梅雨の合間の草津に、温泉文化を継いできた宿を訪ねる。湯畑の湯けむりを中心に、明治から平成まで代替わりを重ねた老舗が、いまも自家源泉や貸切湯、料亭仕立ての夕餉を磨き続けている。本稿で取り上げる五軒は、いずれも創業から半世紀以上、客室二十室前後の中規模で、湯守の手仕事と地のものを軸に据える「名旅館」である。公開レビューデータを集計し、湯量・歴史・運営の連続性で編集部が推す五軒を、Media Picks Score とともに紹介する。

# 旅館 エリア Score 客室 目安価格 1行特徴
1 奈良屋 湯畑前 95 36 ¥95–¥122k 明治十年創業、白旗源泉を湯守が引く老舗
2 望雲 西の河原 93 42 ¥55–¥84k 二源泉六湯を擁する西の河原沿いの宿
3 山本館 湯畑前 93 11 ¥55–¥79k 国登録有形文化財、幕末創業の数寄屋
4 中村屋旅館 湯畑前 92 10 ¥34–¥40k 湯畑徒歩30秒、五つの貸切湯
5 つつじ亭 奥草津 91 10 ¥90–¥117k 五千坪、離れ形式の料亭旅館

※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。

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1. 草津温泉 奈良屋 — 群馬・草津町

明治十年、湯畑の真ん前に開いた湯守の宿。草津の象徴的な一軒として、編集部が真っ先に推したい老舗である。

Media Picks Score: 95 / 100  36室、中規模の老舗旅館。

目安価格 ¥95,000–¥122,000 / 泊 (2名1室・通常期)


草津温泉 奈良屋 — 群馬・草津町湯畑前 · 明治10年創業、白旗源泉を湯守が引く老舗旅館
PHOTO: 草津温泉 奈良屋 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

湯畑の真向かいに建ち、草津で最古とされる白旗源泉から湯を引く。代々受け継がれる「湯守」の手仕事で、源泉に外気を当てて湯温を下げ、まろやかさを生み出す工程が宿の核である。客室は日本古来の花の名前を冠し、純和風の意匠を保ちつつ、設えは現代の旅人にも応える。地の立地、湯の系譜、運営の連続性、その三点が揃う点で、群を抜く。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、湯の質と接客の丁寧さに最も高い評価が集まる。湯畑の眺望、館内の手入れ、夕餉の盛り付けへの言及が安定して多い。一方、立地が湯畑前ゆえに静けさを最優先する旅程には不向きで、観光客の往来音を気にする層からは別の選択肢を検討する声も見られる。記念日や夫婦の節目を区切る滞在として支持を集める。

向く人 / 向かない人

  • 向く: 夫婦の節目、湯畑を歩いて巡りたい初訪問者、湯守文化に関心のある温泉好き
  • 向かない: 完全な静寂を求める滞在、幼児連れで広い客室を要する家族、洋食中心の食を望む人

具体情報

  • 最寄り駅: JR長野原草津口駅からバス 25 分、草津温泉バスターミナルから徒歩 5 分
  • 客室数: 35 室(公式情報)
  • チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜11:00
  • 食事: 朝食・夕食ともに会席(地のものを主に)
  • 創業: 1877年(明治十年)
  • 湯: 白旗源泉、湯守による源泉処理


2. 草津温泉 旅館 望雲 — 群馬・草津町

西の河原沿いの斜面に、二つの源泉から六つの湯を分けて備える。十返舎一九ゆかりの宿として、湯場としての厚みが他にない。

Media Picks Score: 93 / 100  42室、中規模の老舗旅館。

目安価格 ¥55,000–¥84,000 / 泊 (2名1室・通常期)


草津温泉 旅館 望雲 — 群馬・草津町西の河原 · 二源泉六湯を擁する江戸期からの老舗旅館
PHOTO: 草津温泉 旅館 望雲 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

「万代鉱」と「西の河原」の二源泉を引き、館内に六つの湯を備える。露天、内湯、貸切、立ち寄り客には開かれない宿泊者専用の湯まで、湯の構成が深い。江戸後期、十返舎一九が逗留した史実を継ぐ宿として、館の随所に湯治文化の痕跡が残る。建物は何度かの増改築を経ているが、湯場の動線設計は古い意匠を保ち、回遊するように湯巡りができる。

集約レビューの傾向

湯の本数と湯量への満足度が高い。湯巡り体験そのものが宿の中で完結する点を評価する声が安定する。食事は会席として標準的だが、湯と引き換えに食を控えめにする旅程に合うとの言及が多い。客室は新館と本館で差があり、本館の趣を選ぶ客と新館の設備を取る客で分かれる。家族で湯を回り、夜更けに静かに館内を歩く類の滞在に向く。

向く人 / 向かない人

  • 向く: 一晩で湯巡りを完結したい温泉好き、館内回遊を楽しむ夫婦旅、二源泉を比較したい湯通
  • 向かない: 全室共通の設備水準を期待する人、料理を主目的にする滞在、貸切湯のみ希望の人

