建てコテージ「星生平」の二本立てで、後者は八棟の独立した棟が森に散らばる。薪ストーブ、ロフト、森に開いた庭——生活の道具立てをそのまま高原に置いたような滞在である。野趣あふれる露天は、宿泊者以外にも一部開かれる。棟分けの独立性を、暮らすように楽しむ点で他とは一線を画す。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、一棟を丸ごと使える自由さと、森と星空という高原らしい環境への評価が高い。自炊や持ち込みを楽しむ滞在に向くという声が多く、旅館の手厚い接遇とは別の価値を求める層に支持されている。設備や運営はコテージ流であり、隅々まで整えられた旅館の作法を期待すると印象は分かれる。夏の夜、灯りを落とせば天の川が見える——その一点を目当てに訪れる価値のある一村である。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    一棟を貸し切って過ごしたい夫婦・家族、星空や薪ストーブを楽しむ滞在、自由度の高い高原の時間を求める人
  • 向かない:
    旅館の細やかな接遇を求める人、館内で完結する会席料理を望む旅程、湯量豊富な大浴場が目的の人

具体情報

  • 所在: 大分県玖珠郡九重町田野西の小池228-314(星生・飯田高原)
  • 形態: コンドミニアム「星生倶楽部」+一戸建てコテージ「星生平」8棟
  • 設え: 薪ストーブ、ロフト、森に開いた庭
  • 湯: 野趣あふれる露天風呂(一部日帰り利用可)
  • 環境: 星空観察に適した高原、飯田高原一帯
  • 標高: 飯田高原 約1,000m前後


5. 山の宿 寒の地獄旅館 — 寒の地獄・長者原

嘉永二年開業、十三度の冷泉に浸かる。九重にただ一軒の、湯治の山宿である。

Media Picks Score: 91 / 100  13室、本館と新館に分かれた秘湯の宿。

目安価格 ¥37,000–¥41,000 / 泊 (2名1室・通常期)


山の宿 寒の地獄旅館 — 大分県九重町・寒の地獄 · 格子戸と行灯の灯る、民藝調の湯治宿の夕暮れ
PHOTO: 山の宿 寒の地獄旅館 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

湯が、ここでは冷たい。寒の地獄の名の通り、この宿の主役は十三〜十四度の冷泉である。嘉永二年(一八四九年)、江戸末期の開業。毎分二トンを超える湯量を誇り、冷泉に身を沈めては温泉で温め直す、独特の入浴法が代々受け継がれてきた。日本秘湯を守る会に名を連ねる、九重にただ一軒の湯治宿である。本館の懐かしい和室と、黒を基調とした民藝調の新館。棟を分けて時代の層を残す佇まいごと、この一軒を推したい。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、冷泉という他にない体験と、囲炉裏を囲む食堂「八重秋」での豊後牛への評価が際立つ。昭和の風情を残す設えを、不便さではなく味わいとして受け止める声が多い。トイレのない客室や、湯治宿ならではの簡素さに好みは分かれるが、それを承知で通う常連の存在がこの宿の質を物語る。二〇二三年夏にはサウナが加わり、通年で冷泉を楽しめるようになった。避暑と養生を兼ねる、盛夏にこそ真価を発揮する一軒である。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    冷泉と温泉の交互浴を体験したい人、歴史ある湯治宿の風情を好む夫婦旅、坊ガツル登山の前後泊
  • 向かない:
    客室露天や最新設備を求める人、部屋にトイレを求める旅程、華やかな会席や接遇を望む人

具体情報

  • 所在: 大分県玖珠郡九重町(寒の地獄温泉・長者原そば)
  • 開業: 嘉永二年(1849年)/日本秘湯を守る会 会員宿
  • 客室数: 13室(本館の和室+民藝調の新館)
  • 湯: 冷泉13〜14℃(毎分2トン超)+温泉で温め直す交互浴、家族風呂3
  • 食事: 囲炉裏の食堂「八重秋」で豊後牛など
  • 付帯: 2023年夏サウナ新設(冷泉の通年利用が可能に)


よくある質問

Q. 盛夏の九重は避暑地として過ごしやすいですか?

A. 標高八百から千メートルの高原に位置するため、真夏でも朝夕は涼しく、東屋や薪の温もりが恋しくなる日もあります。日中の日差しは強いので帽子や水分は要りますが、夜は窓を開ければ十分に涼しく、都市部の熱帯夜とは無縁です。編集部が高原の宿を夏に推す理由は、まさにこの寒暖差にあります。

Q. 予約はどのくらい前がよいですか?

A. いずれも客室数が九〜十六室と少なく、盛夏の週末や盆の前後は早くに埋まります。特に全室離れの宿は棟数が限られるため、目当ての日程があれば二〜三か月前を目安に動くと安心です。平日は比較的取りやすく、静けさを求めるなら平日泊が向きます。

Q. 客室に露天や湯は付いていますか?

A. スパ・グリネスと久織亭は全室が離れで、各棟に源泉かけ流しの露天または半露天を備えます。ア・マ・ファソンは各室に内湯、スターダストヴィレッジ星生は野趣ある露天、寒の地獄旅館は名物の冷泉と温泉の交互浴が中心です。客室で湯を独占したいなら前二軒が向きます。

Q. 子連れや連れとの利用はできますか?

A. 棟を分けた離れやコテージは、周囲に気兼ねなく過ごせるため、家族や連れとの滞在にも向きます。ただし寒の地獄旅館は湯治宿の性格が強く、客室にトイレのない部屋もあるため、幼児連れには設えを事前に確認することをおすすめします。各宿とも規模が小さいので、人数の多い予約は早めの相談が確実です。

Q. アクセスは?

A. 瀬の本・長者原一帯は公共交通が限られ、自家用車かレンタカーが基本です。JR豊肥本線 宮地駅、あるいは大分自動車道 九重ICから、いずれも車で三十分前後を見込みます。やまなみハイウェイ沿いの高原地帯で、道中の景色そのものが旅の一部となります。

本記事の参考情報

九重町観光協会「長者原温泉」 — 長者原・くじゅう周辺の観光情報
Wikipedia: 瀬の本高原 — 高原の地理・成り立ち
Wikipedia: くじゅう連山 — 坊ガツル・タデ原湿原・登山の背景

編集部から

五軒を貫くのは、母屋から棟を離すという一つの選択である。人の声を遠ざけ、湯と眺めと夕餉を一棟の内に閉じる。瀬の本の草原に建つオーベルジュから、長者原の高台の離れ、飯田高原に散るコテージ、そして江戸末期から続く冷泉の湯治宿まで、形式は異なれど、目指すところは同じ——夫婦だけの静けさを、高原の一隅に置くことである。盛夏の昼は草原を歩き、夜は標高がもたらす涼のなかで湯に身を沈める。ミヤマキリシマの記憶を残す初夏も、草紅葉の秋も美しいが、都市の熱を離れて涼を求めるなら、やはり夏の九重が良い。次はどの季節に、どの棟の灯りを訪ねるだろうか。

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