由布院盆地で客室露天から朝霧と由布岳を眺める宿として、編集部が選んだ五軒を紹介します。長月から神無月へ、朝晩の冷え込みが深まると、盆地の底に霧が溜まり、日の出の頃には由布岳の稜線だけが白い海の上に顔を出します。この景色を、湯に浸かったまま客室から見送れるかどうか。本稿はその一点を軸に、客室に露天風呂を備え、由布岳を借景とする宿を選びました。湯が自家源泉か、掛け流しか、敷地は何坪か、棟はどの向きに建つか。宿ごとに異なる湯と建築の作法を、公開レビューデータを集計した傾向とあわせて整理します。

# 宿 エリア 客室 目安価格 1行特徴
1 草屋根の宿 龍のひげ 湯布院町川西 10 ¥86–¥118k 自家源泉2本の混合湯を全室の半露天で。東斜面から由布岳を望む
2 一壺天 湯布院町川上 10 ¥126–¥161k 約2,300坪に離れ10棟。由布岳ビューの棟は湯面に山を映す
3 YADOYA おおはし 湯布院町川北 14 ¥69–¥89k 3,300坪に14棟。全室に自家源泉の露天と内湯、池の庭越しに由布岳
4 山荘 わらび野 湯布院町川北 13 ¥101–¥132k 昭和63年創業を継ぐ現代の離れ。メゾネット2階の露天から由布岳
5 ゆふいん花由 湯布院町川北 約30 ¥97–¥138k 「朝霧の見える宿」を名乗る高台の宿。大浴場の露天は由布岳を正面に
↕︎ 地図右下の角をドラッグすると高さを調整できます


※ 目安価格は公開販売価格の集計に基づく参考値で、実際の予約料金とは異なります。1泊2名利用時の1室あたり料金(税込)です。

1. 草屋根の宿 龍のひげ/別邸 ゆむた — 由布市湯布院町川西

自家源泉二本の湯を、由布岳と向き合う東斜面の離れで。朝霧の盆地を見下ろす湯として、編集部が真っ先に推したい一軒です。

10室、全室離れ(離れ5棟+フォレストヴィラ「別邸 ゆむた」)。

目安価格 ¥86,000–¥118,000 / 泊 (2名1室・通常期)

草屋根の宿 龍のひげ — 由布院・川西 · 由布岳を正面に置く離れの半露天風呂と板張りのデッキ
PHOTO: 草屋根の宿 龍のひげ/別邸 ゆむた — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

盆地の西、川西の山あいに建つ離れの宿です。由布岳の眺めを客室に取り込むために、あえて東向きの斜面を拓いて棟を配しました。湯は敷地内から湧く自家源泉が二本。弱酸性と弱アルカリ性の単純温泉を混ぜ合わせ、源泉温度51.0℃の湯を加水せずに各室の半露天へ掛け流しています。母屋の屋根には周囲に自生していた野草リュウノヒゲを敷き、宿の名もそこから採られました。湯・眺め・建物の三つが一本の筋で通っていることが、首位に置いた理由です。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、評価の厚みは客室の半露天と眺望に集まっています。とりわけ湯船から由布岳が見えることへの言及が多く、湯の柔らかさと24時間いつでも入れる自由さが、滞在の満足を支えている様子がうかがえます。おおいた和牛を中心にした夕食への評価も安定しています。一方で、市街の散策拠点としての利便は求められていない宿で、湯の坪街道へは車での移動が前提になる点を理解して選ぶ人が多い、という傾向が読み取れます。

向く人 / 向かない人

  • 向く: 夫婦や二人旅の記念日、由布岳を眺めて湯に浸かる時間を最優先にする旅、車で動く由布院・九重周遊の旅程
  • 向かない: 小学生以下の子ども連れ(宿泊不可)、ペット同伴の旅(同伴不可)、湯の坪街道を徒歩で行き来したい人(市街から車で約10分)

具体情報

  • 最寄り駅: JR由布院駅からタクシー約10分(送迎は予約時に依頼)。湯布院ICから車約5分
  • 客室: 離れ「龍のひげ」は5棟、61〜82㎡+デッキ12〜35㎡。別邸ゆむたと合わせ計10組
  • 温泉: 自家源泉2本(弱酸性・弱アルカリ性の単純温泉)の混合、源泉51.0℃、100%掛け流し
  • チェックイン: 15:00〜(最終18:00)/アウト 〜11:00
  • 駐車場: 21台
  • 宿泊条件: 小学生以下は宿泊不可、ペット同伴不可


