梅雨明けの但馬、大谿川に沿う柳が濃い緑を垂らすころ、城崎の町はいちだんと静まる。開湯千三百年を数えるこの湯の町は、七つの外湯を町全体の湯殿とみなし、宿は玄関を戸口にして客を下駄で送り出してきた。木造三層に代を継ぐ名旅館を、外湯文化と町並みの継承という軸で四軒選んだ。志賀直哉が籠った宿から、江戸に源をもつ老舗まで、湯の町の骨格を担う宿ばかりである。

# 宿 エリア Score 客室 目安価格 1行特徴
1 西村屋本館 城崎温泉 95 34 ¥179–225k 江戸に源をもつ数寄屋普請の城崎最古格
2 三木屋 城崎温泉 93 16 ¥68–112k 志賀直哉ゆかり、木造三階の登録有形文化財
3 山本屋 城崎温泉 91 20 ¥51–59k 柳並木の中心で外湯四湯が徒歩圏の老舗
4 森津屋 城崎温泉 89 12 ¥45–67k 岩窟の湯と川端の情緒を残す小体な一軒
↕︎ 地図右下の角をドラッグすると高さを調整できます

※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。会席の格により幅があります。

1. 西村屋本館 — 城崎温泉

江戸に源をもつ数寄屋普請が、城崎の格式を今に伝える。湯の町の背骨として編集部が真っ先に挙げる一軒。

Media Picks Score: 95 / 100  34室、老舗旅館。

目安価格 ¥179,000–¥225,000 / 泊 (2名1室・通常期)


西村屋本館 — 城崎温泉・大谿川畔 · 江戸期に源をもつ数寄屋普請の老舗旅館
PHOTO: 西村屋本館 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

湯が、まず違う。西村屋本館は城崎でもっとも古い格式を保つ宿のひとつで、江戸・安政期に源をもつと伝わる。数寄屋普請の客室と平田館の意匠、手入れの行き届いた庭が、山陰きっての純和風旅館という評価を支える。館は改修を重ねながらも柱や欄間の仕事を残し、外湯めぐりの起点として下駄で歩き出せる立地にある。格と静けさの両立が、この宿を第一に置く理由である。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、建物と庭の格調、仲居の目配り、会席の完成度への評価が突出して高い。数寄屋の客室で過ごす時間と、貸切風呂を含む湯まわりの落ち着きを挙げる声が多い。一方で、価格帯は城崎でも上位に位置し、賑わいより静謐を求める滞在に向く、という傾向も読み取れる。子連れの慌ただしい旅程より、夫婦や友人での静かな一泊に評価が寄る。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    記念日・夫婦での静かな一泊、数寄屋建築と庭を愛でる旅、会席を主目的にする滞在
  • 向かない:
    予算を抑えたい旅程、幼児連れで動きの多い滞在、賑やかさや洋風の設えを望む人

具体情報

  • 最寄り駅: JR城崎温泉駅から徒歩約 10 分(タクシー約 3 分)
  • 客室数: 34室(数寄屋造り・平田館ほか)
  • チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜11:00
  • 食事: 但馬の四季を映す会席、冬は松葉がに・但馬牛
  • 湯: 城崎の外湯七湯へ下駄で歩ける中心立地


2. 三木屋 — 城崎温泉

志賀直哉が籠り「城の崎にて」を書いた、木造三階の登録有形文化財。文学と建築が同居する一軒。

Media Picks Score: 93 / 100  16室、老舗旅館。

目安価格 ¥68,000–¥112,000 / 泊 (2名1室・通常期)


三木屋 — 城崎温泉 · 昭和初期の木造三階、国の登録有形文化財
PHOTO: 三木屋 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

