寒露を過ぎ、磊々峡の岩肌に張り出した楓が色を移しはじめる。名取川が刻んだ深さ二十メートルの谷を抱く仙台の奥座敷・秋保に、母屋から棟を分けて建てられた宿があります。棟数と坪数、棟ごとの湯を手がかりに、夫婦二人の静けさが保てる四軒を選びました。

秋保は古く「名取の御湯」と呼ばれ、伊達政宗の仙台入府ののち藩主の御殿湯が置かれた湯です。湯守役を務めた佐藤家に加え、寛永二年に岩沼屋、元禄年間に水戸屋が旅籠を開き、湯治場として長く続いてきました。広瀬川源流の作並と合わせて仙台の二つの奥座敷を通して調べたところ、棟を分ける形式を公表情報で確認できたのは、いずれも名取川沿いの秋保でした。数寄屋の離れから森に離した独立棟まで、成り立ちの異なる四軒を、棟数と坪数、湯の在り処とともに案内します。

# 宿 エリア 棟・室 目安価格 1行特徴
1 茶寮宗園 秋保・釜土東 離れ10/全26室 ¥85,000–¥149,000 庭に散らした数寄屋の離れ、うち九棟が露天風呂付き
2 仙台 秋保温泉 迎賓館 櫻離宮 秋保・磊々峡 14室(地上3階) ¥60,000–¥87,000 本館ホテル瑞鳳と棟を分けた、渓に臨む数寄屋の離れ宿
3 GLAMPSEASON(グランピングスパ仙台) 秋保・木戸保 10棟(直径7m) ¥40,000–¥47,000 蘭亭の森に離した十棟、各棟のデッキに檜の露天風呂
4 秋保 木の家ロッジ村 秋保・名取川沿い 14棟(11.3〜37坪) ¥13,000–¥27,000 木造平屋と二階建てを渓に散らした一棟貸しのロッジ村
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※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)。

1. 茶寮宗園 — 仙台市太白区・秋保温泉

庭に散らした離れ十棟。うち九棟に露天風呂を備える、秋保でもっとも棟の分かれた一軒です。

全26室(離れ10室・本館和室16室)、二階建ての数寄屋風旅館。

目安価格 ¥85,000–¥149,000 / 泊 (2名1室・通常期)


茶寮宗園 — 仙台市太白区秋保町 · 離れの縁側から望む日本庭園と晩秋の楓、灯される行灯
PHOTO: 茶寮宗園 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

離れが十室あり、そのうち九室に露天風呂が付きます。泰山、旭、月影、蓬莱、敷島、嵯峨、東雲、郭公、霧壺と棟ごとに名が与えられ、和洋室の早乙女には専用の庭が添えられています。本館の和室十六室は一階と二階に分かれ、建物全体が二階建てに収まるため、廊下を歩く音や上階の気配が届きにくい構えです。日本庭園に囲まれた数寄屋風の建築で、湯は一階の大浴場に男女それぞれ設けられ、露天風呂とサウナも備わります。母体の水戸屋は元禄年間に秋保で旅籠を開いたと伝えられ、その系譜のうえに立つ静かな一軒だと言えます。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、庭と建物の設えに対する評価が突出して高く、次いで懐石の献立と接客の距離感が支持を集めています。二十六室という規模に対して評価件数は多くありませんが、点数の散らばりが小さく、期待と体験の差が生じにくい宿であることがうかがえます。一方で、価格帯の高さに触れる声が一定量あり、記念日や区切りの旅として選ばれている傾向が読み取れます。エレベーターがなく段差のある構造についても言及があり、歩行に不安のある同行者がいる旅では事前の相談が要る宿です。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    記念日や節目に静けさを求める夫婦二人の旅、庭と数寄屋の造作を目当てにする旅、棟ごとの露天風呂で人目を避けたい滞在
  • 向かない:
    予算を一泊三万円台に抑えたい旅程、エレベーターのない二階建てが負担になる同行者がいる場合、大浴場の種類の多さを楽しみにする旅

