霜月を前に、紅葉が江合川の谷を少しずつ下りてくる鳴子温泉郷で、鳴子・東鳴子・川渡・中山平・鬼首の五つの湯場から一軒ずつ、編集部が選んだ湯宿五軒を紹介します。旧来の泉質名で数える十一種のうち九種がこの谷に湧くとされ、隣り合う湯場でも湯の色と肌ざわりがまるで違います。本稿では、各宿の源泉と泉質、湯治や自炊の受け入れ方、客室数と目安価格を宿ごとに整理しました。夜通し湯守が見張る自噴泉の大きな宿から、当面四室に絞って営む渓流沿いの一軒宿まで、規模は違えど、いずれも湯を主役に据えて代を重ねてきた宿です。紅葉の宿として、また冬の湯治の下見として読める構成にしています。

# 宿 湯場 客室 目安価格 1行特徴
1 鳴子ホテル 鳴子温泉 115 ¥21–¥40k 自噴泉3本、湯色が透明から乳白、緑へと移ろう明治6年創業の宿
2 旬樹庵 琢ひで 中山平温泉 14 ¥30–¥36k pH8.9〜9.4の「うなぎ湯」を八つの湯船で巡る小さな秘湯宿
3 藤島旅館 川渡温泉 20 — 慶長元年から湯守を務め、自炊の部で長逗留を受け入れる古湯の宿
4 とどろき旅館 鬼首温泉(轟) 4 ¥28–¥29k 荒雄川を見下ろす露天「荒湯」と、当面四室に絞った静かな一軒宿
5 旅館勘七湯 東鳴子温泉 30 ¥9–¥11k 天明4年創業、湯治部15室と共同自炊場を今も構える東鳴子の宿
↕︎ 地図右下の角をドラッグすると高さを調整できます


※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。

1. 鳴子ホテル — 大崎市・鳴子温泉

敷地の自噴泉3本の湯が、外気と湿度で透明から乳白、緑へと色を変える。鳴子の湯場の中心で明治6年から続く宿です。

115室、大型温泉旅館。

目安価格 ¥21,000–¥40,000 / 泊 (2名1室・通常期)


鳴子ホテル — 大崎市鳴子温泉 · 自噴泉3本の硫黄泉が緑がかった色を見せる大浴場
PHOTO: 鳴子ホテル — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

湯が、この宿の主役です。敷地内に掘られた3本の源泉は自噴泉で、地上に出た時点で百度を超えます。いったんタンクで外気にさらして八十度まで冷まし、湯船に落ちる頃には四十二度前後。この温度管理を五人の湯守が昼夜交代で受け持っています。泉質は含硫黄-ナトリウム-硫酸塩・塩化物・炭酸水素塩泉、pH8.7の弱アルカリ性。夜の玉の湯は乳白色、朝の芭蕉の湯は青みを帯びると宿自身が書いており、同じ湯でも色が一日のうちに移ろいます。鳴子温泉駅から歩いて五分ほどで、湯場めぐりの起点に置きやすいことも推す理由です。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、評価の中心は湯そのものです。温泉と湯質への言及が厚く、色の変わる硫黄泉を目当てに泊まる人が多いと読み取れます。朝夕のブッフェに触れる声も多く、郷土料理を並べた品揃えへの満足が目立ちます。一方で、客室の古さを指摘する声が一定数あり、館内のにおいに触れる例も見られます。百十五室を抱える大型の宿らしく、静けさよりも湯量と食事の安定感が評価されている宿と言えます。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    硫黄泉の色の移ろいを朝夕で見比べたい人、駅から歩いて湯場をめぐる旅程、三世代や仲間うちでの紅葉旅
  • 向かない:
    少人数の宿の静けさを求める人(115室の大型旅館)、食物アレルギーへの個別対応が必要な人(宿が対応不可と明記)

具体情報

  • 最寄り駅: JR陸羽東線 鳴子温泉駅から徒歩約5分
  • 源泉: 自家源泉3本(自噴泉)、源泉かけ流し。泉質は含硫黄-ナトリウム-硫酸塩・塩化物・炭酸水素塩泉、pH8.7
  • 客室: 青葉館・紅葉館に計115室。洋室29.8㎡〜和洋室50㎡、紅葉館には露天足湯付の客室あり
  • チェックイン: 15:00〜(最終19:00) / アウト 〜10:00
  • 食事: 夕朝食ともブッフェ「みちのくバイキング」、会席膳のプランもあり
  • 創業: 1873年(明治6年)
  • 駐車場: 100台・無料


2. 旬樹庵 琢ひで — 大崎市・中山平温泉

pH9前後のとろりとした「うなぎ湯」を、十四室の宿で八つの湯船に分けて巡る。中山平の湯の性格がいちばん素直に伝わる一軒です。

14室、温泉旅館(日本秘湯を守る会 会員)。

目安価格 ¥30,000–¥36,000 / 泊 (2名1室・通常期)


