白露を迎える頃、佐渡沖の南蛮えびは身を締め、島の棚田では新米コシヒカリの刈り入れが始まる。両津から相川、そして小木へ——本稿は、日本海の孤島に育つ食材を膳の上で辿る二泊三日を、船の便と島内の道程とともに描く。加茂湖のサザエやアオリイカ、金山の町に代を継ぐ料理、宿根木の古民家に湯気を立てる里山の膳。旅館そのものが料理を主目的に構える三軒を、初秋の島に沿って結んでいく。

日程 宿 エリア Score 客室 目安価格 膳の主題
初日 みなみ旅館 両津・住吉 89 10 ¥32–¥43k 両津の朝市とセリ権が支える海の膳
二日目 NIPPONIA 佐渡相川 金山町 相川・金山町 91 7 ¥55–¥96k 金山の町家に組む佐渡牛と旬の一皿
三日目 御宿 花の木 小木・宿根木 87 7 ¥22–¥33k 築150年の古民家に据える里山の膳
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※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。

この二泊三日の道程

新潟港から両津港へは、ジェットフォイルなら約1時間、カーフェリーで約2時間半。島に着いたら、まず加茂湖を望む両津に一泊し、翌日は金銀山で栄えた相川へ西へ渡る。三日目は南へ下り、廻船で栄えた小木・宿根木の古民家に膳を待つ。両津・相川・小木は車でおよそ一時間ずつ離れており、島を斜めに縦断する道のりが、そのまま海の幸から里山の恵みへと膳を移し替えていく。白露から秋分にかけては、南蛮えび、アオリイカ、佐渡牛、そして新米が食卓に重なる、島の食の最も豊かな頃合いである。

初日 — 両津・住吉|1. みなみ旅館

両津の朝市に魚のセリ権をもつ湯宿。その日の海を膳に運ぶ、島旅の初日にふさわしい一軒。

Media Picks Score: 89 / 100  10室、住吉温泉を引く中規模の旅館。

目安価格 ¥32,000–¥43,000 / 泊 (2名1室・通常期)


みなみ旅館 — 佐渡市住吉 · 両津港ほど近く、住吉温泉を引く海の幸の湯宿
PHOTO: みなみ旅館 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

両津港から車で数分、加茂湖にほど近い住吉に湯を張るこの旅館の強みは、魚を宿自らが選べることにある。主人が両津の朝市でセリに立ち、その朝の海から旬の魚を引く。だからこそ、白露の頃なら甘みを増した南蛮えび、加茂湖のサザエ、走りのアオリイカと、膳は日ごとに姿を変える。住吉温泉の湯が、島を巡る初日の疲れをほどく点も、宿としての骨格を確かにしている。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、この宿への評価は料理の質と量に集中して現れる。刺身の鮮度と品数、そして地の米への言及が繰り返し確認できる一方、施設そのものは華美を求めず、家庭的な運営に落ち着きを感じるという声が多い。豪奢さより、島の食を素直に味わう場として支持されている宿だと読み取れる。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    佐渡の海の幸をまず味わいたい夫婦旅、島入り初日に湯で旅装を解きたい人、量と鮮度を重んじる食通
  • 向かない:
    意匠を凝らした新しい客室を望む旅、静かな離れの独立性を求める人、少量多皿の会席を好む食の好み

具体情報

  • 最寄り港: 両津港から車で約6分
  • 客室数: 10室(住吉温泉を引く内湯)
  • 食事: 夕食は佐渡の海の幸中心の膳、朝食付き
  • 湯: 住吉温泉(ナトリウム塩化物泉系の海辺の湯)
  • 立地: 加茂湖・住吉海岸に近く、両津の市街から至近


二日目 — 相川・金山町|2. NIPPONIA 佐渡相川 金山町

金銀山で栄えた相川の町家を宿に変えた、二〇二四年開業の分散型の宿。町ごと膳になる一軒。

Media Picks Score: 91 / 100  4棟7室、歴史的建物を客室に転じた分散型ホテル。

目安価格 ¥55,000–¥96,000 / 泊 (2名1室・通常期)


NIPPONIA 佐渡相川 金山町 — 佐渡市相川 · 金銀山の町家を客室に転じた2024年開業の分散型ホテル
PHOTO: NIPPONIA 佐渡相川 金山町 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

相川は、佐渡金銀山とともに栄えた鉱山町であり、その坂道に残る古い町家を客室に転じたのがこの宿である。四棟に七室を分けて配し、フロント棟の清水屋はかつて無名異焼の窯と店を兼ねた建物だという。膳には佐渡牛や島の旬が組まれ、鉱山文化が育てた町の暮らしそのものを、料理と滞在の両面から辿れる。二〇二四年の開業ながら、島の食通宿の系譜に新たな一軸を加えた宿と言える。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、開業からの日が浅いながらも、建物の再生に込められた意図と料理の完成度への評価が確認できる。歴史的な佇まいのなかで供される一皿への満足が語られる一方、分散型ゆえにチェックインの場と客室が離れる構造は、あらかじめ理解しておきたい点として現れる。町を歩くことそのものが滞在に含まれる宿である。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    歴史と食を一続きに味わいたい旅、佐渡牛や旬の会席を目的に据える食通、古い建物の再生に関心のある夫婦旅
  • 向かない:
    チェックインから客室まで移動を要する構造を負担に感じる人、大浴場のある温泉宿を望む旅、価格を最優先する旅程

