長月の東北で、創業から三百年を越えてなお同じ家が湯を守り続ける宿として、編集部が選んだ六軒を紹介します。宮城・山形・青森・秋田・福島の湯場に建つ、十六世紀後半から十八世紀初めにかけて始まった湯宿です。創業年、いまの当主が何代目にあたるか、先代から受け継いだ建物、そしてこの十年ほどで手を入れた改修と保存。この四つを軸に、名旅館の現在を東北横断で読み解きます。
選定にあたっては、各宿の公式サイトに記された創業の記録を一軒ずつ確かめ、あわせて公開レビューデータを集計して、湯と食と接客の評価が安定している宿を残しました。岩手県からも候補を探しましたが、鉛温泉の藤三旅館は一族が湯を守った歴史を十五世紀まで遡る一方、旅館としての開業は1786年と公式に記されています。本稿の「創業三百年」の線には届かないため今回は見送り、福島県から二軒を選んでいます。
| # | 宿 | エリア | 客室 | 目安価格 | 1行特徴 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 湯主一條 | 宮城県白石市・鎌先温泉 | 24 | ¥70–¥114k | 20代目が継ぐ湯守の家。木造本館は国の登録有形文化財 | |
| 2 | 深山荘 高見屋 | 山形県山形市・蔵王温泉 | 19 | ¥57–¥80k | 1716年創業。当主が「彌平治」を襲名し、自家源泉3本を守る | |
| 3 | 椿館 | 青森県青森市・浅虫温泉 | 25 | ¥45–¥59k | 1687年の文献に記された「つばきの湯」。いまは19代目 | |
| 4 | 鶴の湯温泉 | 秋田県仙北市・乳頭温泉郷 | 89 | — | — | 元禄期から湯宿の記録。茅葺きの本陣と四つの源泉 |
| 5 | 安達屋 | 福島県福島市・高湯温泉 | 20 | ¥61–¥75k | 1607年に初代が湯を開いた菅野家の宿。2025年に浴場を一新 | |
| 6 | 古滝屋 | 福島県いわき市・いわき湯本温泉 | 54 | ¥23–¥42k | 1695年創業、16代目。館内9階に原子力災害考証館 |
※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。
1. 湯主一條 — 宮城県白石市・鎌先温泉
仙台藩から「湯守」を任された家が、20代目のいまも鎌先の湯を守る。東北の名旅館を語るなら、まずこの一軒です。
24室、温泉旅館。
目安価格 ¥70,000–¥114,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
湯が、この家の歴史そのものです。宿の記録によれば、桶狭間の戦いの後に京から白石へ来た一條市兵衛が、洪水で荒れていた鎌先の湯を自費で復活させ、宿を開きました。藩政期には仙台藩から温泉を管理する「湯守」の役を代々任され、やがて「永湯守」と呼ばれるようになります。家は長男が継ぐ習いで、当主はいま20代目。大正から昭和にかけて建てられた木造三階建ての本館は、2016年に木造2棟と土蔵とともに国の登録有形文化財となりました。古い本館を残したうえで客室棟を磨き上げる。その両立が、首位に推す理由です。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、夕食と朝食への評価がとりわけ高く、接客と清潔感がそれに続きます。料理が滞在の中心にある宿と読み取れます。一方で料金に対する評価は、ほかの項目に比べて控えめです。スイートを中心に価格帯が上がるため、記念日の一泊として構える人と、湯治の延長として訪れる人とで受け止め方が分かれる傾向が見て取れます。立地は温泉街の最奥にある坂の上で、車を宿の前まで入れられない点も評価を分ける要素です。
向く人 / 向かない人
-
向く:
夫婦の記念日の旅、古い建物と文書の話に耳を傾けたい人、仙台から近い範囲で湯と食事を両方とも重視する旅程 -
向かない:
費用を抑えたい湯治目的の長逗留(上位客室は価格帯が高い)、宿の前まで車で乗りつけたい人(専用駐車場から送迎車で移動)
具体情報
- 最寄り駅: JR白石蔵王駅から無料送迎車で約20分(タクシー約15分)