2. 湯富里の宿 一壺天 — 由布市湯布院町川上

約2,300坪に離れが十棟だけ。湯面に由布岳を映す半露天を持つ、北の山裾の宿です。

10室、全室離れ(10棟、うち別邸2棟)。

目安価格 ¥126,000–¥161,000 / 泊 (2名1室・通常期)

湯富里の宿 一壺天 — 由布院・川上 · 夕暮れの由布岳を水面に映す離れの半露天風呂
PHOTO: 湯富里の宿 一壺天 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

盆地の北、由布岳の裾にあたる川上の高みに建つ宿です。約2,300坪の敷地に離れを十棟だけ置き、すべての棟に掛け流しの半露天風呂を備えます。棟は眺めで分けられており、由布岳ビューの四棟(45〜87㎡)、森林ビューの四棟、さらに家族や三世代向けの別邸二棟(122㎡・158㎡)という構成です。夕食は大分の素材を吟味した和懐石で、関あじ・関さば、おおいた和牛など豊後水道と九重の産物を一品ずつ供します。宿の名は、壺の中に別天地を見たという『後漢書』の故事に由来します。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、半露天から見る由布岳の眺めと、離れの独立性に評価が集中しています。食事は一品ずつ時間を合わせて運ぶ懐石で、品数と器への満足が目立ちます。宿の性格として、価格帯は今回の五軒で最も高く、その分を眺望棟の指定や別邸の広さに充てる選び方が多いと読めます。森林ビューの棟は眺めの種類が異なるため、由布岳を目的にするなら予約時に棟の種別を確かめておくのが確実です。

向く人 / 向かない人

  • 向く: 由布岳の眺望を客室の湯で独占したい夫婦旅、三世代や二家族での滞在(別邸)、愛犬と旅をする人(ペット同伴プランとドッグランあり)
  • 向かない: 駅から公共交通だけで動く旅(送迎なし、駅から車約5分)、予算を抑えたい旅(今回の五軒で最も高い価格帯)、犬の気配を避けたい人

具体情報

  • 最寄り駅: JR由布院駅から車約5分(送迎なし)。湯布院ICから約7分
  • 敷地・客室: 約2,300坪に離れ10棟。由布岳ビュー45〜87㎡、別邸122㎡・158㎡
  • 温泉: 全室に掛け流しの半露天風呂
  • 食事: 夕食18:00から個室の食事処で和懐石、朝食付き
  • 駐車場: 無料15台(予約不要)
  • その他: ペット同伴プランあり、2024年12月にドッグランを新設


3. 由布の彩 YADOYA おおはし — 由布市湯布院町川北

3,300坪の池泉の庭に十四棟。自家源泉の露天と内湯を全室に持つ、大人二人だけの宿です。

14室、全14棟の離れ、大人2名専用。

目安価格 ¥69,000–¥89,000 / 泊 (2名1室・通常期)

由布の彩 YADOYA おおはし — 由布院・川北 · 池泉の庭と回廊の向こうに由布岳を望む
PHOTO: 由布の彩 YADOYA おおはし — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

盆地の中ほど、川北の田園に3,300坪の敷地を構える離れの宿です。十四棟すべてに露天風呂と内湯が付き、湯は自家源泉の100%掛け流し。大浴場をあえて持たず、湯は客室で完結させています。庭は池を中心に回廊を巡らせた造りで、紅葉の頃には池越しに由布岳が映ります。客室名は「利休鼠」「瑠璃」「京紫」など日本の伝統色から採られ、色に合わせて設えを変えています。夕食はオーナーが営む精肉店のA5等級黒毛和牛を、すき焼きかしゃぶしゃぶで供します。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、客室の湯と食事の二つに評価が厚く集まっています。とくに肉料理への満足は高く、食を目当てに選ぶ層が一定数いることがうかがえます。大人二名に限った運営で館内が静かであることも、繰り返し評価される点です。由布岳の眺望は棟によって差があり、眺めを重視する場合は由布岳側の客室を指定する選び方が見られます。今回の五軒では価格帯が最も穏やかで、離れと客室露天の宿としては手の届きやすい一軒と読めます。

向く人 / 向かない人

  • 向く: 夫婦・恋人・母娘など二人旅、肉料理を夕食の主役にしたい人、離れと客室露天を手の届く価格帯で選びたい旅
  • 向かない: 子ども連れや三名以上の旅(大人2名専用)、大浴場で湯めぐりをしたい人(大浴場なし)、すべての客室から由布岳が見えることを求める人