旬樹庵 琢ひで — 大崎市中山平温泉 · 石灯籠と岩組みに囲まれた混浴露天風呂「長生の湯」
PHOTO: 旬樹庵 琢ひで — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

中山平の湯は、肌にまとわりつくような手ざわりから「うなぎ湯」と呼ばれてきました。琢ひでの自家源泉は含硫黄-ナトリウム-炭酸水素塩・硫酸塩泉で、pHは8.9〜9.4。宿はこの湯が、アルカリ性・硫黄泉・炭酸水素塩泉・硫酸塩泉という四つの性質を兼ねると説明しています。推す理由は三つあります。湯船が館内外に八つあり、二十四時間かけ流しで入れること。湯の色が透明から緑、冬には白濁へと変わること。そして十四室という規模のおかげで、湯船を独り占めできる時間が長いことです。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、湯質への評価が群を抜いて厚く、とろみのある湯の感触がこの宿の印象を決めていることが分かります。料理への言及もそれに次いで多く、地の素材を使った品数の多い朝食に触れる声が目立ちます。応対の丁寧さを挙げる声も安定しています。一方で露天風呂については賛否が分かれ、混浴であることや時間帯による男女入れ替えに戸惑う例が見られます。客室の古さを指摘する声も少数あります。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    アルカリ性の湯の肌ざわりを確かめたい人、館内で湯船を巡りながら一日を過ごしたい夫婦旅、鳴子峡の紅葉を目当てにする旅程
  • 向かない:
    鉄道だけで移動したい人(最寄りの中山平温泉駅は運休区間内で、宿の送迎もなし)、混浴露天に抵抗がある人(男女別の露天は時間帯での入れ替え制)

具体情報

  • 最寄り駅: 現在はJR鳴子温泉駅が実質の最寄り(中山平温泉駅は運休区間内)。送迎はなく、宿がタクシーを手配(片道約2,300円、1週間前までに連絡)
  • 源泉: 自家源泉、源泉かけ流し100%。含硫黄-ナトリウム-炭酸水素塩・硫酸塩泉、pH8.9〜9.4
  • 湯船: 鶴の湯・亀の湯・長生の湯など館内に8か所、24時間入浴可(清掃時間を除く)
  • 客室: 全14室(専用露天付特別室1、コネクティング和洋室2、バリアフリー洋室1、和室7、別棟3)
  • チェックイン: 13:00〜15:00(プランにより異なる) / アウト 〜10:00
  • 駐車場: 無料・約30台


3. 藤島旅館 — 大崎市・川渡温泉

慶長元年から川渡の湯守を務めてきた二十室の宿。今も自炊の部で、三泊以上の湯治を受け入れています。

20室、湯治宿・旅館。


藤島旅館 — 大崎市川渡温泉 · 雨上がりの夜に灯がともる木造の湯治宿の外観
PHOTO: 藤島旅館 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

川渡は古くから「脚気川渡」とうたわれた湯場で、藤島家は1596年(慶長元年)から、仙台藩領のこの地で湯守として宿を営んできたと記録に残ります。宿の湯「真癒の湯」は四本の源泉を合わせたもので、含重曹芒硝-硫黄泉、源泉温度58.0℃、pH7.4の中性です。推す理由の第一は、沸かし湯を使わない天然の湧出温泉だけで四つの浴槽を満たしていること。第二は、ガスと水道を備えた自炊の部を今も残していること。第三は、宿の北側に温泉石神社が建ち、藤島家の当主が代々その世話役を務めてきたことです。湯と信仰と宿が一つの家に重なっています。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると総合評価は高い水準にあり、湯の良さと素朴な宿の佇まいが評価の軸になっていることがうかがえます。湯上がりに温もりが長く続くという宿の説明どおり、硫黄の香る中性の湯そのものが評価の中心にある宿です。一方で、建物の古さや設備の簡素さは、湯治宿という性格をそのまま映しています。快適さよりも湯の確かさと滞在の自由を優先する人に支持されている宿と言えます。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    三泊以上の自炊湯治を試したい人、硫黄泉を日帰りで繰り返し浴びたい近隣の人、湯守の家の歴史に関心がある人
  • 向かない:
    上質な設えや会席料理を求める人(素朴な湯治宿の造り)、全室トイレ付きを前提にする人(共同トイレの部屋あり)