- 客室サイズ: セミスイート50㎡〜一條スイート100㎡。ほかに和室10畳など全8タイプ
- 客室露天: 露天風呂付きの「一條スイート」と半露天風呂付きの「湯主スイート」が各1室
- チェックイン: 15:00〜(最終18:00)/ アウト 〜11:00
- 食事: 木造本館を個室料亭として使用
- 創業: 16世紀後半(桶狭間の戦いの後)と宿は伝える。2008年に別館を全面改装
- 駐車場: 宿泊者専用駐車場あり。到着後に電話すると送迎車が迎えに来る
2. 深山荘 高見屋 — 山形県山形市・蔵王温泉
享保元年(1716)創業。当主が代々「彌平治」を名乗り、強酸性の自家源泉三本を守り継ぐ蔵王の老舗です。
19室、温泉旅館。
目安価格 ¥57,000–¥80,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
徳川吉宗が八代将軍に就いた享保元年の十二月、二代目彌平治が宿を開きました。以来、岡崎家の当主は代々「彌平治」の名を継ぎ、宴会場にもその名が冠されています。湯は、宿が保有する三本の自家源泉から引く強酸性の硫黄泉。温泉街のいちばん奥まった高台に建ち、玄関までは二十段ほどの石段を上ります。館内は築百年を越える純和風の木造建築で、エレベーターはありません。古い骨格はそのままに、蔵を一棟改装した客室や全室露天風呂付きの客室棟を加えてきた更新の手際を評価し、二位に推します。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、浴場と温泉への評価が際立ち、夕食と接客がそれを支える構図です。自家源泉の湯を目当てに訪れる宿泊者が多いことがうかがえます。朝食と清潔感も安定して高い水準にあります。一方、料金に対する評価はやや控えめで、客室への評価も湯に比べると落ち着いています。木造の旧館と新しい客室とで印象が異なるため、予約の段階で客室タイプを確かめておくと、滞在の満足度が揃いやすい宿と言えます。
向く人 / 向かない人
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向く:
濃い硫黄泉を何度も浴びたい湯好き、樹氷の季節の蔵王を宿を拠点に歩く旅程、客室露天で湯を独り占めしたい夫婦 -
向かない:
足腰に不安のある人(石段約20段と館内の階段移動があり、エレベーターなし)、車で玄関に横付けしたい人、硫黄の匂いが苦手な人
具体情報
- 最寄り: JR山形駅から路線バスで蔵王温泉バスターミナルへ。ターミナルから宿の無料送迎あり
- 客室サイズ: 「離庵山水」61㎡、蔵を改装した「雛蔵」110㎡ほか
- チェックイン: 15:00〜(最終24:00)/ アウト 〜10:00
- 食事: 夕食は会席膳で、主菜は蔵王牛。朝食は山形の郷土料理を含む和食膳
- 温泉: 自家源泉3本、強酸性の硫黄泉。貸切風呂は1回50分3,000円
- 創業 / 改装: 1716年(享保元年)。2023年12月に角部屋の和スイートを改装
- 駐車場: 20台・無料(到着時に電話で案内)
3. 椿館 — 青森県青森市・浅虫温泉
津軽藩の地検帳に「つばきの湯」と記されたのが1687年。19代目のいまも、九本の自家源泉が湯船を満たします。
25室、温泉旅館。
目安価格 ¥45,000–¥59,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
陸奥湾に面した浅虫温泉の温泉街から、少し山あいに入った場所に建つ宿です。椿館が文献に初めて現れるのは貞享4年(1687)。津軽藩の地検帳に「つばきの湯」とあるのが始まりで、当主は現在19代目にあたります。明治9年7月、東北巡幸の途上にあった明治天皇が当時村一番の宿だったこの館で休息し、入浴した記録が残ります。板画家の棟方志功は滞在中に肉筆画を何点も残し、太宰治は少年期に母と姉が湯治したこの宿を小説『思い出』に書きました。宿そのものが、津軽の近代文化史の一頁です。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、総合評価は本稿六軒のなかでも高い水準にあり、なかでも接客と夕食への評価が厚く、湯への満足度も安定しています。朝食も堅実な評価です。一方、客室と館内設備はほかの項目に比べて評価がやや落ち着き、建物の年季をどう受け止めるかで感想が分かれる傾向が見て取れます。浅虫温泉駅との間に宿の送迎があり、列車の旅でも動きやすい宿です。