具体情報

  • 最寄り駅: JR長野原草津口駅からバス 25 分、草津温泉バスターミナルから徒歩 7 分
  • 客室数: 42 室(本館・新館合計)
  • チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜10:00
  • 食事: 朝食・夕食ともに会席(上州素材を主に)
  • 湯: 万代鉱・西の河原の二源泉、六湯
  • 沿革: 江戸後期創業、十返舎一九ゆかり


3. 草津温泉 山本館 — 群馬・草津町

湯畑の正面に建つ木造三階、平成二十四年に国登録有形文化財に指定された幕末創業の数寄屋宿。

Media Picks Score: 93 / 100  11室、小規模の文化財旅館。

目安価格 ¥55,000–¥79,000 / 泊 (2名1室・通常期)


草津温泉 山本館 — 群馬・草津町湯畑前 · 国登録有形文化財、幕末創業の木造三階の老舗
PHOTO: 草津温泉 山本館 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

木造三階の本館は、平成二十四年に国登録有形文化財として指定された建築そのものが、滞在の主役である。湯畑の真正面、白旗源泉を引く立地と意匠の両面で代えのきかない一軒。客室十一室と小規模で、館の手入れが行き届き、廊下の畳、組子の欄間、磨き込まれた階段の手すりに、世代を重ねた使い込みが残る。湯畑の眺望は時間帯で表情を変え、夜の湯けむりが行灯と重なる景色は、ここでしか得られない。

集約レビューの傾向

建築への評価が突出して高い。湯畑の眺望、夜の湯けむり、館内の手入れに集約される。一方、文化財ゆえに段差や階段が多く、足腰に不安のある客や幼児連れには注意点があるとの言及が一定数。食事は素朴な構成で、贅を尽くした料理を期待する旅程よりは、建物と湯を主目的とする滞在に合う傾向が明瞭である。

向く人 / 向かない人

  • 向く: 古建築・文化財に関心のある夫婦旅、湯畑の夜景を客室から望みたい人、海外からの伝統建築志向の旅行者
  • 向かない: エレベーターを必須とする滞在、料理を主目的にする旅程、設備の現代化を強く望む人

具体情報

  • 最寄り駅: JR長野原草津口駅からバス 25 分、草津温泉バスターミナルから徒歩 5 分
  • 客室数: 11 室
  • チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜10:00
  • 建物: 木造三階建て、国登録有形文化財(平成 24 年指定)
  • 湯: 白旗源泉
  • 創業: 江戸幕末


4. 草津温泉 中村屋旅館 — 群馬・草津町

湯畑まで徒歩三十秒、湯畑源泉の貸切湯を五つ持つ十室の宿。立地と湯のかけ流しを最短距離で味わえる構成。

Media Picks Score: 92 / 100  10室、小規模の湯畑前旅館。

目安価格 ¥34,000–¥40,000 / 泊 (2名1室・通常期)


草津温泉 中村屋旅館 — 群馬・草津町湯畑前 · 湯畑徒歩30秒、湯畑源泉の五つの貸切御座敷風呂を備える小宿
PHOTO: 草津温泉 中村屋旅館 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

湯畑まで徒歩三十秒の立地、湯畑源泉の二十四時間かけ流し、そして五つの貸切「御座敷風呂」を擁する構成が他にない。十室の小ささを活かし、湯が混まない。家族や夫婦が、人目を気にせず湯に入れることを最大の価値に据えた運営である。価格帯は本稿の五軒で最も抑えめだが、湯の本数と立地で名旅館の側に置く理由は十分にある。

集約レビューの傾向

貸切湯の使い勝手と湯畑近接への評価が中心。空いていれば自由に貸切が回せる仕組みを好む声が安定する。一方、建物は新しさを売りにしておらず、設備の刷新を求める旅程との相性は弱い。食事は会席として標準的で、湯と立地を主目的に据えた滞在に向く。家族での再訪客が一定数いる点が、運営の連続性を裏付ける。

向く人 / 向かない人

  • 向く: 家族・小グループでの貸切湯主体の滞在、湯畑徒歩圏を優先する旅程、価格と湯量のバランスを取る人
  • 向かない: 大浴場の眺望を重視する人、料理長賞歴の宿を求める食通、新築旅館の設備感を望む人

具体情報

  • 最寄り駅: JR長野原草津口駅からバス 25 分、草津温泉バスターミナルから徒歩 5 分(湯畑まで徒歩 30 秒)
  • 客室数: 10 室
  • チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜10:00
  • 湯: 湯畑源泉かけ流し、貸切御座敷風呂 5 つ(24時間入浴可)
  • 食事: 朝食・夕食ともに会席


5. 草津温泉 つつじ亭 — 群馬・草津町

五千坪の敷地、三千坪の自然林を擁する離れ形式の料亭旅館。湯畑の喧騒から離れ、白根山並みを望む宿である。

Media Picks Score: 91 / 100  10室、小規模の離れ料亭旅館。

目安価格 ¥90,000–¥117,000 / 泊 (2名1室・通常期)


