梅雨が明けた三徳川の谷は、川面を渡る風にわずかな湯気の匂いを含む。世界屈指のラジウム泉を谷底に抱く三朝温泉で、湯を大浴場だけにとどめず、客室の露天にまで引いた宿を五軒選んだ。放射能泉ならではの柔らかな湯を、誰にも急かされずに味わう——そのための一軒を、河原風呂の里から編集部が推す。三徳山三佛寺への参詣の起点でもあるこの谷は、湯治と信仰がひとつに溶け合ってきた土地である。八百年の湯の歴史を、部屋付きの露天という最も私的な形で受け取る旅を、四十代から七十代の温泉文化に親しむ読者へ届けたい。
| # | 旅館 | エリア | Score | 客室 | 目安価格 | 1行特徴 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 清流荘 | 三朝温泉 | 92 | 27 | ¥40–¥63k | 三徳川に面した山狭露天と自家源泉かけ流し |
| 2 | 旅館大橋 | 三朝温泉 | 90 | 20 | ¥70–¥99k | 国登録有形文化財、三朝唯一のトリウム泉 |
| 3 | 三朝薬師の湯 万翆楼 | 三朝温泉 | 88 | 44 | ¥59–¥129k | 露天テラス付きの新スイートと薬師の湯 |
| 4 | 木造りの宿 橋津屋 別邸 月代 | 三朝温泉 | 86 | 2 | 要問合せ | 享保期創業、別邸二室すべてに客室露天 |
| 5 | 旬彩の宿 いわゆ | 三朝温泉 | 85 | 9 | ¥49–¥73k | 全九室の料理宿、別邸「竹の宿」に露天 |
※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。Media Picks Score は公開レビューデータを集計し、立地・湯・規模・編集適合度を加味した編集部の指標です。
1. 清流荘 — 三朝温泉
三徳川の瀬音に面した山狭の露天と、客室に引いた自家源泉かけ流し。三朝で最初に湯へ身を委ねたい一軒。
Media Picks Score: 92 / 100 27室、和風旅館(中規模)。
目安価格 ¥40,000–¥63,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
湯が、この宿の背骨である。三徳川に張り出した山狭露天、地下の岩風呂、そして自家源泉を注ぐ客室露天と、ラジウム泉を三通りの器で味わえる。客室露天を備えた部屋は六室と数を絞り、そのうちにはドライサウナを併せた一室も加わった。源泉かけ流しの湯を独りで抱え込める静けさが、湯治の谷にふさわしい。谷あいの立地ゆえ川音が絶えず、湯に浸かる間も三徳の水の流れが耳に残る。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、湯の質と源泉かけ流しへの評価が突出して高く、朝の露天の澄んだ空気に触れた声が目立つ。放射能泉らしい肌当たりの柔らかさを繰り返し挙げる傾向が読み取れる。一方で建物は湯治宿の系譜を残し、華美な意匠を求める向きには落ち着きすぎと映る場合もある。湯を主目的に据える滞在ほど満足度が高まる一軒だと言える。
向く人 / 向かない人
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向く:
湯そのものを旅の主目的に置く夫婦・友人連れ、放射能泉での長めの逗留を望む人、川音と静けさを重んじる温泉文化派 -
向かない:
客室露天を必須とする人(該当は六室のみで早期の手配が要る)、洗練された現代的な内装を最優先する旅程
具体情報
- 最寄り駅: JR倉吉駅からバスで約20分(タクシー約15分)、三徳川沿い
- 客室露天: 自家源泉かけ流しの客室露天を六室に設置(うち一室はドライサウナ併設)
- 湯: 世界有数のラジウム(ラドン)泉、山狭露天・地下岩風呂・客室露天の三様
- チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜10:00
- 食事: 山陰の地物を用いた会席、夕・朝食とも館内で供する
2. 旅館大橋 — 三朝温泉
建物のほぼ全館が国登録有形文化財。三朝唯一のトリウム泉を擁し、露天付き客室で六十度の源泉を独占できる。
Media Picks Score: 90 / 100 20室、和風旅館(登録有形文化財)。
目安価格 ¥70,000–¥99,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
数寄屋の技が、この宿では文化財の格に達している。昭和初期に宮大工が腕を競った建物は、平成九年にほぼ全館が国登録有形文化財となった。自家源泉五か所のうち三か所が自噴泉で、名物「巌窟の湯」は三つの湯船それぞれから温泉が自然に噴き出す。下の湯・中の湯はラジウム泉、上の湯は三朝で当館だけが持つトリウム泉である。露天風呂付客室では六十度の源泉を引き、湯を一室で独り占めできる。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、建物そのものへの敬意と、自噴泉の力強さを挙げる評価が際立つ。文化財の空間に身を置く体験を、湯と同格に語る傾向が読み取れる。木造ゆえの経年や段差に触れる声も一部にあるが、それを含めて往時の旅館建築を味わうものとして受け止められている。歴史ある建築と湯を一体で楽しむ旅ほど、満足の深い一軒だと言える。