向く人 / 向かない人
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向く:
棟方志功や太宰治の足跡をたどる文学・美術の旅、列車で移動する人、茶室付きの客室で静かに過ごしたい夫婦 -
向かない:
新築同様の設えを求める人(建物は年季を重ねている)、山奥の一軒宿の孤絶感を期待する人(温泉街に近い立地)
具体情報
- 最寄り駅: 青い森鉄道・浅虫温泉駅(駅までの送迎あり)
- 客室サイズ: 和室モダン36㎡、和室10畳ベッド38㎡、茶室特別室46㎡(1日1組)
- チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜10:00
- 食事: 毎朝市場で仕入れる魚と地元の旬の食材を使う和食。朝食は7:00〜8:30
- 温泉: 自家源泉9本の掛け流し。浴場には青森ヒバのサウナを併設
- 創業: 文献の初出は1687年(貞享4年)。当主は19代目
4. 鶴の湯温泉 — 秋田県仙北市・乳頭温泉郷
乳頭温泉郷で最も古い湯宿。元禄期から一般客を泊めた記録が残り、藩主警護の詰所だった茅葺きの本陣がいまも客を迎えます。
温泉旅館(湯治棟あり)。

なぜ選ばれるか
乳頭山の麓に点在する八軒の湯宿のうち、最も古くからある一軒です。寛永15年(1638)に秋田藩二代藩主の佐竹義隆が、寛文元年(1661)には亀田藩の岩城玄蕃が湯治に訪れたと伝わり、一般客相手の湯宿としての記録は元禄時代(1688〜1704年)から残ります。義隆の湯治の際に警護の者が詰めたという茅葺きの本陣は、いまも客室として使われています。宿の案内が本陣とあわせて詳しく記すのが、この茅を数十年ごとに葺き替える手仕事です。生保内下高野地区で刈ったススキを一冬寝かせ、神代梅沢地区の茅手と呼ばれる職人が昔ながらの工程で葺く。建物を建て替えずに守る姿勢を、本稿の主題に照らして高く評価しました。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、総合評価は高く、その多くを湯と湯場の佇まいが支えています。一方で、客室の設えや接客の細やかさについては評価がやや控えめです。灯油ランプや囲炉裏の残る本陣の客室は、旅館らしい快適さよりも湯治場の素朴さを味わう場と受け止める宿泊者が多く、期待とのずれがそのまま評価の差に表れていると読み取れます。
向く人 / 向かない人
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向く:
泉質の異なる湯を浴み比べたい湯好き、茅葺きと囲炉裏の湯治場の風情を求める人、ひとりで湯治棟に泊まる旅 -
向かない:
客室内のトイレや現代的な設備を前提とする人(一号館は客室にトイレなし)、予約をネットだけで済ませたい人(電話または会員制の窓口のみ)
具体情報
- アクセス: JR田沢湖駅から路線バスで「アルパこまくさ」へ。宿の送迎はこのバス停からのみ。秋田空港から車で約120分
- 客室: 本陣(囲炉裏・灯油ランプ)、新本陣・東本陣(トイレ付き、一部囲炉裏付き)、湯治棟の二号館(六畳、一人泊可)ほか
- 食事: 名物は味噌仕立ての山の芋鍋と岩魚の塩焼き。川連塗の膳で供され、二号館以外は部屋出し
- 温泉: 半径50m以内に白湯・黒湯・中の湯・滝の湯の四源泉。日帰り入浴は毎週月曜休み
- 料金: 宿泊料金は建物ごとに公式サイトに掲示。冬期(おおむね10月〜5月)は1室あたりの暖房費が加算される
- 創業: 元禄時代(1688〜1704年)から湯宿の記録
5. 安達屋 — 福島県福島市・高湯温泉
慶長12年(1607)、初代菅野三四郎が湯を開いた高湯の宿。四百年を越えた家が、この二年で浴場を改め、客室を新設しました。
20室、温泉旅館。
目安価格 ¥61,000–¥75,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