具体情報

  • 最寄り駅: JR由布院駅から車約5分(無料送迎あり、17時まで)。湯布院ICから車約5分
  • 敷地・客室: 3,300坪に離れ14棟。特別室「利休鼠」は81㎡
  • 温泉: 全室に露天風呂と内湯、自家源泉100%掛け流し(大浴場なし)
  • 食事: 夕食18:00から2名専用の個室食事処。A5等級黒毛和牛のすき焼きまたはしゃぶしゃぶ
  • 駐車場: 第一・第二合わせて20台以上(無料)
  • 宿泊条件: 大人2名専用


4. 山荘 わらび野 — 由布市湯布院町川北

昭和六十三年創業の旅館を現代の山荘に改めた宿。メゾネットの二階の露天から由布岳を望みます。

13室、全13室の離れスイート(4タイプ)。

目安価格 ¥101,000–¥132,000 / 泊 (2名1室・通常期)

山荘 わらび野 — 由布院・川北 · 日田産の天然石で組んだ半露天風呂と雑木林
PHOTO: 山荘 わらび野 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

駅と湯布院ICのちょうど間、中心部から約2kmの山裾に建つ十三室の宿です。昭和63年創業の旅館を受け継ぎ、コンクリートと木、石を組み合わせた現代建築に生まれ変わりました。全室が離れのスイートで、57㎡から132㎡まで四つの型があります。湯は敷地内の源泉から引く100%掛け流しのアルカリ性単純泉で、メタケイ酸を多く含みます。浴槽は大分県日田産の天然石。メゾネットタイプの客室は二階に専用の露天風呂を持ち、湯に浸かりながら由布岳を望めます。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、建築とデザインへの評価が他の四軒より目立ち、湯の肌触りの柔らかさへの言及がそれに続きます。料理は大分の産物を使った創作会席で、器や盛り付けへの評価が厚い一方、伝統的な旅館料理を期待する層とは好みが分かれる傾向も見えます。カフェ&バーやショップを館内に持つため、滞在を宿の中で完結させる過ごし方が多く読み取れます。

向く人 / 向かない人

  • 向く: 現代建築と温泉を両方味わいたい人、二人でゆっくり朝を過ごしたい旅(チェックアウト12:00)、由布岳を露天から眺めたい人(メゾネット棟)
  • 向かない: 純和風の数寄屋や畳の宿を求める人、未就学児連れの家族(6歳未満はレストラン利用不可)、全室で由布岳の眺望を求める人(眺望が確実なのはメゾネット棟)

具体情報

  • 最寄り駅: JR由布院駅から車約5分、湯布院ICから車約3分(送迎は要予約)
  • 客室サイズ: 57㎡・85㎡・130㎡・132㎡の4タイプ、計13室
  • 温泉: 全室、敷地内源泉の100%掛け流し(アルカリ性単純泉)
  • チェックイン: 15:00〜/アウト 〜12:00
  • 食事: 夕食はレストラン「中屋敷」で創作会席(18:00/18:30/19:00の3部制)、朝食は和朝食
  • 創業: 1988年(昭和63年)
  • 駐車場: 15台(無料・予約不要)


5. 朝霧の見える宿 ゆふいん花由 — 由布市湯布院町川北

盆地を見下ろす高台に建ち、自ら「朝霧の見える宿」を名乗る一軒。客室の露天と大浴場の両方で湯を楽しめます。

約30室、露天風呂付きの離れ中心、2エリア15タイプ。

目安価格 ¥97,000–¥138,000 / 泊 (2名1室・通常期)

ゆふいん花由 — 由布院・川北の高台 · 大浴場の露天風呂から正面に由布岳を望む
PHOTO: 朝霧の見える宿 ゆふいん花由 — 公式サイトを見る →

なぜ選ばれるか

川北の高台に建ち、宿名に「朝霧の見える宿」を掲げています。霧に沈む盆地と由布岳を同じ視界に収められる位置にあり、本稿の主題にもっとも直截に応える宿です。敷地は「花由エリア」と「ゆめの里エリア」に分かれ、露天風呂付きの離れを中心に十五の客室タイプを揃えます。大浴場は男女とも露天を持ち、男湯の露天は由布岳を正面に見据えます。泉質はアルカリ性単純温泉。今回の五軒では規模が大きく、子ども向けの献立も用意されています。

集約レビューの傾向

公開レビューデータを集計すると、大浴場と客室からの眺望、そして接客への評価が厚く積み上がっています。レビューの総数は五軒の中で最も多く、評価の振れ幅が小さい点が特徴です。客室の露天は循環式の温泉であることを宿が明示しており、源泉掛け流しを重視する人は、大浴場と組み合わせて楽しむ選び方になります。家族や三世代での利用への言及も多く、他の四軒より客層が広いと読めます。