向く人 / 向かない人
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向く:
旅館建築や意匠に関心の深い夫婦旅、自噴泉・トリウム泉といった湯の個性を求める人、記念の一泊に格を重んじる旅程 -
向かない:
段差の少ない新しい設備を最優先する人、価格を抑えた気軽な一泊を望む旅、大浴場より露天付客室のみで完結したい向き
具体情報
- 最寄り駅: JR倉吉駅からバスで約20分(タクシー約15分)、三徳川の畔
- 建築: 昭和初期建築、平成9年(1997年)にほぼ全館が国登録有形文化財
- 湯: 自家源泉5か所(うち3か所が自噴泉)、三朝唯一のトリウム泉「巌窟の湯」
- 客室露天: 露天風呂付客室に自家源泉を引く
- チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜11:00
3. 三朝薬師の湯 万翆楼 — 三朝温泉
政府登録国際観光旅館の格式に、露天テラスを備えた新しいスイートが加わった。薬師の湯を客室で味わう三朝の一軒。
Media Picks Score: 88 / 100 44室、和風旅館(中規模)。
目安価格 ¥59,000–¥129,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
湯屋が、この宿では建築の主題として据えられている。数寄屋の意匠を凝らした浴場を核に据え、政府登録国際観光旅館の格式を長く保ってきた。二〇二三年には露天テラスを備えたスイートが三室新たに開き、源泉を引いた客室露天で三朝の谷を望めるようになった。バリアフリーに配慮した設えで、足腰に不安のある世代でも湯へ辿り着きやすい。薬師の湯と呼ばれる柔らかな源泉を、大浴場と客室露天の双方で味わえる構えが整っている。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、浴場の造りと湯の柔らかさ、そして接遇の丁寧さを評価する声が安定して多い。新設のスイートに触れた感想では、露天テラスからの眺めと段差の少ない動線への言及が読み取れる。規模ゆえに繁忙期は賑わいが増す傾向もあるが、静けさより設備と応対の確かさを求める滞在ほど評価が高い。世代を問わず安心して勧められる均衡の取れた一軒だと言える。
向く人 / 向かない人
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向く:
設備の新しさと段差の少ない動線を望む世代、格式ある大浴場と客室露天を両立したい夫婦旅、丁寧な応対を重んじる人 -
向かない:
小規模宿ならではの静寂を最優先する旅、加温・加水を一切避けたい湯へのこだわり、素朴な湯治宿の趣を求める向き
具体情報
- 最寄り駅: JR倉吉駅からバスで約20分(タクシー約15分)
- 客室露天: 2023年3月開業の新スイート3室に源泉を引く露天テラス(加温・加水あり)
- 湯: 三朝薬師の湯と称する放射能泉、数寄屋意匠の大浴場
- 設備: 新スイートはバリアフリーのユニバーサルデザイン
- チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜11:00
4. 木造りの宿 橋津屋 別邸 月代 — 三朝温泉
享保期から三百年続く木造りの宿の、別邸二室。いずれも源泉かけ流しの客室露天を備えた、一日わずかな客のための離れである。
Media Picks Score: 86 / 100 2室(別邸)、木造和風旅館。
目安価格 要問合せ(別邸特別室のため公開データ僅少)

なぜ選ばれるか
木の香が、三百年の時を貫いてこの宿を満たす。享保の頃から三徳川のほとりに続く橋津屋は、館名の通り木造りにこだわる湯宿である。その離れ「別邸 月代」には、ロイヤルスイート「銅(あかがね)」と「琥珀」の二室が置かれ、いずれも源泉かけ流しの客室露天と内湯を備える。銅は約百平方メートルと広く、和洋の居室と寝室を分けた設えで、露天では好きな時に湧きたての湯へ身を委ねられる。一日に迎える客を絞った、私的な滞在のための離れである。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、離れならではの静けさと専有感、そして木造りの空間の心地よさを挙げる評価が中心を占める。源泉かけ流しの客室露天を時を選ばず使える点への満足が読み取れる。特別室ゆえ価格帯は高く、日常づかいの宿ではないが、記念の一泊や静かな二人の時間を求める滞在に強く響く。数を求めず質に振り切った、明確な性格の一軒だと言える。
向く人 / 向かない人
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向く:
記念日や結婚の節目を静かに過ごす二人、離れの専有感と源泉かけ流しの客室露天を望む人、木造建築の趣を愛でる旅 -
向かない:
費用を抑えた一泊を望む旅程、大浴場での湯めぐりを主目的にする人、多くの客室から選びたい向き(別邸は二室のみ)
具体情報
- 最寄り駅: JR倉吉駅からバスで約20分(タクシー約15分)、三徳川沿い