具体情報

  • 所在: 宮城県仙台市太白区秋保町湯元字釜土東1
  • 棟・室数: 離れ10室(露天風呂付9室・和洋室1室)/本館和室16室、全26室・収容100名
  • 建物: 二階建て、エレベーターなし
  • 湯: ナトリウム・カルシウム塩化物泉。一階に男女各一の大浴場、露天風呂とサウナを併設
  • 食事: 懐石。客室タイプにより部屋出しに対応
  • チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜11:00
  • 送迎: 仙台駅東口発 10:30・14:00・16:00(姉妹館の車両、要予約)


2. 仙台 秋保温泉 迎賓館 櫻離宮 — 仙台市太白区・磊々峡

本館ホテル瑞鳳から棟を分けた十四室。磊々峡の淵にもっとも近い、数寄屋造りの離れ宿です。

全14室、地上三階建ての離れ宿。収容76名。

目安価格 ¥60,000–¥87,000 / 泊 (2名1室・通常期)


仙台 秋保温泉 迎賓館 櫻離宮 — 仙台市太白区秋保町 · 竹垣と檜に囲まれた客室専用の露天風呂
PHOTO: 仙台 秋保温泉 迎賓館 櫻離宮 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

母屋にあたるのはホテル瑞鳳で、その渓側に棟を分けて建てられたのが櫻離宮です。総客室数は十四室、建物は地上三階に収まり、大浴場を持たない代わりに客室側へ湯を寄せています。古代檜を用いた風呂やジャグジー、露天風呂を備えた客室があり、サウナの付く部屋も用意されています。名取川が刻んだ磊々峡の清流に隣接し、窓を開ければ川音が部屋に入る立地です。夕食は鉄板会席「なとり川」を軸に、本館の食事処や大浴場も利用できるため、離れの静けさと大型館の設備を行き来できる構えになっています。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、客室に付く湯と渓に面した眺めへの評価が高く、記念日利用の比率が高いことがうかがえます。一方、本館と離れで運営が地続きであるため、食事会場や送迎の案内をめぐる感想には幅があり、評価の分散が大きい点は率直に記しておきます。数寄屋の設えと十四室という規模を目当てに選ぶ旅では満足度が高く、大型館の賑わいを想定して訪れると印象が変わる、という傾向が読み取れる宿です。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    磊々峡の遊歩道を歩いてから湯に入りたい旅、客室の湯で完結させたい夫婦二人の滞在、鉄板を前にした夕食を目当てにする旅
  • 向かない:
    離れの側に大浴場を求める旅(大浴場は本館の利用)、静粛さを最優先し本館との往来を避けたい滞在

具体情報

  • 所在: 宮城県仙台市太白区秋保町湯元字除26-1(磊々峡に隣接)
  • 棟・室数: 全14室、地上三階、収容76名。本館ホテル瑞鳳から棟を分けた離れ宿
  • 湯: ナトリウム・カルシウム塩化物泉。客室に内風呂・露天風呂、サウナ付きの客室あり。大浴場は本館を利用
  • 食事: 鉄板会席「なとり川」。本館の食事処・バイキングも利用可
  • チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜11:00
  • アクセス: JR仙山線・愛子駅からタクシー約15分、仙台駅から路線バス約60分。仙台駅東口発の送迎バス 14:00・16:00(予約制)


3. GLAMPSEASON(グランピングスパ仙台) — 仙台市太白区・秋保温泉

秋保の旅館・蘭亭が森に離した十棟。直径七メートルの棟ごとに、檜の露天風呂とデッキが付きます。

ドーム客室10棟、直径7m、定員1〜5名。2022年9月グランドオープン。

目安価格 ¥40,000–¥47,000 / 泊 (2名1室・通常期)


GLAMPSEASON — 仙台市太白区秋保町 · 本館蘭亭の敷地に離して建てられたウッドデッキ付きドーム棟の外観
PHOTO: GLAMPSEASON(グランピングスパ仙台) — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