向く人 / 向かない人

  • 向く: 三世代や子ども連れの家族旅(子ども向け献立あり)、客室露天と大浴場の両方を楽しみたい人、駅送迎を使って車なしで訪ねる旅
  • 向かない: 客室の湯も源泉掛け流しであることを求める人(客室露天は循環式)、十室前後の小さな宿の静けさを求める人、昼前後に宿へ立ち寄りたい人(11:30〜13:00は駐車場・フロント休止)

具体情報

  • 最寄り駅: JR由布院駅から無料送迎バス(完全予約制、駅発15:00〜17:00)
  • 客室サイズ: 離れAタイプ 約45㎡ ほか、2エリア15タイプ
  • 温泉: アルカリ性単純温泉。客室露天は循環方式、大浴場は15:00〜翌9:00
  • チェックイン: 15:00〜(最終20:00)/アウト 〜10:00
  • 食事: 会席の夕食と和朝食。未就学児・小学校低学年向けの献立あり
  • 駐車場: 無料(毎日11:30〜13:00は入場不可)


よくある質問

Q. 由布院の朝霧は、いつ、どの時間に見られますか?

A. 朝晩の気温差が大きくなる秋から冬にかけて出やすく、晴れて風の弱い朝ほど濃くなります。日の出前後から盆地の底に霧が溜まり、日が高くなるにつれて薄れていきます。客室の湯から眺めるなら、前夜のうちに日の出の時刻を確かめ、夜明け前に湯に浸かっておくのが確実です。山荘 わらび野は、宿のすぐ近くの高台から雲海を見渡せると案内しています。

Q. 五軒の湯は、どれも源泉掛け流しですか?

A. 自家源泉や敷地内の源泉を客室の湯に掛け流しているのは、龍のひげ(自家源泉2本、源泉51.0℃)、YADOYA おおはし、山荘 わらび野の三軒です。一壺天も全室の半露天を掛け流しとしています。ゆふいん花由は客室露天を循環方式と明示しており、大浴場とあわせて楽しむ宿です。泉質はいずれも由布院らしい単純温泉で、肌当たりの柔らかさが共通しています。

Q. 子ども連れでも泊まれますか?

A. 宿によって大きく異なります。龍のひげは小学生以下の宿泊不可、YADOYA おおはしは大人2名専用です。山荘 わらび野は子どもの宿泊はできますが、6歳未満はレストランを利用できません。子ども向けの献立を用意しているのはゆふいん花由で、一壺天には家族や三世代向けの別邸(122㎡・158㎡)があります。

Q. 由布院までのアクセスは?

A. 博多駅からJR特急「ゆふいんの森」で由布院駅まで約2時間10分、大分駅からは約45分です。大分空港からは高速バスで由布院駅まで約55分。車なら大分自動車道の湯布院ICが最寄りで、五軒とも駅かICから車で10分以内です。一壺天は送迎がないため、駅からはタクシーを使います。

Q. 由布岳の眺望は、どの客室でも楽しめますか?

A. 棟によって眺めは異なります。一壺天は由布岳ビューと森林ビューで客室の種別を分け、YADOYA おおはしは「部屋によっては由布岳眺望」と案内しています。山荘 わらび野で露天から由布岳を望めるのはメゾネットタイプの客室です。眺望を目的にするなら、予約の段階で客室の種別を指定しておくのが確実です。

本記事の参考情報

・由布院温泉観光協会 — 由布院温泉の観光・交通情報
・Wikipedia: 由布院温泉 — 温泉地の歴史と泉質の背景
・Wikipedia: 由布岳 — 豊後富士と呼ばれる山の地理
・各宿の設備・客室・温泉の記述は、それぞれの公式サイトの掲載内容に基づきます。

編集部から

五軒に通じているのは、由布岳をどこから、どの高さで見るかを、建物の配置から決めていることです。西の川西から東斜面越しに山と向き合う龍のひげ、北の裾から霧を足もとに見る一壺天、盆地の中ほどで池越しに山を据えるおおはし、雑木林の向こうに山を置くわらび野、高台から霧の海ごと見渡す花由。同じ朝霧でも、宿の位置によって見え方は少しずつ違います。霧の季節は、紅葉が盆地を下りてくる霜月を経て、冬の盛りまで続きます。次の朝は、どの高さから由布岳を眺めてみたいでしょうか。

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