師走の八ヶ岳西麓で、離れと独立棟に二泊して冬至の朝を迎える旅程として、編集部は茅野・山浦の古民家「花兎」、原村のログコテージ「enukoti」、富士見の「古民家宿コロク」の三軒を選びました。いずれも一日一組、あるいは一棟ごとに鍵を預かる宿です。夕食も湯も宿の外に求める旅になりますが、そのぶん集落の夜の静けさと、冷え込んだ高原の空気をそのまま受け取れます。2026年の冬至は12月22日。日の出は6時52分、日の入りは16時37分(国立天文台・甲府の暦)で、一年でいちばん短い昼をはさむ二泊三日を、中央線の特急で茅野に入り、小淵沢から帰る道筋で組み立てました。
| # | 宿 | エリア | 棟 | 目安価格 | 1行特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | ヤマウラステイ 花兎 | 茅野市(山浦) | 1棟 | ¥46k前後 | 一日目。本宅「清水」の離れとして建てられた、ご隠居の家を一棟で借りる |
| 2 | enukoti | 原村 | 2棟 | ¥35–¥36k | 二日目。標高1,200mのフィンランドログ、室内に専用サウナ |
| 3 | 古民家宿コロク | 富士見町 | 1棟 | ¥63–¥76k | 二日目の別案。築約100年の古民家、寝室ごとのペレットストーブ |
※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1棟あたり料金(税込)です。
一日目 — 茅野で国宝の土偶に会い、山浦の離れに灯をともす
新宿から特急あずさで茅野まではおよそ2時間。午前のうちに茅野に着けば、まず尖石縄文考古館へ向かいます。国宝の土偶「縄文のビーナス」と「仮面の女神」が実物で並ぶ館で、開館は9時から(入館は16時30分まで)、月曜と年末年始(12月28日〜1月4日)は休館です。日曜の12月20日に入る組み立てなら、休館日に当たりません。
湯は、蓼科まで足を延ばして蓼科温泉共同浴場で済ませておく手があります。営業は11時から20時30分、年中無休、大人600円。宿に湯船はあっても温泉ではないため、高原の湯に一度浸かってから山浦に入ると、夜の冷え込みがやわらぎます。花兎へは、茅野駅の観光案内所からスタッフの車で送ってもらえます。チェックインは14時30分か16時のどちらか。冬至前の日没は16時半すぎで、16時の便を選ぶと、集落に着くころに八ヶ岳の稜線が暮れていきます。
1. ヤマウラステイ 花兎 — 茅野市・山浦
本宅に寄り添って建つ、一家のご隠居の家。八ヶ岳西麓の隠れ里で、二人だけで鍵を預かる離れです。
1棟(2名定員)、築100年以上の古民家を改修した一棟貸し。
目安価格 ¥46,000 前後 / 泊 (2名1棟・素泊まり・通常期)

なぜ選ばれるか
家が、そのまま離れの由来を語る宿です。花兎は、開村にかかわった一族の本宅「清水」のすぐ隣に、その離れとして建てられました。ご隠居が暮らした家で、延床61㎡、定員は2名。改修は古民家再生で知られるアレックス・カーのプロデュースによるもので、黒く燻された柱や梁を残しながら、風呂や台所を今の暮らしに合わせて整えています。窓の外には鏝絵の残る蔵と集落の景色。運営は茅野市の観光まちづくり推進機構で、集落の人に郷土の料理を教わる体験も宿泊に組み合わせられます。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計したところ、花兎を含むヤマウラステイの各棟は件数がまだ少なく、傾向を言葉にできる段階にはありません。そのため本記事のスコアは、建物の来歴、離れという形式そのものが残っていること、駅送迎の手厚さといった編集部の評価を主な根拠にしています。注意したいのは、宿の外へ出る手間です。徒歩圏に飲食店やコンビニはほとんどなく、夕食は宿が手配する仕出しや郷土料理体験、タクシーで出かける外食から選ぶことになります。
向く人 / 向かない人
-
向く:
夫婦や二人連れの静かな旅、古民家の建築や集落の暮らしに関心のある人、車を使わず駅送迎で動きたい人 -
向かない:
3名以上の旅(隣の「清水」は6名まで泊まれる)、温泉の湯船を宿で求める人、テレビや浴衣など旅館の備えを前提にする人(いずれも用意なし)
具体情報
- 所在地: 長野県茅野市湖東(山浦地区の集落内)
- アクセス: JR茅野駅の観光案内所から宿の車で無料送迎(チェックアウト時も駅まで)
- 広さ: 延床61㎡、敷地104㎡、定員2名、駐車場1台
- チェックイン: 14:30 または 16:00 から選択 / アウト 〜10:00
- 食事: 素泊まり(仕出し、郷土料理体験、外食手配あり。郷土料理体験は7日前までに予約)
- 建物: 築100年以上。館内は火気使用不可で、調理はIHコンロ