建物が、そのまま物語である。大正2年、療養のため城崎を訪れた志賀直哉が三週間ほど逗留し、名作「城の崎にて」が生まれた。昭和初期に建てられた木造三階は国の登録有形文化財に指定され、約三百坪の日本庭園が当時の姿を保つ。2013年の改修で客室の快適さを整えつつ、階段の勾配や欄間、庭への視線といった昔ながらの佇まいを残した。文学の記憶と木造建築の継承をひとつの宿で味わえる点が、選定の理由である。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、木造三階の建築美と庭のライトアップ、文豪ゆかりという物語性への支持が厚い。畳と柱の質感、静かな滞在への評価が目立つ。設備は改修で整えられつつも、歴史的建築ゆえの階段や間取りの独特さに触れる声もあり、そこも含めて味わう滞在に向く。賑やかさより、建物と時間を静かに愛でたい旅に評価が集まる。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    文学・近代建築を好む旅、木造三階の意匠を体験したい人、夫婦や友人での静かな一泊
  • 向かない:
    段差や急な階段を避けたい人、最新設備を重視する滞在、小さな子を連れた慌ただしい旅程

具体情報

  • 最寄り駅: JR城崎温泉駅から徒歩約 12 分
  • 客室数: 16室(木造三階建て)
  • 建築: 昭和初期建造、国の登録有形文化財
  • 庭: 約300坪の日本庭園、夜はライトアップ
  • 文学: 志賀直哉「城の崎にて」ゆかりの宿


3. 山本屋 — 城崎温泉

柳並木の中心に構え、外湯四湯が徒歩圏。城崎の作法をもっとも素直に味わえる老舗。

Media Picks Score: 91 / 100  20室、老舗旅館。

目安価格 ¥51,000–¥59,000 / 泊 (2名1室・通常期)


山本屋 — 城崎温泉・柳並木 · 外湯めぐりの中心に建つ老舗旅館
PHOTO: 山本屋 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

立地が、この宿の献立である。山本屋は城崎のシンボルである柳並木沿い、町のほぼ中心に建つ。隣接する柳湯をはじめ、三百メートル圏に外湯が四つ、いちばん遠い鴻の湯・さとの湯まででも六百メートルほど。浴衣に下駄で湯を渡り歩くという城崎の作法を、もっとも素直に味わえる一軒である。直営工房の地ビールや但馬牛、近海のかにといった土地の恵みも滞在に厚みを添える。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、外湯めぐりに最適な立地への評価が際立って高い。柳並木を望む風情、手ごろな価格帯で老舗の落ち着きを味わえる点、地ビールや但馬の食材への満足が続く。中心部ゆえ夜まで町の賑わいが届く面もあり、静寂を最優先する滞在より、外湯と町歩きを主目的にする旅に評価が寄る傾向が読み取れる。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    外湯めぐりを主目的にする旅、町歩きと地の食を楽しみたい人、価格と老舗感の均衡を求める滞在
  • 向かない:
    喧噪から離れた静寂を最優先する人、離れや客室露天を望む滞在、車で静かな郊外に泊まりたい旅程

具体情報

  • 最寄り駅: JR城崎温泉駅から徒歩約 8 分
  • 客室数: 20室
  • 外湯: 隣接の柳湯ほか約300m圏に四湯
  • 食: 但馬牛、近海のかに、直営工房の地ビール
  • 立地: 大谿川の柳並木沿い、町の中心


4. 森津屋 — 城崎温泉

岩窟の湯と川端の情緒を守る小体な一軒。数を絞ったもてなしで湯の町を静かに味わう。

Media Picks Score: 89 / 100  12室、老舗旅館。

目安価格 ¥45,000–¥67,000 / 泊 (2名1室・通常期)


森津屋 — 城崎温泉・湯島 · 岩窟風呂を名物とする小体な老舗旅館
PHOTO: 森津屋 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