具体情報

  • 最寄り駅: JR陸羽東線 川渡温泉駅(宿泊客は駅まで送迎あり、予約時に依頼)。古川ICから車で約30分
  • 源泉: 4源泉の混合泉「真癒の湯」。含重曹芒硝-硫黄泉(中性)、pH7.4、源泉温度58.0℃。浴槽4か所(大浴場・中浴場ほか)
  • 自炊の部: 5室、3泊から。1泊1名6,120円(2名1室は1名5,570円、税・入湯税込)。電話予約のみ
  • チェックイン: 14:00〜 / アウト 〜11:00
  • 創業: 1596年(慶長元年)
  • 駐車場: 乗用車50台。日帰り入浴は年中無休 7:00〜22:00


4. とどろき旅館 — 大崎市・鬼首温泉(轟温泉)

荒雄湖の最上流、杉木立の中に湧く轟温泉の一軒宿。当面四室に絞り、露天「荒湯」で川音を聞く湯宿です。

4室(当面)、一軒宿の温泉旅館。

目安価格 ¥28,000–¥29,000 / 泊 (2名1室・通常期)


とどろき旅館 — 大崎市鬼首 轟温泉 · 湯気の立つ岩組みの混浴露天風呂「荒湯」と庭の木々
PHOTO: とどろき旅館 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

鬼首は鳴子温泉郷のいちばん奥、栗駒国定公園の中にある湯場です。とどろき旅館は鳴子温泉駅から約十三キロ、鳴子ダムの荒雄湖の最上流の岸辺に建ちます。湯は単純温泉で、低張性・弱アルカリ性の高温泉を源泉かけ流しで使っています。無色透明で匂いもなく、硫黄泉の多い鳴子にあって、刺激の少なさが際立つ湯です。十五人から二十人が入れる混浴露天「荒湯」(脱衣所は男女別)と、二、三人向けの貸切露天「木もれびの湯」を持ちます。客室は当面四室に限り、二名までなら夕食は部屋で出すという、小ささを生かした運営を推したい一軒です。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、露天風呂への評価が最も厚く、次いで料理、貸切風呂の順に言及が集まります。山菜やきのこなど地元の食材を手作りで出す夕食が、湯と並ぶ印象として残っているようです。宿の主人の応対に触れる声も見られます。目立った不満の傾向は確認できませんでしたが、母数は大きくありません。売店やカラオケは置かず、カードも使えないため、山の一軒宿の不便を承知のうえで静けさを選ぶ人の宿と言えます。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    川音を聞きながら露天に長く浸かりたい人、硫黄の匂いが苦手で柔らかい単純温泉を好む人、間歇泉や鬼首の紅葉と組み合わせた車の旅
  • 向かない:
    ネット予約やカード払いを前提にする人(電話予約・現金のみ)、公共交通だけで動きたい人(送迎なし、町営バスで約20分)

具体情報

  • 最寄り駅: JR鳴子温泉駅から約13km。町営バスで約20分「轟温泉・とどろき旅館前」下車、車なら約15分。送迎なし
  • 源泉: 単純温泉(低張性弱アルカリ性高温泉)、源泉かけ流し、無色透明
  • 浴場: 混浴露天「荒湯」(15〜20人規模)、貸切露天「木もれびの湯」、男女別内湯
  • 客室: 当面4室限定(8名以上で貸切可)
  • 食事: 1泊2食付 大人13,900円〜(税・入湯税込)。夕食は2名まで部屋食、朝食は広間
  • 予約・支払: 電話予約のみ(0229-86-2311)、カード不可


5. 旅館勘七湯 — 大崎市・東鳴子温泉

天明4年創業、七代目が営む東鳴子の宿。三十室の半分を湯治部に充て、一泊からの湯治を受け入れています。

30室(旅館部15・湯治部15)、湯治宿・旅館。

目安価格 ¥9,000–¥11,000 / 泊 (2名1室・通常期/素泊まり中心の水準。2食付は2名で2万円前後)


旅館勘七湯 — 大崎市東鳴子温泉 · 深い色の重曹泉を湛えた小浴室「薬湯・不老泉」
PHOTO: 旅館勘七湯 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

東鳴子は、江戸時代に伊達家岩出山城主の療養地として栄え、仙台藩主専用の「御殿湯」が置かれた湯場です。勘七湯の創業は1784年(天明4年)で、伊達公から拝領したと伝わる袱紗を今も館内に展示しています。湯は二系統あり、大浴室はナトリウム-炭酸水素塩・塩化物・硫酸塩泉、古くから「赤梅の湯」として親しまれてきた小浴室「薬湯・不老泉」はナトリウム-炭酸水素塩泉(旧泉名・重曹泉)です。どちらもかけ流しで二十四時間入れます。湯治部の十五室には流し・電気調理器・冷蔵庫を備え、共同の自炊場もあります。一人で一泊二日の湯治ができるよう間口を広げていることも、推したい理由です。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、最も厚いのは宿の主人と家族への評価で、温泉と湯質への言及がそれに続きます。家族と数人の従業員で切り盛りする宿らしく、応対の温かさが滞在の印象を決めているようです。一方で、客室の古さ、駐車場の使いにくさ、清掃の行き届き方を指摘する声が一定数見られ、設備面は人を選びます。湯と人柄を目当てにする人、湯治宿の簡素さを承知のうえで泊まる人に支持されている宿と言えます。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    一泊からの湯治を試したい一人旅、二系統の湯を浸かり比べたい人、予算を抑えて連泊したい人
  • 向かない:
    新しい客室や上質な設えを重視する人(建物は年季が入っている)、露天風呂を必須とする人(浴場は内湯のみ)