湯が、夢のお告げから始まったと宿は伝えます。伊達家の家臣を父にもつ菅野三四郎が、仙台城へ向かう途中に見た夢を機に西の山へ分け入り、慶長12年に温泉を掘り当てたという古文書が残っています。宿はこの年を創業とし、三四郎を初代と数えます。隣の高台に建つ薬師堂の裏には、初代を含む四十六の石碑が並びます。経営はいまも菅野家が担い、2011年の震災後に客室と本館を修繕して「大人の宿」として再出発しました。2021年以降は料理とラウンジを磨き、2023年からは大規模な改装に取り組んでいます。古い家が、いまも更新の途中にあります。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、温泉と浴場への評価は本稿六軒のなかでも最も高い水準にあり、夕食、接客、朝食がそれに続きます。囲炉裏を囲む夕食の時間を旅の主目的とする宿泊者が多いことがうかがえます。一方、客室への評価はほかの項目に比べて落ち着いており、新しい客室と従来の客室とで印象に差が出ている可能性があります。
向く人 / 向かない人
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向く:
白濁した硫黄泉を露天で浴びたい湯好き、ワインと囲炉裏料理を合わせたい夫婦、福島駅から近い範囲で山の湯に浸かりたい旅程 -
向かない:
硫黄の匂いが苦手な人、客室の新しさに一貫性を求める人(新旧の客室が混在)
具体情報
- 最寄り駅: JR福島駅からタクシー約30分、または路線バス約40分
- 客室: 8畳・10畳の和室が中心。2024年5月に「デラックス」、同年6月に福島市街を望む「コンフォートツイン」を新設
- チェックイン: 15:00〜(2022年9月から)
- 食事: 全卓に炭の囲炉裏を備えた個室・半個室で、囲炉裏焼きとコース料理。ソムリエが選ぶ酒をあわせる
- 温泉: 硫黄泉。2003年完成の大露天風呂「大気の湯」。2025年7月に「西の湯」「大気の湯“西”」が改装を終えて再開
- 創業: 1607年(慶長12年)。2006年に株式会社安達屋旅館を設立
6. 古滝屋 — 福島県いわき市・いわき湯本温泉
元禄8年(1695)創業、16代目の宿。震災と原子力災害を越え、館内に考証館を開いて土地の記憶を預かります。
54室、温泉旅館。
目安価格 ¥23,000–¥42,000 / 泊 (2名1室・通常期)

なぜ選ばれるか
いわき湯本温泉の中心街で、元禄8年から続く宿です。当主の里見喜生氏は16代目。宿の挨拶文によれば、古滝屋は戊辰戦争、温泉の枯渇、二度の大戦、2011年の東日本大震災と原子力災害と、幾度も廃業の危機にさらされてきました。湯本の湯脈は明治以降の石炭採掘で断たれ、大正8年(1919)には地表への湧出が止まったこともあります。震災後、16代目はボランティアに宿を開き、2021年3月12日には館内9階に「原子力災害考証館 furusato」を開設しました。湯を守ることと、土地の記憶を守ること。その二つを同じ建物で引き受けている点が、ほかの五軒にない継承の形です。
集約レビューの傾向
公開レビューデータを集計すると、温泉と浴場、夕食への評価が安定し、駅から歩ける立地も支持されています。一方で、朝食や館内設備、清潔感は相対的に評価が控えめで、54室という規模の宿らしく、客室や時期によって印象に幅が出やすい傾向が見て取れます。価格帯は本稿で最も手頃なため、湯を主目的に気軽に泊まる一軒として位置づけると、期待とのずれが小さくなります。
向く人 / 向かない人
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向く:
列車で訪れる湯の旅、震災と原子力災害の記憶に触れる学びの旅、三世代や複数の家族での滞在(最大6名の和洋室あり) -
向かない:
小さな宿の濃密なもてなしを求める人(54室の規模)、山あいの一軒宿の静けさを期待する人(温泉街の中心に立地)
具体情報
- 最寄り駅: JR常磐線・湯本駅から徒歩約8分。常磐自動車道いわき湯本ICから車で約10分
- 客室サイズ: 10畳(18.5㎡)〜20畳の和洋室(36.5㎡、半露天の温泉風呂付き)