秋保の旅館・奥州秋保温泉 蘭亭が、本館の敷地の奥に十棟を離して構えた宿です。棟はいずれも直径七メートルのドーム型で、定員は一棟あたり一名から五名。各棟に専用のウッドデッキが付き、その上に檜の露天風呂とシャワールーム、洗浄機能付きの手洗いが収まります。悪天時にも使える室内の食事スペースが棟ごとに用意され、夕食は宮城黒毛和牛のステーキを含む炭火の献立、朝食は棟で受け取るか本館の食事会場を選ぶ形です。温泉に浸かるなら本館の大浴場「蘭の湯」と庭苑野天風呂「明鏡」を使う構えで、棟の湯と温泉大浴場を分けて考える必要があります。離れという言葉の現代的な解として、棟数と設備が明快な一軒だと言えます。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、棟の独立性とデッキの湯に対する評価が中心を占め、次いで夕食の量と質への言及が続きます。評価件数は開業から日が浅いこともあって多くありませんが、点数は安定しています。一方で、屋外を歩いて本館へ向かう動線や、冬季の寒暖への言及も見られ、天候と季節に体験が左右される宿であることが読み取れます。旅館の設備を後ろ盾に持ちながら、滞在の中心は棟の内と外にある、という性格の宿です。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    棟ごとの湯と食事で完結させたい二人旅、旅館の大浴場も併せて使いたい滞在、犬を連れた旅(専用ドッグラン付きの棟あり)
  • 向かない:
    畳と障子の和室を求める旅、館内をすべて屋内で移動したい旅程、棟の露天風呂に温泉を期待する滞在(温泉は本館の大浴場)

具体情報

  • 所在: 宮城県仙台市太白区秋保町湯元字木戸保7-1(奥州秋保温泉 蘭亭に併設)
  • 棟数: ドーム客室10棟、直径7m、定員1〜5名
  • 棟の設備: 専用ウッドデッキ、檜の露天風呂、シャワールーム、室内の食事スペース、冷暖房
  • 温泉: 本館蘭亭の大浴場「蘭の湯」(畳敷き)と庭苑野天風呂「明鏡」を利用
  • 食事: 夕食は宮城黒毛和牛のステーキを含むバーベキュー、朝食は棟でのセットか本館の食事会場
  • 開業: 2022年9月グランドオープン
  • 送迎: 仙台駅東口 14:30発 / 蘭亭 10:00発(完全予約制)


4. 秋保 木の家ロッジ村 — 仙台市太白区・名取川沿い

名取川の河原に、十一坪から三十七坪までの木造ロッジ十四棟。一棟を丸ごと借りる素朴な離れです。

一棟貸しロッジ14棟、11.3坪〜37坪。平屋と二階建て。

目安価格 ¥13,000–¥27,000 / 泊 (2名1室・通常期)


秋保 木の家ロッジ村 — 仙台市太白区秋保町 · ロッジ群が面する名取川の渓と岩、色づく渓畔林
PHOTO: 秋保 木の家ロッジ村 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

名取川に沿って木造のロッジが点在し、一棟ごとに借りる形をとります。棟は十四。もっとも小さいGタイプが十二帖の平屋で十一坪余り、最大のZ3タイプは十八帖と二十四帖を並べた三十七坪です。中間には十四坪、十六坪、十八坪台の平屋、一階と二階に部屋を分けた二十三坪の二階建てがあり、坪数と間取りが棟ごとに公表されています。全棟に冷暖房が入り、室内にはガス調理台、屋外には薪の使える炉が置かれ、食事を自分たちで組み立てる滞在が前提です。数寄屋の離れとは対極にある素朴さですが、棟が分かれているという一点では最も徹底しています。

集約レビューの傾向

公開レビューデータの集計対象となる件数はまだ少なく、点数として読み取れる材料は限られます。掲載情報から読み取れるのは、日帰りの炉端利用や芋煮の会場としての性格が強く、宿泊は大人数の集まりを想定した棟が中心である、ということです。夫婦二人で使うなら、定員六名の小さな棟を選び、川に近い区画を指定するのが現実的な組み立てになります。評価の材料が薄いぶん、Media Picks Score も控えめな値にとどめています。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    食事も含めて自分たちで組み立てたい旅、名取川の河原で過ごす時間を主目的にする滞在、費用を抑えて一棟を借りたい旅程
  • 向かない:
    棟に湯と料理が備わる旅館の作法を求める旅、夜のもてなしを期待する滞在、共同の手洗いに抵抗のある旅程