具体情報

  • 最寄り駅: JR陸羽東線 鳴子御殿湯駅(古川駅から陸羽東線で約45分)。仙台駅からの高速バス(仙台〜鳴子線)は2025年10月から運休中
  • 源泉: 2系統、かけ流しで24時間入浴可。大浴室 ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物・硫酸塩泉/小浴室 ナトリウム-炭酸水素塩泉
  • 客室: 30室(旅館部15・湯治部15)、6畳・8畳の和室。エレベーターあり
  • 料金: 1泊2食付 1名8,640円〜(税込、入湯税別)。夕食・朝食とも欠食可
  • 創業: 1784年(天明4年)
  • 駐車場: 50台。キッズスペース、コインランドリーあり


よくある質問

Q. 鳴子温泉郷には本当に九種類の泉質があるのですか?

A. 鳴子温泉郷観光協会の整理では、旧来の泉質名で数える十一種のうち、単純炭酸泉と放射能泉を除く九種がこの温泉郷にあります。2014年に改められた現行の掲示用泉質名(十種)でいえば、二酸化炭素泉・含よう素泉・放射能泉を除く七種です。本稿の五軒だけでも、硫黄泉、重曹泉系、単純温泉と性格の違う湯が揃います。

Q. ベストシーズンはいつですか?

A. 編集部が推す時期は、鳴子峡の紅葉が谷を染める例年10月下旬から11月上旬です。この時期は週末から埋まり、目安価格も上がります。師走に入ると雪の季節を迎え、湯治客が中心の静かな湯場に戻ります。鬼首など山側の宿へ冬に向かう場合は、積雪を前提に車の装備を整えておくと安心です。

Q. 湯治や長期滞在はできますか?

A. 本稿では二軒が自炊湯治に対応しています。勘七湯は湯治部15室に流し・電気調理器・冷蔵庫を備え、共同の自炊場もあり、一人一泊からの湯治を受け付けています。藤島旅館の自炊の部はガスと水道付きの5室で、3泊以上・電話予約のみ、1泊1名6,120円(2名1室なら1名5,570円)です。

Q. 電車で行けますか?

A. 東北新幹線の古川駅から陸羽東線で鳴子御殿湯駅・鳴子温泉駅まで約45分です。ただし鳴子温泉〜新庄間は2024年7月の豪雨以降運休が続いており、JR東日本は2028年度中の運転再開を見込んでいます。この区間にある中山平温泉駅は使えないため、琢ひでへは鳴子温泉駅からタクシー、とどろき旅館へは町営バスで約20分です。

Q. 子連れでも泊まれますか?

A. 鳴子ホテルは紅葉館に和室と洋室のコネクティング客室があり、三世代旅行にも向きます。勘七湯はキッズスペースを設け、未就学児の料金区分も細かく定めています。琢ひではコネクティング和洋室が2室あります。とどろき旅館は子ども料金を大人の6割・8割の二段階で設定しています。混浴の露天がある宿では、入浴の時間帯を確かめておくと安心です。

本記事の参考情報

・鳴子温泉郷観光協会「温泉」 — 五つの温泉エリアの特徴と泉質の新旧対照
・鉄道ファン・railf.jp(2026年7月9日) — 陸羽東線 鳴子温泉〜新庄間の復旧見通し
・Wikipedia: 鳴子温泉郷 — 温泉郷の歴史と地理の背景

編集部から

五つの湯場は江合川とその支流に沿って並び、車なら一時間足らずで端から端まで行けます。それでも湯の性格はまるで違います。鳴子の硫黄泉は色を変え、中山平の湯はとろみを帯び、川渡の湯には硫黄の香りが立ちます。東鳴子には重曹泉の系譜が続き、鬼首の単純温泉はどこまでも柔らかい。五軒に共通するのは、湯を自前で守り、その性格をごまかさずに差し出していることです。そして勘七湯と藤島旅館が今も自炊の部屋を灯していることは、湯治という習いがこの谷で途切れていない証でもあります。紅葉の一夜から始めて、次は雪の季節に三泊の湯治を試してみる。そんな二度目の鳴子を、どの湯場で過ごしますか。

次に読むなら