- チェックイン: 15:00〜 / アウト 〜10:00
- 温泉: 2025年8月8日に貸切温泉「亀吉の湯」を開設
- 駐車場: 第1・第2の2か所、無料
- 創業: 1695年(元禄8年)。当主は16代目
よくある質問
Q. 東北の老舗湯宿を訪ねるベストシーズンはいつですか?
A. 編集部が推す時期は二つあります。紅葉が湯場を染める十月と、雪に閉ざされた湯場が一年で最も静かになる如月(二月)です。冬の蔵王では樹氷も見られます。ただし、乳頭温泉郷の鶴の湯では、おおむね十月から五月まで一室ごとに暖房費が加算されます。雪道の運転に不慣れなら、列車と宿の送迎を組み合わせるのが無難です。
Q. 予約はいつごろから動けばよいですか?
A. 客室数が20室前後の宿が多く、紅葉期や年末年始、冬の週末は早くから埋まる傾向があります。客室露天付きの上位客室は数が限られるため、数か月前に動くのが安心です。鶴の湯温泉は電話か、同宿が加盟する会の窓口でしか予約を受け付けていない点に注意が必要です。
Q. 温泉の泉質に違いはありますか?
A. 大きく違います。蔵王温泉の高見屋と高湯温泉の安達屋はともに硫黄泉で、どちらもかつて奥州三高湯に数えられた湯場です。鶴の湯温泉は半径50m以内に泉質の異なる四つの源泉をもち、浅虫温泉の椿館は九本の自家源泉を掛け流しています。肌の弱い人は、強酸性の湯では長湯を避けるのが無難です。
Q. 足腰に不安があっても泊まれますか?
A. 宿によって差があります。高見屋は玄関まで約20段の石段があり、館内にエレベーターがありません。湯主一條は温泉街の最奥の坂上に建ち、専用駐車場から送迎車で玄関へ向かいます。古滝屋にはバリアフリー対応の客室があります。気になる場合は、予約前に各宿へ直接確かめてください。
Q. 列車だけで回れますか?
A. 回れます。湯主一條は白石蔵王駅から、椿館は浅虫温泉駅から、それぞれ宿の送迎があり、古滝屋は湯本駅から徒歩約8分です。高見屋は山形駅からバスで蔵王温泉へ入り、ターミナルから送迎を頼めます。安達屋は福島駅からバスかタクシーで向かいます。鶴の湯温泉は田沢湖駅からバスで「アルパこまくさ」まで行き、宿の送迎に乗り継ぎます。
本記事の参考情報
各宿の創業年・代数・改修履歴は、それぞれの公式サイトの記載に拠っています。温泉地の背景と第三者の記録として、以下もあわせて参照しました。
・乳頭温泉郷 歴史年表 — 乳頭温泉郷の開湯と湯宿の歩み
・Wikipedia: 蔵王温泉 — 最上高湯の歴史と泉質
・Wikipedia: 古滝屋 — 創業年と原子力災害考証館の開設
・福島民友新聞: 原子力災害考証館 furusato — 考証館の成り立ちと展示
編集部から
六軒に共通するのは、古いものを古いまま凍らせていないことです。一條は文化財の本館を料亭として使い続け、高見屋は蔵を客室に変え、安達屋は浴場を一新し、鶴の湯は数十年ごとに茅を葺き替える。そして古滝屋は、災害の記憶を館内に引き受けました。三百年という数字は、同じ家が変わり続けてきた回数の総和とも言えます。岩手県については、旅館としての創業三百年を公式の記録で確かめられる宿が見つかり次第、稿を改めて取り上げるつもりです。雪の如月に、あなたはどの家の湯を訪ねますか。