具体情報

  • 所在: 宮城県仙台市太白区秋保町、名取川沿い。仙台駅から車で約30分
  • 棟数: 14棟(Cタイプ1・Dタイプ4・Eタイプ1・Fタイプ2・Gタイプ3・Z1・Z2・Z3 各1)
  • 広さ: 11.3坪(12帖・宿泊6名)〜37坪(18帖+24帖・宿泊22名)
  • 設備: 全棟冷暖房、室内ガス調理台と調理器具、屋外に薪の炉、共同の手洗い(洗浄機能付き)
  • ペット: Dタイプのうち2棟が同伴可(小型犬3頭、中・大型犬2頭まで)


よくある質問

Q. 秋保の湯はどのような泉質ですか。

A. ナトリウム・カルシウム塩化物泉で、低張性中性高温泉に分類されます。源泉温度は二十四度から六十度と幅があり、宿によって湯づかいが異なります。古くは「名取の御湯」と呼ばれ、有馬や道後と並べて数えられた記録が残る湯です。作並は広瀬川の源流に湧き、寛政八年の開湯と伝えられます。

Q. 作並温泉にも棟を分ける宿はありますか。

A. 今回、公表情報で確認した範囲では、作並の各館は客室を本館にまとめる構えで、母屋から棟を分けた離れの形式は確認できませんでした。作並は広瀬川の谷に湯船を下ろした露天風呂が特色で、棟の独立を求めるなら名取川側の秋保に候補が集まります。

Q. 寒露のころ、磊々峡はどのような景色になりますか。

A. 覗橋を中心に、深さ二十メートルの谷が約二キロメートル続きます。覗橋から下流へ六百五十メートルの遊歩道が整えられ、奇面巌や八間巌、時雨滝といった岩場と滝を辿れます。寒露から霜降にかけて岩肌の楓が日ごとに色を移し、夏に比べて水量が落ち着くため、淵の色が深く見える時期です。

Q. 仙台駅からどのように向かいますか。

A. 仙台駅西口から秋保温泉行きの路線バスで約四十五分から一時間、車では東北自動車道・仙台南インターチェンジから八キロメートルほどです。今回挙げた宿のうち茶寮宗園、櫻離宮、GLAMPSEASONは仙台駅東口発の送迎を用意しており、いずれも予約制です。

Q. 離れは夫婦二人でも利用できますか。

A. 茶寮宗園の離れと櫻離宮の客室は二名からの利用を前提とした設えです。GLAMPSEASONの棟は定員一名から五名、木の家ロッジ村は棟ごとに定員六名から二十四名までの幅があり、二人旅では小さい棟を選ぶ組み立てになります。

本記事の参考情報

・秋保温泉旅館組合 — 加盟各館の客室数・設備の公表情報
・せんだい旅日和(仙台観光国際協会) — 秋保温泉のエリア情報
・仙台作並温泉旅館組合 — 作並温泉の歩みと加盟館
・Wikipedia: 磊々峡 — 峡谷の規模と命名の経緯

編集部から

棟を分ける、という選択は、宿にとって効率のよいものではありません。廊下でつながらない客室は、配膳にも清掃にも人手を要します。それでも秋保に離れが残り、新しい形の独立棟が加わってきたのは、この湯が湯治場として始まり、谷に沿って敷地を広く取れたからでしょう。数寄屋の離れ、渓に臨む離れ宿、森に離したドーム、河原の木造ロッジ。四軒の造りはまるで違いますが、扉を閉めれば二人だけになる、という一点で共通しています。寒露から霜降へ、谷の色が変わる短い時期に、どの棟で川音を聞くか。次は作並の湯づかいと、広瀬川の谷に下ろされた露天風呂を辿ってみたいと考えています。

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