具体情報

  • 最寄り港: 両津港から車で約45分
  • 客室数: 4棟7室(うち2棟は一棟貸し)
  • チェックイン: 佐渡金銀山ガイダンス施設「きらりうむ佐渡」で受付
  • 食事: 佐渡牛と島の旬を組んだ会席
  • 開業: 2024年7月18日(佐渡初の分散型ホテル)
  • 建物: フロント棟・清水屋は旧・無名異焼の窯と店舗


三日目 — 小木・宿根木|3. 御宿 花の木

廻船で栄えた宿根木に、築百五十年の古民家を移した陶芸宿。里山の膳で島旅を締める一軒。

Media Picks Score: 87 / 100  7室、二千坪の敷地に古民家を移築した陶芸宿。

目安価格 ¥22,000–¥33,000 / 泊 (2名1室・通常期)


御宿 花の木 — 佐渡市宿根木 · 築150年の古民家を移築した2000坪の陶芸宿、秋の中庭
PHOTO: 御宿 花の木 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

宿根木は、江戸から明治にかけて廻船業で栄え、船大工の技が家並みに刻まれた集落で、国の重要伝統的建造物群保存地区に選ばれている。その一角に、一九九六年から夫婦が営むのが花の木である。二千坪の敷地に築百五十年の古民家を移し、中庭のねむの木を大きな一枚ガラス越しに望む。膳は佐渡の海と山の旬を、椿油と佐渡塩で供する刺身に代表される、素材本位の里山料理。島旅を静かに締めるにふさわしい宿である。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、この宿への評価は、古民家の空間と自給的な食への共感に集まる。手をかけた田舎料理と、陶芸家である主人の作品が置かれた設えへの言及が繰り返し確認できる。一方で、山あいの静かな立地は移動を要し、賑わいを求める旅には向かないという傾向も見て取れる。滞在そのものを目的にする宿だと言える。

向く人 / 向かない人

  • 向く:
    古民家の静けさで旅を締めたい夫婦旅、素材本位の里山料理を好む食通、宿根木の町並みを歩きたい人
  • 向かない:
    利便性や大型施設を望む旅、夜に賑わいを求める旅程、海鮮の量を第一に据える食の好み

具体情報

  • 所在: 佐渡市宿根木78-1(小木地区)
  • 客室数: 7室(二千坪の敷地に築150年の古民家を移築)
  • 食事: 佐渡の海の幸・山の幸を用いた里山料理、椿油と佐渡塩の刺身
  • 特色: 主人は陶芸家、敷地内に作品ギャラリーと穴窯
  • 開業: 1996年(夫婦による古民家宿)
  • 周辺: 重要伝統的建造物群保存地区・宿根木集落


よくある質問

Q. 佐渡へ渡る船の便は?

A. 本州側の玄関は新潟港で、両津港へジェットフォイルなら約1時間、カーフェリーで約2時間半を要する。南の小木港へは直江津港からの便があり、季節により運航が変わる。この二泊三日は新潟港から両津へ入り、島内を車で南下して小木側へ抜ける行程を想定している。運航ダイヤと車の航送は佐渡汽船の公式情報で確認したい。

Q. 白露から秋分の頃、膳に並ぶのはどんな食材ですか?

A. 佐渡沖の南蛮えびは秋口に甘みを深め、加茂湖のサザエやアオリイカも旬を迎える。棚田では新米コシヒカリの刈り入れが始まり、佐渡牛やおけさ柿も食卓に加わる。海の幸から里山の恵みまでが重なる、島の食の最も豊かな頃合いである。

Q. 三軒の食事はどう違いますか?

A. 初日のみなみ旅館は両津の朝市に立ち、その日の海を鮮度と量で味わわせる湯宿。二日目のNIPPONIA 佐渡相川 金山町は佐渡牛と旬を会席に組み、鉱山町の歴史とともに供する。三日目の花の木は椿油と佐渡塩の刺身に代表される里山料理で、素材本位の静かな膳を用意する。海鮮の量から会席、里山料理へと、膳の性格が日ごとに移っていく。

Q. 子連れでも泊まれますか?

A. いずれも小規模な宿のため、事前に相談したい。みなみ旅館は家庭的な運営で子連れの旅にも向くが、花の木は静けさを重んじる古民家宿、NIPPONIA 佐渡相川 金山町は分散型で建物間の移動を伴う。年齢や人数によって適した宿が異なるため、宿の公式窓口で確認するのが確実である。

Q. 島内の移動手段は?

A. 両津・相川・小木はそれぞれ車でおよそ一時間ずつ離れており、レンタカーが最も自由が利く。路線バスもあるが本数は限られるため、三軒を巡る二泊三日では車を基本に組むと無理がない。宿によっては港からの送迎の可否が異なるので、予約時に確認したい。

本記事の参考情報

さど観光ナビ(佐渡観光交流機構) — 島内エリアと食の観光情報
佐渡汽船 — 新潟・直江津からの航路と運航ダイヤ
Wikipedia: 宿根木 — 廻船集落と重要伝統的建造物群保存地区の背景

編集部から

この二泊三日を貫くのは、料理を主目的に据えるという一点である。両津の朝市に立つ湯宿、金山の町家に組む会席、宿根木の古民家に据える里山の膳——三軒はいずれも、佐渡という孤島の季節を膳の上に写し取ろうとしている。白露から秋分は、その季節が最も豊かに重なる頃だ。島を斜めに縦断する道のりは、そのまま海の幸から里山の恵みへと味を移し替えていく。次は、佐渡の湯そのものを主役に据えた一軒を辿ってみたい。あなたなら、初日の膳に何を望むだろうか。

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