盛夏の上山、蔵王と葉山の麓を渡る風が、城下の屋根の上にやわらかく落ちる。山形は上山、羽州街道の宿場として開けた湯場のひとつ、葉山の高台に、湯と帳場を守り継ぐ一軒がある。山形県上山市葉山に佇む葉山舘は、ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉を自家源泉から引き、蔵王連峰を一望する高台に三十二の客間を構える。盛夏の山形行にあたって、編集部が深く語りたい一軒である。

※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。

葉山舘 — 山形・かみのやま温泉

葉山の高台、源泉百パーセントの湯と三十二の客間。羽州街道の宿場に代を継ぐ、編集部が深く語りたい一軒である。

32室、旅館。

目安価格 ¥48,000–¥66,000 / 泊 (2名1室・通常期)


葉山舘 — 山形・かみのやま温泉 葉山地区 · 蔵王連峰を望む高台に立つ源泉100%の老舗旅館
PHOTO: 葉山舘 — 公式サイトを見る →

葉山という湯と、羽州街道の城下町

かみのやま温泉は、長禄二年(1458年)に湯町で開湯したと伝わり、いまは湯町・新湯・十日町・河崎・高松・葉山の六地区から成る温泉郷である。上山藩の城下であり、羽州街道の宿場として米沢と山形を結ぶ要衝に開けたこの湯場は、城下町の格と街道の通行人を同時に抱える二重の機能を持っていた。葉山地区は、その中でも上山城跡から南西に離れた高台に位置し、蔵王連峰を一望する視座を持つ。葉山地区で湯が湧いたのは戦後のことで、葉山はかみのやま温泉郷のなかでは新しい湯場にあたる。

城下町の歩き手にとって、葉山舘は単なる湯宿ではなく、上山という土地の継承の一端を担う場として読み取られる一軒であろう。

源泉百パーセント、塩化物・硫酸塩泉という湯


葉山舘の湯は、ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉。本館所有の源泉から引き入れ、大浴場の湯口からは源泉百パーセントの湯だけが落ちる。宿はその肌あたりを、シルクのようにやさしいと言い表す。石造りの大浴場と屋根のない露天風呂は、いずれも二十四時間湯に浸かれる。なお浴槽の温度を保つための循環を併用し、温度調整のため大浴場は加水、冬の露天風呂は加温する場合がある。

葉山舘 客間 — 上山城下と蔵王を望む高台の数寄屋の間
PHOTO: 葉山舘 客間 — 公式サイトより

露天風呂は屋根を持たない開放的な造りで、壁面は山形産のスナゴケで緑化されている。石造りの大浴場の湯船からは、その露天を望める。客間の内風呂はすべて源泉百パーセントの温泉で、翠葉亭のビューバスからは蔵王連峰を、華葉亭・四季亭の檜風呂からは坪庭を眺めながら湯に身を沈められる。

三つの客間 — 翠葉亭・華葉亭・四季亭


葉山舘の三十二の客間は、翠葉亭・華葉亭・四季亭の三つに分かれる。翠葉亭は十二畳にシモンズのツインベッドを据え、窓側のテラスに温泉の足湯、蔵王連峰を望むビューバスを備え、夕食は専用ダイニング「福寿庵」でとる。華葉亭は十畳に四畳半を添えた間取りで、明るい坪庭をのぞむ掘りごたつと檜の湯殿を持ち、家族や友人との滞在に向く。四季亭は坪庭を配した十畳の簡素な和室で、庭を望む檜風呂が設えられる。

夕餉 — 山形の山海の幸

葉山舘 夕餉 — 米沢牛と置賜の夏野菜を組み合わせた季節の会席
PHOTO: 葉山舘 季節の会席 — 公式サイトより

葉山舘の夕餉は、食の宝庫・山形の山海の幸を軸に、古きを受け継ぎつつ新しいものも取り入れる「新・日本料理」として組み立てられる。華葉亭・四季亭の客は個室のお食事処で会席風の膳を、翠葉亭の客は専用ダイニング「福寿庵」で、メインを選べるプリフィクスの皿を味わう。山形ワインとともに味わう趣向も、宿が勧めるところである。

朝食も、山形の食材を用いた膳で一日の始まりを整える。

集約レビューが映すこの宿の本質

公開レビューデータを集計したところ、葉山舘の評価の核は、湯の鮮度と客間の格の二点に収斂する。源泉百パーセントの湯の運用、そして三つの客室タイプそれぞれの格の保ち方が、滞在の満足度を底支えしているという像が浮かぶ。一方で、城下町の高台という立地ゆえに、駅から宿までの動線は車に依存する傾向にあり、公共交通のみで歩き通す旅程には少し不向きという指摘もある。仲居の応対は丁寧で、年配の宿泊客や、家族の節目の旅に選ぶ層に厚く支持されている、というのが集約レビューの示すところである。