湯が、洞のなかに沸く。森津屋は城崎の繁華の中心近くに建つ小体な宿で、名物の岩窟風呂と野趣ある露天が館の顔である。館内二か所の風呂は時間帯によって貸切で使え、湯上がりに川端の柳並木を歩けば、すぐに外湯めぐりへ移れる。女将の点前で客を迎える茶の設えや、二百枚に及ぶ色浴衣・着物の貸し出しなど、規模の小ささを補って余りある目配りが、この宿を四軒目に加えた理由である。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、岩窟風呂の趣と貸切利用のしやすさ、女将を中心とした細やかな応対への評価が高い。色浴衣の貸し出しや、外湯めぐりに便利な中心立地を挙げる声も多い。客室数が少ないぶん、大型館のような設備の豪華さより、小さな宿ならではの距離の近いもてなしを楽しむ滞在に向く、という傾向が読み取れる。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    貸切風呂と個性的な湯を楽しみたい人、女将のもてなしに触れたい旅、外湯めぐりの拠点を探す滞在
  • 向かない:
    大型館の設備や広い大浴場を望む人、離れの独立性を求める旅程、静かな郊外立地を好む滞在

具体情報

  • 最寄り駅: JR城崎温泉駅から徒歩約 10 分
  • 客室数: 12室
  • 湯: 名物の岩窟風呂、館内2か所を時間帯貸切
  • 設え: 女将の点前によるウェルカムの茶
  • 浴衣: 約200枚の色浴衣・着物を貸し出し


よくある質問

Q. 訪ねるならどの時季が良いですか?

A. 梅雨明けから初秋は、大谿川の柳が青々と垂れ、夜の外湯めぐりも汗ばむほど混まず歩ける。冬は松葉がにを目当てに宿が最も賑わい、価格も上がる時季にあたる。柳の芽吹く春や、湯けむりの映える晩秋も情緒が深い。静けさを重んじるなら、かに解禁前の梅雨明けから秋口を編集部は推したい。

Q. 外湯めぐりはどのように楽しむのですか?

A. 城崎は七つの外湯を町全体の湯殿とみなし、宿泊客は浴衣に下駄で湯から湯へと渡り歩く。多くの宿が外湯入浴の手形を用意し、内湯を控えめにして客を町へ送り出す作法を守ってきた。今回の四軒はいずれも外湯が徒歩圏で、湯上がりに川端を歩く時間そのものが滞在の主役になる。

Q. 食事にはどんな土地の味が並びますか?

A. 但馬の海と山が食卓の中心に据わる。冬は松葉がに、通年で但馬牛が主役となり、近海の魚や山の幸が会席を彩る。宿ごとに献立の格や品数は異なり、会席を主目的にするなら西村屋本館、地の食と地ビールを気軽に味わうなら山本屋、といった選び分けができる。

Q. 子ども連れでも泊まれますか?

A. いずれも子ども連れの宿泊は可能だが、木造三階や歴史的建築の宿は階段や段差が多く、幼児連れには動きにくい面もある。落ち着いた会席を重んじる宿では、静かな滞在を求める客層が中心になる。小さな子を伴う旅では、事前に客室の階や食事処の設えを宿へ確かめておくと安心である。

Q. 海外からの客も利用しやすいですか?

A. 城崎は温泉町として海外からの旅行者に親しまれ、外湯めぐりや浴衣文化が体験の核として支持されている。今回の四軒も、浴衣の貸し出しや外湯への案内など、湯の町ならではのもてなしを備える。木造建築や茶の設えといった和の様式を体験したい旅に、とりわけよく合う。

本記事の参考情報

城崎温泉観光協会 — 七つの外湯・町並みと交通の案内
Wikipedia: 城崎温泉 — 開湯伝承と歴史・地理の背景

編集部から

四軒に通うのは、外湯を町の湯殿とみなす作法と、木造建築を代々受け継ぐ姿勢である。西村屋本館の数寄屋、三木屋の登録有形文化財、山本屋の柳並木、森津屋の岩窟——構えは異なれど、いずれも玄関を戸口として客を町へ送り出す。梅雨明けの但馬で、下駄を鳴らして七湯を巡る夜を思い描いてみてほしい。あなたなら、どの宿を起点に、最初の一湯へ向かうだろうか。

次に読むなら