草津温泉 つつじ亭 — 群馬・草津町奥草津 · 五千坪の敷地に離れを構える料亭旅館、白根山並みを望む
PHOTO: 草津温泉 つつじ亭 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

五千坪の敷地に、約三千坪の自然林を残した離れ形式の宿。湯畑から少し離れることで得られる静けさが、宿全体の構えに通底する。料亭旅館を標榜し、夕餉は地のものを軸にした会席で、配膳と器の選び方に料亭の流儀が現れる。客室は離れ「囲炉裏の間」を含め十室のみで、隣室の気配が滞在に入り込まない。白根山並みを望む眺望と、苔むした石の中庭の意匠が、湯場の手前で静かに迎える。

集約レビューの傾向

静けさ、敷地の広さ、料理への評価が突出する。湯畑近接ではないことを承知のうえで選ぶ客が多く、再訪率が高い。記念日や夫婦の節目を区切る滞在として支持される。一方、湯巡りや街歩きを主目的にすると立地は不利で、宿に篭る覚悟が必要との声が見られる。離れ形式ゆえ移動距離があり、雪深い季節は履物の心構えを要するとの言及もある。

向く人 / 向かない人

  • 向く: 記念日・夫婦の節目、宿に篭る滞在、静けさと料理を優先する旅人、白根の山並を望みたい人
  • 向かない: 湯畑の往来を歩きたい初訪問者、料金感度の高い旅程、移動距離を最小化したい高齢者

具体情報

  • 最寄り駅: JR長野原草津口駅からバス 25 分、草津温泉バスターミナルから車 5 分
  • 客室数: 10 室(離れ含む)
  • 敷地: 約 5,000 坪、自然林 約 3,000 坪
  • チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜11:00
  • 食事: 朝食・夕食ともに料亭仕立ての会席
  • 客室特例: 離れ「囲炉裏の間」(8 畳次の間にセミダブル 2 台、2025 年 1 月配置)


よくある質問

Q. ベストシーズンはいつですか?

A. 草津は標高 1,200 m の高原に位置し、夏は涼しく冬は雪深い。編集部が推す時期は、紅葉が湯畑周辺に下りる 10 月下旬から 11 月上旬、そして雪見湯を満喫できる 1 月から 2 月。GW と年末年始は宿泊料金が大きく上がり、半年前から予約が埋まる傾向がある。梅雨明けの 7 月中旬は比較的価格が落ち着き、過ごしやすい。

Q. 予約のタイミングは?

A. 紅葉期と雪見期の連休は 4〜6 ヶ月前から人気宿が埋まる。本稿の五軒のうち、奈良屋・つつじ亭・山本館は記念日利用が多く、半年前の予約を勧めたい。平日は比較的直前でも空きが見つかる。キャンセル料は 7 日前から発生する宿が多い(公式サイトで確認)。

Q. 子連れでも泊まれますか?

A. 中村屋旅館と望雲は家族連れの実績が一定数あり、客室タイプによっては添い寝も応じる。一方、山本館は文化財建築で段差・階段が多く、つつじ亭は離れ形式で移動を要するため、幼児連れは要相談。奈良屋は中規模だが客室は和室が中心で、家族構成によって割り当てが変わる。各宿の公式サイトで条件を確認のうえ予約したい。

Q. アクセスは?

A. 東京方面からは上越新幹線で高崎、特急草津・四万で長野原草津口、バス 25 分で草津温泉バスターミナル。所要約 3 時間 30 分。車では関越自動車道渋川伊香保 IC から約 60 km、約 1 時間半。冬季はスタッドレス必須。バスターミナルから本稿の五軒のうち四軒は徒歩 5〜7 分、つつじ亭のみ車 5 分の距離である。

Q. 草津の湯の特徴は?

A. 草津温泉は強酸性の硫黄泉で、pH は 1.5〜2.0 と日本でも有数の低さ。殺菌力が強く、皮膚疾患・神経痛に効くとされる。本稿で取り上げる宿はそれぞれ「白旗源泉」「万代鉱源泉」「西の河原源泉」「湯畑源泉」など、宿ごとに異なる源泉を引いており、湯温・湯花・肌触りに差が出る。湯巡りそのものを目的にする旅程に向く土地である。

本記事の参考情報

草津温泉観光協会 — エリアの観光情報と源泉解説
Wikipedia: 草津温泉 — 歴史・地理の背景
日本温泉協会 — 泉質・温泉地データ

編集部から

草津の名旅館を選ぶ軸は、湯の系譜と運営の連続性に尽きる。本稿の五軒はいずれも、白旗・万代鉱・西の河原・湯畑のいずれかの源泉を引き、創業から半世紀以上、代替わりを重ねながら湯と建物の手入れを止めていない。紅葉と雪、二つの季節で景色が大きく変わる土地である。湯畑の湯けむりが立ちのぼる夜、客室の障子越しに行灯の光が落ちる時間に、宿の核が見える。次に書きたいテーマは、信州の湯治宿、あるいは草津と並ぶ強酸性泉である玉川温泉。読者の便りを待ちたい。

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