立地と周辺 — 上山城、武家屋敷、羽州街道

葉山舘の北東には、上山城跡の月岡公園が広がる。天文四年(1535年)に武衛義忠が築いたと伝わる城で、二の丸跡に昭和五十七年に建てられた模擬天守は郷土資料館を兼ねる。城の周囲には武家屋敷の通りが残り、羽州街道の宿場として開けた町並みが、まだそこかしこに息づいている。葉山舘から城下へは、坂を下る道のりになる。夕餉の前、夏の夕暮れに城下を歩き、宿へ戻って湯に身を沈める。盛夏の上山行に編集部が推す滞在の組み立てである。

かみのやま温泉駅から葉山舘まではタクシーで五分ほど。駅との間には宿の無料送迎(事前予約制、迎えは14時30分から18時)もある。山形空港・仙台空港のいずれからもアクセスできる。

こんな旅人に

  • 夫婦・友人連れで、上山城下と湯場を組み合わせて二泊三日を計画する旅人
  • 山形の山海の幸と山形ワインを、土地の夕餉として主目的に据えたい食通

  • 全室の内風呂まで源泉百パーセントの湯を、滞在の核として優先したい湯好き

具体情報

  • 所在地: 山形県上山市葉山5-10
  • 最寄り駅: JR かみのやま温泉駅からタクシーで約5分(駅から無料送迎あり・要予約)

  • 客室数: 32室(翠葉亭・華葉亭・四季亭の3タイプ)

  • 泉質: ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉(源泉100%。浴槽は循環併用、時期により加水・加温あり)

  • 食事: 山形の食材を用いた会席風料理(華葉亭・四季亭は個室お食事処、翠葉亭は専用ダイニング「福寿庵」)

評価の内訳

評価の構成は、立地の格(葉山の高台と城下の組み合わせ)、設備(源泉百パーセントと客室温泉付)、体験(三つの客室タイプと山形の山海の幸の夕餉)、価格感(¥48,000–¥66,000という上山の一軒の相応値)、編集適合度(盛夏の山形行の核として据える価値)の五点である。

よくある質問

Q. 盛夏に訪れる際、避暑として成立しますか?

A. 葉山舘の標高は上山盆地の中ではやや高く、夏でも夜は風が抜ける。蔵王連峰の山地効果で、平地よりも体感の暑さがやわらぐ時間帯がある。盛夏の上山行を組み立てるなら、宿の湯と城下の歩きを朝夕に振り分け、日中の暑さを避ける旅程が向く。

Q. 公共交通のみで訪れることはできますか?

A. JR奥羽本線・山形新幹線のかみのやま温泉駅から、宿の無料送迎(事前予約制)またはタクシーで約五分。駅から宿への道のりは葉山の高台への上り坂を含むため、荷物が多い場合は車利用が素直である。

Q. 子連れでも泊まれますか?

A. 泊まれる。お子様料理(ハンバーグやエビフライなど)が用意され、刻み食やおかゆへの変更にも相談に応じる。坪庭をのぞむ掘りごたつの華葉亭は、家族や友人との滞在に人気の客室である。

Q. 源泉100%掛け流しの湯は、湯あたりしやすい体質でも入れますか?

A. 宿は自家源泉の湯を、シルクのようにやさしいやわらかな湯と案内している。とはいえ長湯は体に負担となるため、短時間の入浴を複数回に分け、合間に水分を取る入り方が安全である。

Q. 山形の肉料理を堪能したい場合、特別なプランはありますか?


A. 料理長による肉尽くしのフルコースプランや、山形牛ステーキを組み込んだプランが公式サイトで案内されている。内容は時期により変わるため、予約時に確認すると良い。

本記事の参考情報

・山形県公式観光・旅行情報サイト やまがたへの旅 — 上山・かみのやま温泉の観光情報
・Wikipedia: かみのやま温泉 — 湯場の歴史と地理の背景
・Wikipedia: 上山城 — 上山藩・羽州街道宿場の歴史

編集部から

葉山舘を取り上げるにあたって、編集部が重視したのは、湯と建物と土地の三つが一体として運営されているかという視点である。自家源泉の湯を百パーセントで湯船に満たす運用は、湯量の確保と継承の意志の両方を要する。蔵王連峰を一望する葉山の高台という立地もまた、この宿の湯と客間のあり方を形づくっている。盛夏の上山を旅するのであれば、宿のなかで一日を過ごす時間と、城下を歩く時間の両方を持ちたい。葉山舘は、その両方が叶う一軒として、編集部の記す宿のなかでも記憶に残る一軒である。次に書きたいのは、置賜の湯場、白布や赤湯の継承の記である。

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