梅雨の合間の日本海を、料理から辿る二泊三日です。直江津港の南蛮えびと、佐渡両津湾の佐渡もずく。漁港の朝の声と、船で渡る海の暦。編集部が選んだ宿は、上越と佐渡の二軒。南蛮えびの旬は文月、佐渡もずくの収穫はこの梅雨明けに最盛を迎える。夫婦旅、あるいは気の置けない友と。
| 日次 | 宿 | 所在 | Score | 客室 | 目安価格 | 1行特徴 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | うみてらす名立 ホテル光鱗 | 上越市名立区 | 92 | 25 | ¥34–¥43k | 直江津寄り名立漁港隣接、南蛮えびと地魚の鮮魚会席 |
| 2 | Ryokan浦島 | 佐渡市窪田 | 93 | 40 | — | 佐渡食材の会席と本格フレンチ、内藤廣設計の東館 |
※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。
DAY 1 直江津・名立泊
1. うみてらす名立 ホテル光鱗 — 新潟県上越市名立区
名立漁港隣に建つ、海越しの宿。南蛮えびを揚がりたてで供する宿として、編集部が初日に推したい一軒。
Media Picks Score: 92 / 100 25室、創業 2000年。
目安価格 ¥34,000–¥43,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
名立漁港から徒歩圏の海辺に立つ宿で、館内に「うみてらす名立」の鮮魚市場を併設している。宿の料理は、漁港で揚がった南蛮えび(甘えび)・のどぐろ・寒ぶり・あんこうなど、上越の地魚を主軸に組まれる。刺身・焼き物・蒸し物を一品ごとに合わせ、米と日本酒は越後の蔵元から取る。25室という規模が、料理長の眼と仕入れの行き届く範囲を保っており、夫婦・少人数の連れに静かさが残る。屋上には日本海を一望する展望露天があり、夕暮れの漁火を眺めながら湯に浸かれる。
食卓の話
文月の南蛮えびは漁港の主役で、宿の鮮魚会席ではえびの頭の素揚げ、刺身、えび味噌の汁が一晩の流れで出される。のどぐろの塩焼き、地のいかの一夜干し、上越産の越後姫が出る季節もある。朝食は鮮魚市場直送の干物と地味噌の汁、上越産コシヒカリ。品書きは月替わりで、漁次第で内容が動く——その揺らぎが、この宿の食卓の魅力である。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、料理の鮮度と量、漁港隣接という立地、屋上露天からの眺望に高い支持が集まる。一方で、館全体が道の駅と一体運営のため、休前日には食事処周辺の人の出入りが活気を帯びる点を、静けさを最優先する読者は留意したい。4,000件を超える評価のなかで、料理面の評点が継続的に高水準で安定している点は、同価格帯の海辺の宿として希有である。
向く人 / 向かない人
- 向く: 南蛮えびと日本海の地魚を主目的にする夫婦・少人数連れ、漁港の朝景を見たい食通、屋上露天と展望を重視する人
- 向かない: 完全に静寂な隠れ宿を求める旅程、洋食中心の食を望む人、ハイシーズン以外で甘えびにこだわりたい場合(旬は文月〜長月)
具体情報
- 最寄り駅: えちごトキめき鉄道 名立駅から徒歩約10分
- 港へのアクセス: 直江津港(佐渡汽船 小木航路)まで車で約25分
- 客室タイプ: 全25室(和室・ロフト付き洋室・特別室まで6タイプ)
- チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜10:00
- 食事: 鮮魚会席(夕・朝とも、月替わり)。市場で選べる鮮魚会席プランあり
- 湯: 屋上の展望露天(人工温泉)、屋内プール・海水プール併設
- 創業: 2000年(道の駅うみてらす名立 内宿泊棟)
DAY 2 両津港経由・佐和田泊
2. Ryokan浦島 — 新潟県佐渡市窪田
佐渡の食材を、和の会席と本格フレンチで供するオーベルジュ。佐和田湾に面した、内藤廣・北山恒の二棟設計。
Media Picks Score: 93 / 100
目安価格 — 公開販売価格の集計サンプルが少ないため割愛。公式サイトより問合せされたい。

なぜ選ばれるか
「Ryokan浦島」は、佐渡市窪田の佐和田湾に面して建つ食通のためのオーベルジュである。東館は建築家・内藤廣の設計で、佐渡の阿弖比(あてび)の木と漆喰を用いた現代の数寄屋造り。南館は北山恒の設計で、ガラスブロックと鉄骨の現代建築。二棟が対照を成しながら、同じ海岸線を共有する。料理は「食で佐渡を旅する」を掲げ、佐渡黒豚・佐渡牛・佐渡もずく・夏の岩牡蠣・地魚を主軸にする。東館内のレストラン「La Plage」では、三ツ星店で研鑽を積んだ料理長の手による佐渡食材のフレンチも供される。40室という規模ながら、運営は静かで丁寧という評がついて回る。
食卓の話