- 客室露天: 別邸2室(銅・琥珀)すべてに源泉かけ流しの露天と内湯
- 客室規模: ロイヤルスイート「銅」は約100㎡、和洋の居室に寝室を分ける
- 創業: 享保期(約300年前)から続く木造りの宿
- 備考: 2026年4月、別邸に客室3室と大浴場「八雲」を増設
5. 旬彩の宿 いわゆ — 三朝温泉
全九室の料理宿。大正の面影を残す木造に、一日一組の別邸「竹の宿」が客室露天を備える。
Media Picks Score: 85 / 100 9室、和風旅館(小規模)。
目安価格 ¥49,000–¥73,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
料理が、この小宿の看板である。三朝でも部屋数を九室に絞り、料理長が鳥取の地物を献立の主役に据える。大正ロマンの面影を残す木造の館は、旧名を名泉閣岩湯といい、自家源泉を宿へ直接引くラジウム泉を持つ。別邸「竹の宿」は一日一組限定の離れで、数寄屋の趣を宿した空間に客室露天を備える。全室が客室露天というわけではないが、料理と湯の双方に一本筋の通った、性格のはっきりした料理宿である。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、料理への評価が明確に高く、地の食材を丁寧に仕立てた献立を旅の目的に挙げる声が多い。小規模ゆえの目の届いた応対や、源泉かけ流しの湯への満足も安定して読み取れる。客室露天は別邸に限られるため、それを望む場合は早めの手配が要る。食を主目的に据え、湯を静かに添える——そうした滞在に最も響く一軒だと言える。
向く人 / 向かない人
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向く:
料理を旅の主目的に据える夫婦・友人連れ、小規模宿の細やかな応対を好む人、大正期の木造の趣を味わいたい向き -
向かない:
客室露天を必須とする旅(該当は別邸「竹の宿」一組のみ)、大浴場中心の湯めぐりや大人数での賑やかな滞在
具体情報
- 最寄り駅: JR倉吉駅からバスで約20分(タクシー約15分)
- 客室露天: 一日一組限定の別邸「竹の宿」に露天(数寄屋造り、築約60年)
- 客室数: 全9室の料理宿、旧名は名泉閣岩湯
- 湯: 自家源泉を宿へ直接引くラジウム泉、源泉かけ流し
- 食事: 料理長が鳥取の地物を用いる会席、料理を主目的にできる献立
よくある質問
Q. 三朝温泉の湯はどのような泉質ですか?
A. 三朝温泉は世界でも有数のラドン(ラジウム)を含む放射能泉として知られます。微量の放射線を含む湯に浸かり、また湯気を吸い込むことで働きが期待されるとされ、古くから湯治の地として親しまれてきました。肌当たりの柔らかさに定評があり、無色透明で癖の少ない湯です。効能や入浴の可否は体調により異なるため、持病のある方は事前に主治医へ相談するのが穏当です。
Q. 客室露天のある部屋は予約しやすいですか?
A. 本記事の五軒はいずれも客室露天を持ちますが、清流荘は六室、いわゆは別邸一組、橋津屋は別邸二室と、対象となる部屋数を絞っている宿が多いのが実情です。梅雨明けや紅葉期など人気の時季は早くに埋まる傾向があるため、日程が決まり次第、各宿の公式サイトから直接手配するのが確実です。
Q. 河原風呂とはどのようなものですか?
A. 三徳川の河原に自然湧出する共同の露天風呂で、三朝温泉の象徴として親しまれてきました。川のほとりに設けられた開かれた湯で、宿の私的な客室露天とは対照的な、里の湯の原型といえる存在です。各宿からも近く、滞在中に下駄を鳴らして立ち寄る楽しみがあります。混浴の形態や利用の作法は変わることがあるため、現地の掲示や宿の案内で確認してください。
Q. 三徳山への参詣は宿泊と合わせられますか?
A. 三徳川の上流に位置する三徳山三佛寺は、断崖に建つ国宝「投入堂」で名高い修験の霊場です。三朝温泉から車で二十分ほどの距離にあり、湯治と参詣を一日の行程に組み込めます。投入堂へ至る行者道は険しい登拝路のため、足ごしらえを整え、天候を見極めてのぞむのが賢明です。
Q. アクセスはどのようになりますか?
A. 三朝温泉へは、JR山陰本線の倉吉駅からバスで約二十分、タクシーなら約十五分です。倉吉駅へは特急が停まり、鳥取砂丘や大山方面と組み合わせた周遊もしやすい位置にあります。五軒はいずれも三徳川沿いの温泉街に集まっており、宿から宿へも徒歩圏です。
本記事の参考情報
・三朝温泉観光協会 — 三朝温泉の泉質・河原風呂・周辺の観光情報
・三徳山三佛寺 — 投入堂と登拝路、参詣の案内
・Wikipedia: 三朝温泉 — 温泉の歴史と地理の背景
編集部から
五軒に通底するのは、三朝の湯を大浴場だけで終わらせず、客室の露天という最も私的な器へ引いた点である。文化財の格を纏う旅館大橋から、料理を主役に据えるいわゆまで、宿の性格は異なれど、放射能泉の柔らかな湯を独りで抱える時間はどこでも約束される。梅雨が明けた谷の朝、湯気の向こうに三徳の山が青く立つ——その一景を求めて出かける価値のある温泉地だと、編集部は考える。次に三朝を訪ねるなら、河原風呂の共同湯と客室露天、開かれた湯と閉じた湯のどちらから一日を始めるだろうか。