二日目 — 八ヶ岳西麓を南へ、蕎麦をたぐって冬至前夜の棟へ
花兎を10時に出て駅まで送ってもらい、ここからは茅野駅前でレンタカーを借りると動きやすくなります。二泊目の宿はどちらも駅からの送迎がなく、原村も富士見も車がないと身動きが取りにくい土地です。昼は蕎麦にします。原村の「手打ちそば 一八」は八ヶ岳山麓産の玄そばを石臼で挽き、十割と二八を打ち分けます。休みは店の休業カレンダーで確かめてから向かいます。富士見に抜けるなら、乙事の「そば処 おっこと亭」が地元産の玄そばを完全手打ちで出し、12月から3月は11時から15時、木曜が定休です。
二泊目は、原村のログコテージか、富士見の古民家かを選びます。サウナを室内で気兼ねなく使い、湯上がりをテラスで過ごしたいならenukoti。古材の家に寝室ごとのストーブが燃える夜を選ぶならコロク。どちらも夕食は付かないため、昼のうちに直売所やパン屋で食材を整えておきます。
2. enukoti(エヌコティ) — 原村
標高1,200mの原村に二棟だけ。室内の専用サウナで温まり、冬至前夜をフィンランドログの棟にこもって過ごす一軒です。
2棟、各棟39.7㎡のサウナ付きログコテージ。
目安価格 ¥35,000–¥36,000 / 泊 (2名1棟・素泊まり・10〜11月の公開分)

なぜ選ばれるか
棟が、冬の夜の過ごし方を決めてくれる宿です。2023年夏に原村深山で開いた二棟のコテージで、どちらも天井の高いリビングに小上がりのベッドとロフト、台所、浴室と別に、フィンランド式のサウナ(1〜2名用)を室内に備えます。宿の説明によれば、ログは断熱と蓄熱に優れ、冬でも室内は暖かいとのこと。29.12㎡のテラスには専用のガスグリルがあり、昼に仕入れた地の野菜を焼けます。棟は二つきりで、隣を気にせずに夜を過ごせます。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計したところ、開業から日が浅く件数が少ないため、傾向を語るには早い段階です。本記事では、独立棟であること、室内に専用サウナがあること、標高1,200mという星に近い立地を主な根拠に評価しました。一方で、利用は小学生以上に限られ、ペットも泊まれません。テラスを含め焚き火や花火は禁じられているので、薪の火を囲む夜を期待すると肩透かしになります。
向く人 / 向かない人
-
向く:
サウナを二人だけで使いたい夫婦、自炊やグリルで夕食を整えたい人、車で八ヶ岳南麓をめぐる旅程 -
向かない:
未就学児連れの家族(小学生以上に限る)、公共交通だけで動く旅(駅送迎の案内なし)、旅館の夕食を求める人
具体情報
- 所在地: 長野県諏訪郡原村深山(標高約1,200m)
- アクセス: 中央道 諏訪南ICから車で約10分(5.8km)
- 広さ: 各棟39.7㎡+テラス29.12㎡、定員2〜4名
- チェックイン: 15:00〜23:00 / アウト 〜10:00
- 食事: 素泊まり(台所とテラスの専用ガスグリルで自炊)
- 駐車場: 無料(予約不要)
- 開業: 2023年夏
3. 古民家宿コロク — 富士見町(二日目・別案)
築約100年の農家を建築家が改修した一棟貸し。寝室ごとのストーブの火を眺めて眠る、富士見の古民家です。
1棟、古民家一棟貸し(貸切サウナ付き)。
目安価格 ¥63,000–¥76,000 / 泊 (2名1棟・通常期)

なぜ選ばれるか
火が、冬の古民家の「がまん」を解いてくれる宿です。八ヶ岳南麓の農村に建つ築約100年の古民家を、環境建築家の彦根アンドレアが設計し、2024年4月に宿として開きました。宿はガスや石油を使わず、暖房は木質ペレット。英語版の案内によれば、檜の寝室と和紙の寝室にそれぞれストーブがあり、火を眺めながら眠りにつけます。かつての土間は広い台所と食卓に、囲炉裏の跡は石のテーブルに。畑と庭の向こうには甲斐駒ヶ岳が見えます。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計したところ、開業から日が浅く件数が少ないため、傾向を語れる段階にはありません。評価は、建物の改修の質と、冬の寒さに正面から向き合った設計思想を主な根拠にしています。ただし浴室はシャワーのみで、湯船はありません。宿自身が近くの温泉を使うよう案内しており、小淵沢の延命の湯などと組み合わせる前提で考えたい宿です。価格は金・土曜に1万円ほど上がり、12月20日以降の年末期は¥85,000前後まで上がる傾向が見て取れます。冬至前夜に泊まるなら、その水準を見込んでおくのが無難です。
向く人 / 向かない人
-
向く:
古民家の改修や建築に関心のある人、貸切サウナと外気浴を冬の山景色の中で楽しみたい人、小淵沢から特急で帰る旅程 -
向かない:
宿で湯船に浸かりたい人(シャワーのみ)、駅送迎を前提にする人(送迎なし)、ペット連れ
具体情報
- 所在地: 長野県諏訪郡富士見町境
- アクセス: 新宿から特急で小淵沢駅まで約120分、駅からタクシーで約15分(中央道 小淵沢ICから約15分)
- チェックイン: 15:00〜21:00 / アウト 〜10:00
- 食事: 夕食なし(台所で自炊か近隣で外食)。朝は地元「やまゆり」のパンをせいろで蒸す
- サウナ: 檜の箱型サウナ(約65〜75℃)と五右衛門風呂の水風呂。宿泊者は3時間利用
- 駐車場: 敷地内1台、近隣3台
- 開業: 2024年4月(築約100年の古民家を改修)
三日目 — 冬至の朝日を見送り、井戸尻から小淵沢へ
12月22日、冬至の日の出は6時52分。前夜に暗がりの40分を見届けたなら、そのまま東の空が明けるのを待ちます。チェックアウトの10時までは、湯を沸かして朝食をとり、もう一度ストーブやサウナの火で体を温める時間です。
宿を出たら、富士見町の井戸尻考古館に寄ると、一日目の尖石と縄文の線がつながります。井戸尻遺跡群の土器や石器を収め、縄文の農耕や土器の文様に込められた世界観を読み解く館です。開館は9時から17時、休みは月曜と祝日の翌日、年末年始。冬至の22日は火曜で開いています。湯は、小淵沢駅からタクシーで5分ほどのスパティオ小淵沢「延命の湯」へ。源泉は45.8℃、毎分190リットルが湧き、営業は10時から22時です。体を温めて、小淵沢から特急で東京に戻ります。名古屋や松本へ帰る旅なら、中央本線を西へ進み、塩尻・桔梗ヶ原のワイナリーに寄る道筋も描けます。
よくある質問
Q. 冬至前夜に星はよく見えますか?
A. 2026年12月21日は月齢12で、月は翌朝4時38分まで沈みません。暗い空が戻るのは、月が沈んでから空が白みはじめる5時20分ごろまでのおよそ40分です。星を主な目的にするなら、月が21時ごろまでに沈む12月14日前後(ふたご座流星群の極大)が、条件の上で勝ります。
Q. 車がなくても回れますか?
A. 一日目の花兎は茅野駅の観光案内所から無料送迎があり、車がなくても泊まれます。二日目のenukotiとコロクは送迎の案内がなく、集落も離れているため、二日目に茅野駅前でレンタカーを借りる組み立てが現実的です。コロクは小淵沢駅からタクシーで約15分です。
Q. 宿に温泉はありますか?
A. 三軒とも温泉の浴場はありません。花兎とenukotiには浴室があり、enukotiとコロクにはサウナがあります。コロクはシャワーのみです。温泉は、一日目に蓼科温泉共同浴場(11時〜20時30分、年中無休)、三日目に小淵沢の延命の湯(10時〜22時)を組み込むと補えます。
Q. 子ども連れでも泊まれますか?
A. 花兎は定員2名で、二人旅のための家です。家族で泊まるなら、同じ敷地に建つ本宅「清水」(定員6名)が候補になります。enukotiは小学生以上に限られます。コロクは子どもの年齢制限を公式サイトで明示していないため、予約前に問い合わせて確かめるのが確実です。
Q. 冬の道は雪で危なくありませんか?
A. 八ヶ岳西麓は寒さが厳しい一方、雪は比較的少ない土地ですが、12月から2月は氷点下5〜10度まで冷え込み、路面の凍結はあり得ます。レンタカーは冬用タイヤ装着を確認し、日没(16時37分ごろ)までに宿に着く行程にしておくと安心です。
本記事の参考情報
- 国立天文台 暦計算室:令和8年(2026)暦要項 二十四節気 — 冬至の日時
- 国立天文台 暦計算室:2026年12月 月の出入り(甲府) — 月の出・月の入り・月齢
- 国立天文台 暦計算室:2026年12月 日の出入り(甲府) — 冬至前後の日の出・日の入り
- 国立天文台:ふたご座流星群が極大(2026年12月) — 極大日時と月明かりの条件
- 茅野市:尖石縄文考古館 開館時間・休館日・観覧料
- Go! NAGANO:長野県茅野市に伝わる食文化“凍み”を訪ねる — 天然寒天と冬の冷え込み
- 茅野商工会議所:寒天の里 — 寒天づくりの発祥と歴史
- ちの旅:蓼科温泉浴場 — 営業時間・料金
- スパティオ小淵沢:延命の湯 — 泉質・湧出量・営業時間
- ヤマウラステイ:利用案内ページ — 送迎・チェックイン・料金
編集部から
三軒に共通するのは、宿が夕食も湯もすべては抱え込まず、旅人を土地へ送り出すことです。花兎は集落の料理と駅からの送迎で、enukotiは室内のサウナと台所で、コロクはストーブの火と近くの湯で、それぞれに冬の夜を預けてきます。一年でいちばん長い夜を、旅館の膳ではなく、借りた家の灯りの下で過ごす。その手触りは、冬至という節目にこそ似合うと編集部は考えます。一週間早めて流星の夜に合わせるか、冬至の朝日を取るか。あなたなら、どちらの夜を選ぶでしょうか。