佐渡もずくは梅雨明けの収穫期で、宿では酢の物・天ぷら・椀物に展開される。夏の岩牡蠣は外海府で揚がるものを選び、生で、あるいは軽く焼いて供される。佐渡牛のたたき、佐渡黒豚のロースト、地のあじ・あらの刺身。夜は会席かフレンチを選べる構成で、朝食は佐渡米の銀シャリと干物、地味噌の汁を中心に据える。酒は佐渡の蔵元の純米吟醸が中心に並ぶ。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、料理水準、建築の静けさ、佐和田湾の夕景、料理長と宿の連携に高い支持が集中している。433件という評価数は隠れ宿の規模としては相応で、評点は同価格帯の佐渡の宿の中で安定して上位にある。懸念点としては、両津港から車で約30分の距離があるため、車のない旅程ではアクセスの手配が要る点が複数の評価で言及される。静けさを優先する宿としての評価が一貫している。
向く人 / 向かない人
- 向く: 佐渡食材の和とフレンチの両方を一晩で味わいたい食通、建築家の手による空間を好む夫婦旅、車で動ける旅程の二日目
- 向かない: 両津港の周辺にとどまる短い旅程、洋装の場が苦手な人(東館のフレンチ Plage は格式あり)、犬連れ以外で南館のモダン空間を好まない人
具体情報
- 最寄り港: 両津港から車で約30分(佐和田湾沿いの国道350号)
- 建築: 東館 内藤廣設計(阿弖比の木・漆喰)、南館 北山恒設計(ガラスブロック・鉄骨)、犬同伴コテージ別棟
- 客室: 全40室(東館・南館・ドッグヴィラ)
- チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜10:00
- 食事: 佐渡会席(個室)または東館 La Plage のフレンチを選択。佐渡もずく・岩牡蠣・佐渡牛・佐渡黒豚を主軸
- 料金帯: 1泊2食 13,000円〜(プランによりクラブルーム 1名77,000円〜の上位帯まで)
- 創業: 1980年(現在の建築は東館・南館とも近年の改築)
DAY 3 佐和田 → 両津港 → 帰路
三日目、両津港からの帰り方
朝、佐渡の銀シャリと地味噌の汁を済ませ、外海府の海岸線を辿りながら両津港へ戻る。道中、佐渡金山の坑道、北一輝の生地、大野亀の海岸を組み合わせると、文月の梅雨明けの島を一日で巡れる。両津港からは新潟港行きカーフェリーが日に数便、ジェットフォイルも複数便あり、新潟駅からの上越新幹線に接続する。佐渡もずくの土産は両津港の市場で買って帰るのが、二日目の宿の余韻を持ち帰る一つの方法である。
よくある質問
Q. 二泊三日の船便はどう組むのが現実的ですか?
A. 行きは上越新幹線で上越妙高駅まで入り、初日は名立で泊まる。二日目の朝に直江津港から佐渡汽船の高速船で小木港に渡り、レンタカーで佐和田の浦島へ。三日目に両津港から新潟港へ抜けて新潟駅で帰路につく構成が、季節と漁の暦に合う。佐渡汽船の航路は時期で本数が変動するため、出発の二週間前を目処に予約することを編集部としては勧めたい。
Q. 南蛮えびと佐渡もずくのベストシーズンはいつですか?
A. 南蛮えび(甘えび)は文月から長月、つまり7月から9月にかけて新潟県沿岸で最盛期を迎える。佐渡もずくは梅雨明けから夏の初めにかけてが収穫期で、この時期に島を訪ねれば獲れたてが宿の品書きに上がる。夏の岩牡蠣も同じ時期で、三つの食材が同じ旅程で味わえるのは、この一ヶ月から二ヶ月の間に限られる。
Q. 車のない旅程でも組めますか?
A. 一日目の光鱗は名立駅から徒歩圏で問題ない。二日目の浦島は、両津港から国道350号沿いに約30分の距離があり、車かタクシーが必要になる。佐渡市内の路線バスは本数が限られるため、車のない旅程の場合は宿の送迎やレンタカーの確保を事前に手配されたい。料理に主目的を置く旅程として、車を用意することは時間の余裕に直結する。
Q. 子連れでも泊まれますか?
A. 光鱗は道の駅併設のため家族客にも応対する宿で、ファミリー向けの客室タイプもある。浦島は静かな食通宿としての性格が強く、東館の会席室・南館の現代建築とも、未就学児を伴う旅程には不向きな面がある。犬同伴のコテージは別棟として用意されている。子連れの食通旅は光鱗を二泊にする選び方も検討に値する。
Q. 食事だけのプランはありますか?
A. 浦島の東館レストラン「La Plage」では、日帰りの食事プランが供される時期がある。佐渡で日帰り会食を組む場合は、宿の公式サイトから直接問い合わせるのが確実である。光鱗は宿泊と食事の組み合わせを基本とし、館内の鮮魚市場での食材購入は日帰りでも可能である。
本記事の参考情報
・さど観光ナビ(佐渡観光交流機構) — 佐渡市の観光情報・季節の食材
・佐渡汽船 — 直江津港〜小木港、両津港〜新潟港の航路・時刻
・新潟県旅館ホテル組合「よりなれえちご」 — 新潟県の旅館情報・ガストロノミー
・Wikipedia: 名立漁港 — 漁港の歴史と魚種
編集部から
本稿で取り上げた二軒は、いずれも漁港と海岸線の暦の上に成立した食通宿である。光鱗は漁港隣接という立地そのものを料理に翻訳し、浦島は佐渡食材を二つの建築言語と二つの料理の文法で語り直す。船で海を渡るという行為が、二軒を一つの旅程に結ぶ。文月の梅雨明け、南蛮えびと佐渡もずくの旬は短く、岩牡蠣の旬と重なる窓も狭い。次の号では、晩夏から初秋にかけての佐渡の岩牡蠣と新米の二泊三日を編集部として辿る予定である。